EP14:フレンドシーカー
アパートに戻り部屋につくと、真玄は「フレンドシーカー」のマイページにアクセスした。そしてさっそく、「珠姫」と「クオン」について調べた。
SNSサイト「フレンドシーカー」では、プロフィールの出身地や趣味、仕事などからユーザーを検索する機能がある。それを利用し、真玄は「珠姫」と「クオン」の二人を探し出した。
候補として「珠姫」も「クオン」も同名のユーザーが何人かいたが、それぞれ投稿履歴を確認することで、太地の言っていた二人を断定した。
「それにしても、この二人、いつから接触してたんだろう」
真玄は掲示板の履歴をさかのぼってみる。日付を見ると、どうやら十日ほど前から接触をしているようだ。
掲示板のタイトルは、「今付き合っている彼氏について」と言うもので、「珠姫」が立ち上げたもののだ。最初の頃は他のユーザーも書き込みをしているが、しばらくして「珠姫」が書きこむまで誰も書きこんでいないらしい。
「なるほど、このタイミングで珠子さん、こっちの世界に来たのかな」
そう思っていると、メッセージの通知が来ていることに気が付いた。相手は太地だ。
「どう? 『珠姫』と『クオン』のアカウントは見つかった?」
たったこれだけである。
「なんだよ、電話するかメール送ってくれればいいものを」
そう愚痴ると、真玄は同様の旨の返信のメッセージを送った。
再び掲示板の内容を読んでいると、再びメッセージの通知が来た。
「まあまあ、そう言わないで。文字じゃないとわからないこともあるし、こっちの方が便利なこともあるから」
太地の意図が読めない真玄は、「俺には良く分からない」というようなことを返信した。少し時間が空いたが、太地の返信は早かった。
「例えば、この書き込みを読んでみて」
太地のメッセージには、URLが一緒に貼られていた。URLを貼りつけると、そのままリンクが貼られるのですぐにそのページに飛ぶことができる。
「ああ、なるほど、こういう使い方もできるのか」
URLを用いたやりとりは、電話やメールではできないことだ。真玄は貼られているURLをクリックし、リンク先のページに飛んだ。
「えっと……『珠姫』のダイアリー? 珠子さんの日記か」
フレンドシーカーには、自身に起こったことや最近のニュースに関する記事、あるいは商品のレビューを書くことができる、「マイダイアリー」という機能がある。ただ、書くことができる文字数が少ないため、少々不便だ。
「珠姫」のマイダイアリーには、ほぼ毎日のように数行の文章が書かれていた。大体がその日あったことの出来事で、仕事のこととプライベートのことが半々くらいだった。
その中にも、いくつか「彼氏」という言葉が見られた。週に一度、彼氏とデートに行っているらしい。
「……それにしても珠子さん、仕事の愚痴か知宏さんのことしか書いてないな」
時々、携帯ゲームの話が混ざるが、ほとんどは大体同じようなパターンで日記が書かれていた。
「とりあえず、珠子さんの日記を読んでるけど、ほとんど仕事のことか彼氏のことだね」
しばらく日記を読んだ後、真玄はとりあえず太地にメッセージを送る。ほどなくして、太地からの返信が来た。
「彼氏さんの話があるから、その中で手がかりがあるんじゃないかと思って。真玄君、あまりダイアリー機能とか使ってなさそうだから。あと、そのページが珠子さんの物だと決まったわけじゃないからね」
いちいち何か引っかかる言い方をする太地に少しいらだちを残しながら、太地は「珠姫」の日記の続きを読む。ここ一年前ほどから読み始めたが、あまり手がかりになりそうなことは書いていなかったため、一ヶ月前から読むことにした。
このころからデートの話題がほとんどなくなり、仕事の愚痴に加え、彼氏に対する不満がつづられるようになっている。さらに今日から十日ほど前ともなると、「連絡が取れない」というような言葉が見られるようになった。
「この辺から、知宏さんと連絡が取れなくなっているのか……って、あれ?」
ふと、真玄は珠子と食事をした日のことを思い出した。「あの日からの一昨日」と、日記に書かれている日付が少しだけずれている。
「珠子さん、あの時ウソをついていたのかな」
単なる勘違いか、と思いながらも続きを読んでいく。途中から、「おかしい、朝起きると誰もいなかった」というような文章がみられる。
日付はちょうど珠子に出会う三日前となっている。おそらくこの日に、「珠姫」は試験世界にやってきたのだろう。
この日以降、「珠姫」の日記は途切れている。さらに掲示板の「クオン」とのやりとりが始まったのも、この日以降だ。
「なるほど、『クオン』と話をし始めたから、日記を書くのを辞めちゃったのか」
そこで改めて、掲示板の書き込みを読むことにした。途中までは「珠姫」と他の人のやりとりがあったが、途中から「珠姫」の途中経過報告程度で返信がない。
そして日記が途切れた日に、「クオン」の書き込みが始まった。ほぼ半日置きに返事のやりとりがされている。
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クオン:はじめまして、珠姫さん。まだ彼氏さんとは連絡が取れませんか?
珠姫 :はじめまして、クオンさん。夜に電話をしたのですが、「現在この電話番号は使われいません」と言われて……彼氏は、電話番号を変えたということでしょうか?
クオン:珠姫さん、この世界は、僕たちが住んでいる世界とは違う世界のようです。外には誰もいないし、車も走っていません。もしかしたら、彼氏さんはこの世界にはいないのかもしれません。
珠姫 :私たちが住んでいる世界とは違う? たしかに誰もいなくておかしいとは思いますが、どういうことでしょうか? 異世界に飛ばされたとでもいうのですか?
クオン:異世界というか、別世界ですね。とにかく、今いる世界は僕たちのいる世界とは違います。ですから、この世界にいない可能性は非常に高いですね。
珠姫 :だぅー。では私はどうすればいいのでしょうか?
クオン:そうですね、ちょっとここでは説明しにくいので
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そこまで読んで、真玄は太地からメッセージ通知が来ていることに気が付いた。
「今日記を読んでいるところだろうけど、面倒なことになっているんだよねぇ」
太地のメッセージを読み、真玄は首を傾げた。
「面倒なこと? 一体何だろう?」
真玄が「一体何が?」と送ると、すぐさま「掲示板を最後まで読めばわかると思うよ」と返事が来た。
すぐさま真玄は掲示板の続きを読む。
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クオン「そうですね、ちょっとここでは説明しにくいので、続きはメッセージでやりとりしましょう」
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これ以降、二人のやりとりは途絶えていた。
「え、続きはメッセージでって、これじゃあ手がかりほとんどないじゃないか」
真玄は慌てて太地にメッセージを送ると、すれ違いで太地からメッセージが届いた。
「ちょうど今、『珠姫』のメッセージボックスへのログ解析が終わったところだよ。これを読む限り、おもしろい展開になりそうだね」
真玄は「ログ解析」なる謎の言葉に突っ込まざるを得ず、思わず太地に尋ねた。
「ログ解析って何だよ? メールボックスでもハッキングしたのかよ」
「メッセージボックスに限らず、すべての機能にはログが保存されていてね、フレンドシーカーはずさんなことに、そのログすべてにアドレスが充てられているんだ。しかも、管理しやすいようになのか、わかりやすいアドレスでね。それで、アドレスをちょっといじって、とあるところで手に入れたログ解析ツールで解析すれば、簡単にメッセージボックスの中身がわかるわけさ」
「それ犯罪じゃねえのかよ。てかよくそれで問題にならなかったな」
「まあログ解析ツール自体、そうそう手に入るものじゃないからねぇ」
なら何故お前は持っているのだ、と太地のメッセージボックスの前で真玄は突っ込む。「SNSなんて信用できないな」と思いながら、真玄は中身について太地に尋ねた。
「ああ、そのことなんだけど、真玄君、メモ帳開ける? とりあえずテキスト形式で送るから」
メッセージボックスには、テキストファイルと一緒に太地のメッセージが送られていた。




