一日目
これはフィクションです。多分にフィクションを含みます。決してモリソヴァーナの実体験ではないので悪しからず。
ミスカト肉学園、一年Ω組担任、H・P・モリソバーナ。
一癖も二癖もある生徒を集めたΩ組を、得意の魔眼によって統治するやり手教師。毎日毎日問題を起こす生徒に神の右手による鉄槌を下す。
という俺設定に憧れて教師になった、盛山蕎麦太郎(本名)。彼は入学資格が"人外"である高校の、人外が集まるクラスで、普通(約一名のみ)の生徒達を魔術的に教育しようとして毎日騒動を起こしていた。
これは、三十を超えても中二病が治らず、神秘の域に達した自意識過剰を駆使して学園内で勝手に戦う蕎麦太郎の物語である。
人々はそんな蕎麦太郎をこう呼んだ。八割の憐れみ、一割の鉄分、二割の尊敬と十割の嘔吐物を込めて、
"邪気眼先生"と。
/一時間目・始業式/
「新入生の皆さん、初めまして。まだ学校生活は始まったばかりですが、力を合わせて頑張っていきましょう」
「先生質問です」
「何ですか、大野くん?」
「担任の盛山先生は何処ですか?」
「『古傷が痛む』らしいので早退しました」
初っ端から不在だよ、邪気眼先生。
/二時間目・初登場/
――ガラ。
「おはよ――」
――シャゲャァァァァァァァァァ!!
「むごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
謎の生命体を顔にくっつけたまま走る邪気眼先生。
「先生カムバ―――――ック!」
寄生の危機だよ、邪気眼先生。誰だよ、ドアにエイリアンの卵仕込んだ奴は!?
/三時間目・昼休み/
「大野くん、ちょっと良い?」
「? 良いよ、クラス委員の綾川さん」
顔を赤らめ、もじもじと弁当包みを大野くんに差し出す綾川さん。
「これを……盛山先生、に」
「成程、分かった、了解」
事情を察した大野くん。ちきちきと音のする弁当箱。職員室へ行くよ、大野くん。
「先生」
「むごっ、むごぉぉぉ、むごぉぉぉ!」
まだ寄生生命体と戦う邪気眼先生。
「綾川さんからだそうですよ。机に置いときますね~先生もスミにおけないなあ」
退場するよ、大野くん。その三秒後。
ピッシャ――――――ン!!!
「イエス! イエス! イエェ―――ッス!!」
雷撃に悲鳴するよ、邪気眼先生。フラッシュ全開だよ、職員室。
魔術発動だよ、邪気眼先生。魔女っ娘だよ、綾川さん。愛情表現は雷撃だよ、綾川さん。
/四時間目・初喋り/
「ひ、酷い目にあったが、魔法薬の授業を始めよう」
意外に不死身な邪気眼先生。化学を魔法薬と言い張る先生。
「では実験を行う」
「先生、実験の授業は来週のはずでは?」
「今日はカクテルというものを作ってみようと思う」
謎の発言をしながら保険係の山下くんのツッコミをスルー。いつの間にかビーカーとフラスコとシェーカー、それと何故か洗剤二種類。
「先生、何してんですか?」
「ハハハ! 何を言っている大野? これは古来、バビロニアから伝わるカクテルという魔法薬を生成するに決まっているじゃないか」
「カクテルは魔法薬じゃねえ!」
「この銀の円筒を使い、異なる薬品を混ぜ合わせて出来る新たな薬品。まさに錬金術そのもの」
「いやだから、洗剤の合成はやばいって先生」
「では投入」
「人の話を聞け! ってか全員退避!!」
――ガウンッ!!
「「「「「「………………」」」」」」
クラスの危機は回避されたよ、邪気眼先生。でも撃たれたよ、邪気眼先生。
「ふっ」
狙撃だよ、雪原くん。PSG-1だよ、雪原くん。
でも学校に狙撃銃は駄目だよ、雪原くん。