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第7話 再始動の朝

第7話 再始動の朝


魔物の巨大な腕が、体勢を崩したミラへ振り下ろされる。


その瞬間――空気を切り裂く鋭い音が響き、魔物の顔面に「石の礫」がめり込んだ。


ミラを悶絶させた、あの泥臭くも正確な一撃。

「……な、智さん!」


ミラは智の背中に手をかけ、辛うじて体勢を立て直す。

かつて「最弱」と蔑まれた男の背中は、記憶の中にあるどの勇猛な戦士よりも、今は大きく、頼もしく見えた。


(…は?…助けられた……?)

ミラの胸の奥が、熱くざわつく。

後方からシルクの叫びが響いた。

「ミラ様、お怪我は――!」

「だ、大丈夫ですっ、問題ありません!」

ミラは焦った声を上げ、赤くなった顔を誤魔化すように剣を握り直す。


智は肩で息をしながらも、止まらなかった。

流れるような踏み込み。15年間の孤独な鍛錬で磨き上げた、間合いの支配。

魔法も派手な奥義もない。ただ、淡々と、確実に。

智の振るう二本の剣が、魔物を次々と沈めていった。

戦闘後。


街に静けさが戻り、民衆の安堵の吐息が漏れ始める。倒れた屋台を片付ける音が、日常の再開を告げていた。

ミラは智の元へ歩み寄り、真っ直ぐにその瞳を見つめた。

「……改めて、お願いします。私たちのパーティーに、力を貸してください」


智は少しだけ意外そうに目を見開いたが、すぐに剣を鞘に納め、軽く肩をすくめた。

「……ん、まあ、勇者様直々のヘッドハンティングならなぁ……わかったよ。」


ぶっきらぼうに顔を背ける智。だが、その胸中には熱いものが込み上げていた。

(……15年、か。腐らずに剣を振ってきて……よかったのかもな)


一方、ミラは智の横顔を盗み見ながら、唇を噛む。

(……悔しい。私の方が魔力も剣も上のはずなのに……なんで、あんなに目が離せないの……?)

その様子を、シルクの冷徹な視線が射抜いていた。

「……智様、汗を拭きましょうね。……ミラ様も、お疲れのようですから、あちらでお休みになったらどうです?」


シルクの微笑みは完璧だったが、その奥には明確な警戒心が宿っていた。

(……まずいわ。ミラ様、智様を完全に『男』として意識しそうですわ。油断できませんわね)


こうして、最弱と呼ばれた元勇者は、二人の美少女を伴い、再び世界を救う歩みを始めたのだった。

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