第5.5話 プライド
第5.5話 プライド
ミラ視点
(……認めたくはないが)
(主導権は、最後まで彼にあった)
最弱の勇者。
そう聞いていた。
王国でも有名な話だ。
かつての勇者――智は、歴代でも最弱だったと。
だが。
(……本当に?)
ミラは模擬剣を見下ろす。
確かに、剣は派手ではない。
力で押すわけでもない。
だが。
王国最大流派。
ガイアス流剛剣術、免許皆伝の私の剣はあいつに通用しなかった。
(戦いづらい)
あの受け流し。
あの体捌き。
あの間合い。
すべてが妙だった。
遠くにいたと思ったらいつの間にか間合いに入られている。
クレスタ王国の剣ではない。
今まで見てきたどの剣より合理的だった。
そして何より――
(私は……)
腹に残る鈍い痛みを思い出す。
回復されたのは自分が先だった。
(…私の方が重傷だった)
(……)
(つまり――)
(あの場で、押されていたのは私だ……)
それは勇者として、あまり認めたくない事実だ。
それなのに。
智は笑っていた。
「俺の剣、地味だっただろ」
本気でそう思っている顔だった。
ミラは小さく息を吐く。
(この人は……)
弱くない。
なのに、自分を低く見ているだけなのか。
ミラは智の背中を見る。
少しだけ、口元が緩んだ。
(……もう少し)
「観察する必要がありそうですね」
最弱の勇者を。
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