第4話 最弱の剣
第4話 最弱の剣
屋敷の庭に出ると、朝の空気はまだ少し冷たかった。
芝の向こうには兵士の訓練に使う小さな空き地がある。
俺は倉庫から模擬剣を取り出した。
一本をミラに放る。
「どうぞ、勇者様」
ミラは軽く受け取る。木製の訓練剣だが、まともに当たれば痛い。
「模擬戦ですね」
「ああ」
両手に握り、軽く笑う。
「俺がどれだけ使えないか、分かるだろ」
ミラはわずかに目を細めた。
「……二刀流ですか?」
「まあな」
十五年、弱さを変えるために手探りでやってきた二刀。まだ完璧じゃない、でも今できることは全力だ。
「手加減はするな」
「望むところです」
少し離れた場所で、シルクが不安そうに見守る。
――走る!
ミラが一気に距離を詰める。速い、さすが勇者!
だが――
「……っ」
半歩だけ体をずらす。剣を受け流し、角度をつけて重心をズラしミラの居場所を誘導する。
木剣同士がバシッと乾いた音を立てる。
三撃目――横からの斬撃!
もう一本の剣で押し出すように受け、すかさず牽制。
次の瞬間――
ミラの足が芝に引っかかり、片膝がズルッと滑る!
「ぐっ……!」
慌てて剣を振り直すが、俺の二刀流が間合いを完全支配。
(地形利用は有効…っと)
四撃目――鍔迫り合いからの押し込み!
ミラの剣が手から弾かれ、慌てて拾い直す。
そのわずかな隙に軽く踏み込み、再び間合いを制圧。
五撃目――横に小さく転びそうになるミラ!
「……っ!」
しかし踏ん張って立て直す気迫。
俺は小さく微笑む。
(動きが直線的だから重心をズラしやすいな。)
六撃目――ミラの突きが空を切る!
わずかに間合いを読み違え、片足が滑った瞬間、俺は軽く横にかわし、剣の先で軽く制する。
「……っ、くっ!」
焦る声が漏れる。だが、勇者は立ち直る。
魔法世界の剣術とは違う太刀筋、二刀流。慣れない相手には戸惑いしかない。
だが――俺自身、まだ完璧じゃない。
十五年、手探りでやってきた。強くなった気はしない。ただ、今できることをやっているだけだ。
「どうした?やり辛そうだな。負かせてもらわんと困るんだが」
軽く笑みを浮かべ、次の動きを待つ。
「今の勇者ってこんなもんなのか?」
おれは軽く挑発してしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも「面白い」と感じていただけたら、
ブックマークや評価(★)を入れていただけると嬉しいです!
今後の更新の励みになります。




