第9話 奪われたまま
第9話 奪われたまま
シルク視点
私は――彼を抱きに行った。
女として使えるものは、全部使った。
彼は、拒まなかった。
何度も。
何度も。
けれど――
彼の方から求めてくることは、一度もなかった。
「……どうしてですの?」
問い詰めると、
彼は少し困ったように笑って――
「……嫌われたくなかったから」
意味が分からなかった
あんなにも、私を夢中にさせておいて。
そんなある日――
異変が起きた。
使えなかったはずの回復魔法が、発現した。
(……これ、『性の伝承』?)
おとぎ話だと思っていた。
けれど――違った。
王国に相談した。
すぐにスカウトされた。
借金を肩代わりする代わりに、勇者パーティーへ――
迷いは、なかった。
私は屋敷を辞めた。
そのときの智様は――
あの頃の、冷たい顔に戻っていた。
――でも、分かる。
あれは、傷ついていない振り。
嫌われたくないときの顔。
冷たい仮面の裏で、彼がどれだけ絶望していたか――
数ヶ月後、
私は、勇者といる。
でも――忘れるつもりはない。
この力は、
きっと、
あなたの傷を、癒すためにある。
だから――
いつか、
あなたの心と過去まで、全部。
癒してみせますわ。
――迎えに行きます。
その時は――
私は智様に、奪われて。
そして――奪われたまま。
――
数ヶ月後――
あの再会の日へ。
「……久しぶりです、智様」
※このお話は一話へ続きます
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