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5魔力検査と農業








 次の日になり、魔力検査をする事になった。




 ラノベの如く、水晶玉に手を翳すらしい。


 アンナは昨日の時点で教会に連絡していたようで、朝一番に神父様がリオーネ城にやって来た。




 煌びやかに装飾された壁や扉に、星屑を散りばめたように輝くシャンデリア、鏡の如く姿を映す大理石の床に毛足の長い上等な絨毯。

 初めて入る応接室に神父を迎え、数十人は囲える細かな装飾をされたテーブルと数時間座っていても痛くならないであろう弾力のあるソファーに皆で腰を下ろす。テーブルには専用台と一緒に魔力水晶が置かれていた。




 おお、神父様!同じ女神様を崇拝する敬虔な信徒よ!ああ、伝えたい!女神様のあの神々しさを!




 謎に赤ん坊にドヤ顔をされる神父は、困惑していた。当然である。



 貴族なのだし当然だろうが、この無駄に華美な部屋に案内され、いずれ魔力検査はされるのに、突然意気揚々と親バカ丸出しに連絡が入り、高い寄付金を用意するからと予定を返上させられ、急遽駆り出されたのだから。



 こういう親バカはたまにいる。決まって魔力を発動出来ず終わるのだが。どうせ、今回もいつもと同じ茶番だろうと来てみれば、確かに異質なこの幼児だ。更に困惑するしかなかった。



 そんな神父の表情をきっちり読み取っていたシグルドは、ため息混じりに神父に同情しながら家族を見渡す。



 父クラークはどこか誇らしげに微笑を浮かべてどっしりと構えている。さすが、侯爵家の当主だ。


 母アンナは優雅に腰を据え、こちらも微笑を浮かべる。完璧な貴族の貴婦人のそれだ。抱かれた妹ナディがまた愛らしい。


 侍女リンリンは両手を合わせ、神父の後ろに立ちスタンばっている、微笑を浮かべて。



 そう。みんな期待に笑みを浮かべているのだ!!こんな豪華な部屋に招いてさ!もう、瞳はランランだ。



 まぁ、かく言う俺自身も今世の自分の変化に胸が高鳴ってるけどもッ!




「では、シグルドお坊ちゃま。魔力水晶に魔力を流して下され」




 どうせ言葉も理解出来んだろうがな。心の声とは真逆の表情を貼り付けた神父は、流れ作業のように伝える。






「あい」





 本来なら、魔力検査は15歳になってから一律にするものらしく、生後8ヶ月の俺が受けるのは異例中の異例。まぁ異世界転生なんだし、チートというやつだろう。



 魔力を扱えないと生活がかなりし辛い世の中だが、だいたい5歳にもなれば基本的には扱えるらしい。だが個人差がある為、成人式のある15歳との事だそうだ。

 ナディはまだ魔力を流せないから15歳になってからとの事になるだろうが。



 因みに、言葉を理解しているとバレたので、昨日から返事をする様にしているがさすがに筋肉の問題か話す事はまだ難しい。パァパ、マァマ、と辛うじて話した時は泣いて喜ばれた。昨日は魔力もそうだが喜ばれすぎて、何かの記念日にすると2人ではしゃいでいたので、俺も微笑ましかった。



 さて、魔力水晶に魔力を流すぞ!昨日と同じく身体の中にある、流れる魔力を感じとる。それを右手に集めて、掌から放つイメージ!



 魔法、魔法か。この世界は魔法が当たり前。それなら漫画やアニメで散々見てきた魔法バトルもあるだろうし、魔物だっているかも知れない。



 前世で澄を護れなかった…。あんな思いはもう絶対にしたくない。俺は、強くなりたいんだッ!




 すると無色透明だった魔力水晶は、ギラギラと輝き出し部屋中に橙色の光を放つ!!



 目を開けるのが、やっとな程の凄まじい光!




「な、なんとッ?!ま、まさかこんな赤子が!?おぉ、なんと、もの凄い光!!神童ですぞ!この方は神童ですじゃ!!」



「凄いわシグちゃん!!やったわ!!土属性だわ!さすがあなたの子ですわね!」



「うむ!素晴らしいぞ、期待以上だ!シグよ!赤児でこの魔力量とは、リオーネ家は安泰であるなっ!私も鼻が高いぞ!」



「オーマイガっ!!シグルド様は、本当に素晴らしいです!!畑の収穫規模ももっと大きくなりますねー!」



「ふぇーん」




 みんなかなり大騒ぎしている!ナディはびっくりして泣き出してしまったようで申し訳ないが。俺は凄かったらしい。どうやら、この橙色の光は土属性、光の量は魔力量らしい。


 そうか、俺は土属性で魔力量多いのか。








「ほォかァはァ?」



「まぁ、シグちゃんったら、属性は1人1つなの。お父様は土属性だから、一緒よ!嬉しいねー」



「あいー!マァマはァ?」



「お母様は火属性ではあるのだけどね、魔力が弱くて魔力は使えても魔法は使えないのよ」




 はい、と発音出来ず、あい、になるのはご容赦願いたい。ふむ、そうなのか。ラノベとかで転生者は数種類の属性持ちで、主には火や水の魔法ってのを見てたから気にはなったが、土属性か。



 しかも、橙色に光るらしいな。橙色で土属性ってかなり、不遇だよな。いや、護る為に強くなりたいんだし、土魔法って言ったら護りの要だろうし…。はぁ…思ったよりショックがデカいな…。



 あれ?デジャブ…?これは、そうだ!女神様とそんな遣り取りをした記憶を思い出した。


 あーそうだよ。確かこの世界でも土属性は不遇だと女神様が仰っていたのに 、両親はかなり喜んでいるのは何故なんだ?


 しかも、どうやら一般的には魔力量が一定数を超えていないと魔法は使えないみたいだな。


 て事は、生活する上で使う魔力はかなり微々たる量で済むんだろうな。確かに、昨日あんなに電気を点けたり消したりしても、ちっとも疲れなかったからな。




 はぁ…。やはり土属性だけか。デジャヴではあるがせっかくの異世界転生で、憧れの魔法が使えて諦めてすんなり納得出来るものか。


 んー、やはり悔しい。気晴らしに気になった事を聞いてみようか。




「はァたァけェ?」



 リンリンが畑がなんだと言っていた事を思い出した。




「我がリオーネ領はこの砂漠地帯の中で多くの畑を有している。毎年、沢山の収穫があるのだ」



 息子が興味を持った事が嬉しかったのか、はたまた誇らしいからなのか、クラークの声は弾んでいる。



「そうよ。お父様のお仕事は領民を守るお仕事なの、良い土を与えれば領民は安泰するのよ」



 砂漠地帯だって!?そうか、砂漠地帯の中での畑っていったら生活する為の死活問題じゃないか!その畑が沢山あって領民を支えてるのか。両親が喜んでいたのは、こういう事だったんだな。


 人々の幸せの為、か。仕方ないな。それなら俺も力になりたい!不遇属性でも、みんなの為になるなら!



「そうだ。その為には土属性の魔法で畑を耕さなくてはならぬのだ。よしっ!百聞は一見に如かずだな。丁度昼から畑に行く故、シグも共に来るが良い」



「あいっ!!」




 クラークは思い立ったが吉日な性格のサッパリした人みたいだな。しかし外をまったく見た事がなかったからな。砂漠か。どうなってるんだ?




「おォそォとォ」



 窓の外を指差すシグルドを見て、まずはリオーネ城の外を見てみたいのだと、両親には伝わったようで、アンナはシグルドをかかえ、バルコニーに連れ出してくれた。



 そこは領地が一望出来る開けたバルコニーだった。リオーネ城は丘の上に建っているのか、麓から少し離れた所には城下町が見える。砂漠地帯だとの事だが街には緑もあり道もきっちり舗装され、まるでアラビアンナイトの世界を観ているような綺麗な家が建ち並ぶ。領民想いの両親だ、領民の生活も豊かそうで安心する。だがやはり、街の外には砂漠が見える。遠くてはっきりとは分からないが、砂漠である事には間違いない。



「見えるか、シグよ。この街並みを。この一つ一つに領民が住んでいるのだ。領民一人一人に大切な家族があり、その生活がある。お前はいずれ、その全てを守ってゆかねばならない。これから色々な経験を積み、いずれお前にも分かるだろう。人とは、宝であると!」



「そうね、シグちゃんならきっと、あなたの意志を継いでくれるわ。その生活を支える畑に、行きましょうか」



 こうして全員で作業着に着替えて、畑に向かう。


 まさか、貴族が農業をするなんて思わなかったな。だから父さんはたまに作業着を着ていたのか。確かに魔法は魔力が強くないと使えないから貴族が魔法で耕すんだな。ラノベでも貴族の方が魔力が強いって定番だしな。まぁ母さんは例外みたいだけど。



 でも貴族ってお高くとまって、農業なんて!ってイメージだったから、優しい両親で良かった。なんか良いな。こういうの!

 



 領民想いの両親の姿を見ると、胸の中がホカホカと温かくなりシグルドは自然と笑みが溢れた。




 一方、一連の流れを見ていた神父様は、終始涙を流し「女神様のお導き」と言って、寄付金は受け取らず帰っていった。




 畑に着いた一行。畑は先程見た城下町を抜け、しばらく進んだ先にあった。まだまだ砂漠地帯は遠い。リオーネ領はかなりの面積があるのだろう。


 クラークは従者に農作業の道具を取って来るように指示をだす。



 一面見渡す限りの畑。広大な土地は赤ん坊の目から見ると、より果てし無く広い。大人の目でもかなりの広さだろう。


 更に遮蔽物も無く地平線が良く見える。つまりは、遥か先まで畑なのだ!



 さっき見た方角じゃなかったからか砂漠地帯もまったく見えないな。しかしこれを耕すのが領主である父さんの仕事なのか!?



 戻って来た使用人から鍬を受け取ったクラークは、シグルドに畑の耕し方を伝授し始めていた。



「さぁ、シグ。まずは鍬を持って、こうやって土を耕すのだ。そこに土魔法を使えば魔力が栄養のある土になるのだ」



 鍬を振りかぶり腰を入れて畑を耕す、洗練された動きは、年季を感じさせる。


 銀灰色の髪に橙色の瞳の彫りの深い男前には似合わないだろうと思っていたが、、、これは、3割り増しだな。




『土を司る精霊ラゴンよ。

橙に輝く豊穣の土を

我が魔力を糧に顕現せよ!


《プラウサラス》』




 詠唱を始め、呪文を唱えるクラーク。



 

 魔法だ!初めて目にした!凄い!!耕かされた土が潤いのある色艶に変わった!!しかも、興味を唆る内容が飛び交ったぞ!へー魔力が肥料になるんだな。




「やァいたァい(やりたい)!」



「シグちゃんは、もう少し大きくなってからにしましょう。お怪我をしたら、痛い痛いするからね」



「そうだな。だが、鍬の上に乗るくらいは、良いのではないか?何事も経験だ」



「危なくないかしら?んーじゃあちょっとだけですよ」



 赤ん坊が何を!と、思った通りの反応だったが、なんとやらせてくれるらしい!言ってみるもんだな。


 まぁこの通り願望を抑えられる自信も無いけど。…ほら、今だって無駄にキャッキャと勝手に笑ってしまうし。身体に支配されてるようで自分の事ながら怖い。


 嬉しそうなシグルドに根負けしたアンナは、渋々畑に鍬を入れ、その上にシグルドを乗せてくれた。



 シグルドは思っていた。どうして、耕してから土魔法を、なのかと。


 土と魔法を混ぜれば肥料要らずになるなら、魔法で土を動かして耕せば早いと。



 えいっ!



 土に魔法を流し土を操作して耕し始めたシグルド。


 鍬の下の土は、耕かされ、耕される事に鍬が前に押し出される。


 シグルドは鍬の上に乗っているだけで、ぴょんぴょん跳ねるように畑はどんどん耕されていった!



「シグちゃーーん!!」



「すごいぞ!シグ!素晴らしい!」




 キラキラと栄養溢れる色艶に変わる土。どんどん耕して行くシグルドだが、魔力量が多くても、筋肉が無い。


 赤ん坊なのだ、実は今、掴まり立ちを生まれて初めてしている状況である。



 全身がプルプルと悲鳴をあげている。



 足腰背中腹筋腕全ての筋肉が泣いている!



 だが、前世の陸だった時代、筋トレマニアだったシグルドは耐えていた!





 筋トレとはッッッ!



 筋肉が悲鳴をあげてからが筋トレッッッ!!





「あ゛ぁぁぁあ゛ぁぁぁ゛ーーーーーー」




 シグルドの大声に、もうこんなに大きな声が出るんだなーと思う一同であった。






お読みいただきありがとうございます!

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茶色の毛から名付けた... チャゲ。 シグルド名付けセンスなさすぎて!! 声でました笑 ありがとうございます。
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