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【5000PV感謝】いつも不遇のオレンジ色と土属性を押し付けられての貴族転生だけど、いずれ魔王を倒す〜しかも一緒に転生した子は異世界で魔法少女を望む〜  作者: 赤嶺 利空
第一章 「絆編」

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第十一話 「出会い」







 リオーネの春にしてはまだ少し肌寒く、日差しも弱く感じられるも、一年で一番過ごしやすい砂漠地帯のこの時期に草花は芽吹き生き生きとしている。





 あの日、倒れた俺たちはすぐに薬師に診断されたが「眠っているだけ」との事だったらしい。疲れているのだし、と、ホッとした家族だったが、翌日には目覚めた俺とは違い、ナルディアは数日経っても目を覚さなかった。



 突然目覚めた力を酷使したのだ、当然かもしれないが。




「ふぁーあ、よく寝たー!すっごいスッキリ!お腹空いたー!何か食べる物ないかなー?」



 まさか3ヶ月眠り続けるとは思いもしない周囲とは違い、ケロっとナルディアが起き上がりウロウロと歩き出したのだ。もちろんすぐに薬師に診てもらったが、数ヶ月意識不明で寝たきりであったのに、筋肉の硬直すらも起こしておらず、「至って健康である」との事で皆安堵する。




 さて、家族だけが集められ静まり返った部屋で、クラークが戒厳令の経緯を説明してくれた。



 公にはされていないが、世界を統治する謎の政府機関がいるという事。それは何処かにある世界樹の管理の為の機関らしい。

 そして、世界樹が枯れてしまうと世界が滅亡するのだそうだ。世界樹は少しずつ弱っているらしく、治癒をしないといずれ枯れてしまう。当然、政府機関は治癒魔法の花紋使いを血眼で探しているそうだ。



 逆にナディは英雄になれるんじゃないのか?と思ったが、父がまだ幼かった頃に発見された自己治癒魔法の花紋使いが政府機関に連れて行かれたらしい。切望された治癒魔法の花紋使いとまではいかないが、何かの役には立つだろうと期待されたそうだ。

 父が成人を迎えしばらくひ帝都の騎士団の副団長を務めていた頃、偶然目にした実験記録には、何度も何度も失敗し、何をどうしても成功しないという様々な実験の詳細が書かれていたそうだ。

 自己治癒の花紋である為、非道な実験はエスカレートし続けていったのだ。更にそれが現在も、継続中らしい。


 つまり、ナディもそうなると、父は話してくれた。



 父の説明を聞いた俺達は震えが止まらなかったが、絶望感で喉が締まりうまく呼吸が出来ないナディの辛さは俺達の比では無かった。

 俺は拳を強く握りしめた後、ナディを抱き締める事しか出来なかった。そして、そんな震える俺ごと涙を流し両親は抱き締めてくれた。


 家族で必ずナディを護らないと___そう改めて誓いあった。




 それからまた3ヶ月が過ぎ季節は夏を迎えたが、皆は落ち込み元気なんて出るはずもなく、リオーネ城からは笑顔が消え失せていた。何かに付けて疑心暗鬼になり、怯える日々。


 そんな生活に嫌気がさしたのは、ナルディアだった。



「あーー!!もう止めた!要は力を使わなければ良いんでしょー?ギスギスするのは、もうウンザリ!お父様ッ!みんなで気分転換の旅行に行きましょうよ!青の国へ!」




 確かに皆が限界だ。しかし、そんな安易に考えて良い問題ではない。だがこのままでは心を病んでしまいかねないのも事実である為、クラークは言葉を躊躇った。



「はぁ。リオーネ家の家臣は優秀なんでしょー?そんなみんなを疑うのはあたし達みんなを疑う、敷いてはお父様ご自身の事まで疑うのと同じじゃないですー?あたしは皆に尽くしたこれまでのお父様の経緯を信じますーッ!!」



「……そうね。あなたが育て上げてきた家臣達を信じられないなんて、本当にダメな事だったわね。ありがとう…ナディちゃん。よし!それじゃあ、旅行に行きましょうか!」



 ナディは本当に強くなったな。花紋に目覚め、自信にも繋がったんだろう、少し大きく見える様になった。

 確かにナディの言う通り現状が何も変わらないなら、今まで通りに皆が明るく元気でいる方が良い。裏で最善の動きをすればーー。


 そう心に誓った時、ちょうど父と目が合ったシグルドは、やはり、父様も同じ考えか、と久しぶりに少し柔らかい表情を浮かべた。




 いざ、大人のように流暢に話す5歳児二人を連れた異様な家族旅行はスタートした。



 思えば初の旅行だ。しかも海外。父様は仕事も兼ねてるみたいだけど、青の国といえば水の国!ゆっくり静養する為には空気の良い所が一番との事で、先に大きな湖がある自然豊かなリンリンの実家に行く事になった。距離としては、馬車で2日程。旅行には最適である。




「湖かぁ!!あたし初めてだよ!リンリンの実家も楽しみー!」



「自然がいっぱいで危ないから、兄ちゃんから離れちゃダメだぞ」



「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」



 元気になったみたいで良かったけど、前世でも湖を見た事がないのかもしれないな。前世の姿は、まだ今のナディとそこまで変わらないくらい幼かったからな。



 ニコッと満面の笑みを浮かべるナルディアを見て、花紋に目覚めてからはかなり大人びたが、やはりまだまだ5歳児。可愛い笑顔に安堵する。




「観光地にしては寂れた街ですが、美しい山々と新緑が美しい所です。この時期ならばナディ様が見たがっていたモノも見られるはずですよ」



「そうなんだ!やったー!楽しみが増えちゃった!」



 リンリンの言葉に気丈に返しながらも、胸をギュッと握るナルディア。そんな妹の左手をそっと握り、ニコッと微笑む。




 リンリンの実家にたどり着いた一行は、話に聞いていたよりかなり大きな湖や美しい新緑の風景に感動していた。



「わぁーー!!海みたい!これ、本当に湖なの?でも夏なのに肌寒いんだね」



「ここは山深いせいか、今は春くらいの気候だからまだ少し肌寒いわね。わぁ、本当にいつ見てもキレイな湖ね!でも、これでも少し小さくなったんじゃない?最近ずっと雨が減ってるから湖の水にも影響が出てるのねー」



「水不足?確かに雨があまり降らないなとは思ってましたが、冬は寒くて気付きませんでした」



 まぁ元々リオーネの気候は雨が少ないからな。確かに、前以上に乾燥すると母様が嘆いていた。



「そうよねー!このモチモチには関係無い話だものねー」



「確かに、お二人のほっぺはモチモチですねー」



 シグルドの両頬を手で覆い感触を楽しむアンナとリンリンの久しぶりの笑顔を見られて安堵する。




 数日後、クラークに連れられやって来た一行。



「そろそろ例のモノが見頃だそうだ」




 その一声でナルディアが高揚しているのが分かる。例のモノ。ケマンソウを見られるのだから。




 山道に入り草花が咲く綺麗な景色が増えて来た。クラークが足を止め、皆が父の視線の先を眺める。





「これが…ケマンソウ…」




 そこにはハート型が一つの蔦にずらりと並ぶなんとも可愛らしい花が咲いていた。



 ケマンソウの花というのは、ナルディアの胸に刻まれているハート型の花紋の花である。シグルドの前世にも存在する花。




「初めて見た!こんなに可愛い花だったのか!」



「本当に!こんなに可憐で愛らしい花は見た事が無いわ!」




「さすがナディお嬢様!花にまで愛されておられたのですね!」




 皆の賛辞を受け、ナルディアは下を向き、胸をギュッと押さえると、顔を上げた。




「本当に?」




「ああ、ナディにピッタリだよ」




 シグルドに抱きついて笑顔をこぼすナルディアをギュッと抱き締めて返すと、ナルディアは泣き出してしまった。



「みんなの為に気丈に振る舞って、ナディは偉いよ!兄ちゃんの自慢の妹だ!安心しろ。兄ちゃん、絶対にナディを守れるくらい強くなるからな!誰にもナディを渡さないから!」



「うん!信じてる!だって、お兄ちゃんはあたしの自慢だもん!」




 ありがとうナディ。



 俺は、ナディを守れる強さを手に入れてみせる!土属性だろうと関係ないッ!不遇だろうが、今度こそ妹を必ず守ってみせる!!




「父様、魔法を教えて下さい」




 意志の強さを纏った眼を受け、了承したクラークに意を唱える者は誰もいなかった。



『あんたに、魔法を教えられる奴はいないっつーの』



「誰だ!?」



 聞きな慣れないその声に、会話を聞かれた焦りを覚える。が、辺りを見回してもここには誰も外部の者はいない!



『ここだよ!』



 すると、ケマンソウの花が赤く光り輝き、『キュルーン』、という音を立てて掌サイズの2頭身の妖精が姿を現した!!



『ナルディアーッッッ!初めましてー!ずっっと会いたかったよー!アタシは、ハーティ!ナルディアの妖精だよ!』



 小さいが、きっちりと貴族風の挨拶であるカーテシーをするハーティは、満面の笑顔でナルディアにハートを飛ばす。




 よ、妖精か!!そうか!魔法少女には妖精が付きものだもんな!確かにいない方が変なのか!すっかり忘れていた!




「あ、はは!びっくりした!わー!妖精だー!ハーティ!よろしくね!」




 ナルディアもシグルドと同じ考えに至ったようで、すっかり意気投合している。周りの反応は、まぁ、今更、と受け入れる以外の選択肢を失っていた。




「ハーティ、よろしく!俺はシグルド。会えて嬉しいよ」



『あーん?お呼びじゃないんだよ!感動の出会いに水刺しやがって!シッシッ!あっちに行ってろよ!』




 なっ、なんだこいつ!かなり口が悪いな!いや、邪魔した俺が悪いのか?




 たじろぐシグルドにガンを飛ばし威嚇し続けるハーティ。




「シグ様への先程からの悪態、いくらナディ様の精霊でも許しませんよ」




 俺を護る様に間に割って入ってくれたリンリンが、牽制してくれる。




「こらっ!何してんの?お兄ちゃん達はあたしの大好きな人なの!仲良くしないなら、ハーティとも仲良くしないよ!」



『えっ!ナルディアー!そんなに怒らないでー』




 プイッとそっぽを向くナディに、ハーティはかなりの慌てようだ。数ターンの押し問答で仲良くするという事で話が着いたらしい。




「ところで、どうして俺には魔法を教えられないんだ?」



『あんた、自分と父親の魔法の違いにも気付いてないでしょー?』



「俺と父様の魔法の違い?」



 先端にハートの付いたタクトを俺に向けて説明を始めるハーティ。



『アタシずっと見てたんだからね!父親が使ってる魔法は、普通の魔法。あんたのは特別でしょ!そんな事も分からずに魔法を使ってんだから!』




 特別?土属性魔法には違いがあるのか??俺はナディを守れる力だ欲しいのに特別なせいで強くなれないっていうのか…?




『だぁー、基本中の基本でしょうが!』



「痴れ者め。たかだか花の精如きが我が主人へのこれ以上の狼藉は見過ごせぬ」



 今度はハンスが威嚇をする。いつ襲い掛かってもおかしくない程の殺気を放つ。



『あらー?そんな事して良いのかしら?ナルディアを助けに来た、このアタシに向かって』



 その一言は、先行きの見えない不安に苦しむ一同には、一筋の光に見えた。



「ハーティ殿、詳しくお話願えるだろうか。不躾で申し訳ないが、私はナルディアの父クラークだ」



『ふーん。少しは、状況が分かってるようね。良いわ、教えてあげる』



 ハーティが話す内容の全てが真実なのかは分からないが、どんなに抗おうとも現実は世知辛いものだった。



 戒厳令を布かれようが、人の口は塞がらない。当たり前である。古傷が癒えた者、若返った者、髪が生えた者、眼が見えるようになった者。そんなもの隠しようがないのだ。



 既に政府機関が動き出している。



「助ける、と、そう仰って頂きましたが、どうやってですの?」



 アンナは食い入るようにハーティに問う。母である、当然心配で堪らないのだろう。



『精霊界に連れて行くの。だからあんた達とはお別れってわけ。仕方ないじゃない?ナルディアは愛属性なんだから。特別なの。何も、アイツらだけが望んでいた訳じゃないのよ』




 皆が口々に静止するが、現状打開策がある訳ではない。今、この場で地獄へと連行されてもおかしくはない程差し迫っているのだから。




「ナディを…連れて行く…?俺は…また…守れないのか…。ナディの、安全は、幸せは、保証出来るのか?俺も、俺も一緒に連れて行ってくれ!」



『は?何?ケンカ売ってんの、あんた?アタシのパートナーをアタシが傷付けるって言いたいわけ?』





 その時、凄まじい衝撃が走った。




 くぅっっっっ




 ハーティから放たれる威圧に空気が振動し、全員の髪が舞い、身の危険を感じ、鳥や動物達も逃げ惑う。



 明確な殺気だッ!



 なんて威圧感だ。ビリビリと感じる。だが、絶対に引ける訳がない、ナディの、俺の妹の、大切な事だッッッ!!!




「おやめなさい、ハーティ」



 緊迫した空気を制したのはリンリンだった。




「シグ様、お気持ちは分かります。ですが安心してください。精霊はパートナーを傷付ける事はありません。いかなる時も主人を護る存在です。そして精霊界は安全な場所でございます。ハーティがこの提案をしたという事は精霊界側も了承済みだという事でしょう。通常立ち入る事が出来ない以上、あの場所程安全な場所はないでしょうから。私のとても大切な人が精霊と契約をしておりますので、精霊については重々承知しております。私よりもお強いナディ様を守るには精霊界しかないでしょう」



 いつにもまして凛と話すリンリン。ウィニキートスとしての師範代を務めるリンリンにあれだけの負傷を負わせたナルディア。その言葉の重みは痛い程伝わった。



「…ごめん、リンリン。…ごめん。でも、俺…ナディを守りたいって…ずっと…思ってたのに」




「シグよ、分かっている…。皆…、同じ思いだ」




 またかよ…。俺は、また…守れなかったのかよっ…また…。



「生きていればまた会える。私も含め、共に精進するのだ。必ずナディを守れるように」



「父様……」



 転生して5年…。まだまだ幼い身体。努力をしてもまだまだ足りない…。でも、必ず強くなってナディを守ってみせる!!




 意を決し、リオーネの家族面々は顔を見合わせ頷き合う。それが最善なのだと。



 そして、父が、母が、兄が、頭を下げる。




「「「どうか、ナルディアを、よろしくお願いしますッッッ!!!」」」




 護れない悔しさ、不甲斐ない無力感、幼い家族と生き別れる悲しみ、信じきれない不安。



 それぞれが入り混じった感情を堪えられずに上げられない顔から落ちる雫は、地面だけを濡らす。



「みんな、今までありがとう。大丈夫だよ、あたし、強くなって必ず帰って来るから!だってあたしは、魔法少女だからッ、ねッ」



 妹もまた、止められない雫を拭えないまま気丈に振る舞う姿を、皆で抱きしめ合う。



 皆それぞれの想いを伝え合い、ナルディアは、次元の狭間に消えていったのだった。



「必ず、帰って来るからねッ!」



 強い、想いを残して___。







一章完結しました!

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― 新着の感想 ―
第一章とっても面白かったです。 私は小説を読み始めてもすぐに読む気が失せてしまうのでお気に入りと出会えることはなかなかありません。 赤嶺さんの作品は読みやすくて自然に登場人物や場面を想像することができ…
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