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『魔力収束トーナメント規則』

カルパティア王立学院では、毎年特別な大会――

魔力収束トーナメントが開催されていた。

そこでは魔導師と騎士が、厳格な規則のもとで対峙する。


目的はただ一つ。

互いの戦闘技術が、実戦においてどれほど有効かを測ること。

――ただし、命を奪うことは決して許されない。


■ 試練の目的


騎士側は、決闘円の内部へと踏み込み、

倒されるか拘束される前に、物理的に魔導師へ接触することが求められる。


一方、魔導師側は距離を保ち、

決闘円の内側境界を越えることなく、相手を無力化しなければならない。


■ 一般条件


試合時間

一戦につき最大三分。

もしくは、どちらか一方が戦闘不能になった時点で終了となる。


戦場

直径三十メートルの魔法闘技円。

内部には複数の同心円状エネルギー層が張り巡らされており、

魔法の威力を増幅する一方で、

円内での肉体的な速度は制限される。


■ 使用可能な装備


騎士

・軽装鎧の着用を許可

・刃のない訓練用武器を一本まで使用可能


魔導師

・使用可能な魔法はベータ級以下に限定

・殺傷性のある術式は禁止


■ ダメージ制限


致命傷を与える可能性のある攻撃、

あるいは危険度の高い魔法行使は、厳重に禁止されている。


このトーナメントは競技であり、処刑ではない。

それが、学院における絶対の掟だった。



『閃光のあいだの約束』


王立学院のコロッセオは、決勝戦を迎えた熱気で震えていた。

観客席には学生、教師、そして招待された貴族たちが詰めかけ、空気はマナと汗の匂いで満ちている。


準優勝決定戦では、魔導師部門二位のアデラが、騎士部門二位のカラと対峙した。

戦いは苛烈を極めた。

雷撃が鋼に叩きつけられ、魔力の咆哮が剣の金属音とぶつかり合う。

最後は、カラの正確無比な突進がアデラの防御陣を打ち破り、

歓声と驚嘆の中で勝利を掴んだ。


三位決定戦では、魔法科の優しき治癒師エミリーが、騎士部門三位のアンドリューと激突する。

その戦いは技術的で優雅――戦闘というより、まるで舞踏のようだった。

しかし最後は、騎士の一撃が防御を砕き、アンドリューの勝利が宣告された。


四位決定戦では、炎の戦術家キャサリンが、騎士部門四位のジャンと相まみえる。

闘技場は黄金の炎に照らされ、ジャンは必死に耐えたが、

制御された爆発により円外へと吹き飛ばされてしまう。

火花と煙の中、キャサリンは勝利の腕を掲げた。


――そして、最も待ち望まれた瞬間が訪れる。


騎士部門王者ルシアン・ダグラス。

対するは、魔導師部門王者エリザベス・ヴァルトリア。


コロッセオは静まり返った。

魔法陣の両端で、二人は互いを見据える。

低く構えた剣を持つルシアン。

杖を地面に向け、絶対の自信を湛えた微笑みを浮かべるエリザベス。


審判が手を挙げた。

「――始め!」


円が光を放った瞬間、ルシアンは基礎魔法・第五階位を発動する。

闇色のマナが第二の皮膚のように全身を覆い、周囲の塵を弾き飛ばした。

そして――走る。


一歩ごとに、地鳴りのような音。

距離を詰めるたび、魔力の圧が増していく。


エリザベスが反撃を開始した。

稲妻が空を切り裂き、眩い直線となって円内を走る。

雷撃は激しく彼を打ち、身体を震わせたが――

ルシアンは止まらなかった。


皮膚は焼け、呼吸は乱れる。

それでも、前へ。


観客が息を呑む。


エリザベスが杖を掲げ、決定打を放とうとした、その刹那。

ルシアンはエネルギーの波を突き抜け、

煙と電光に包まれたまま踏み込んだ。


刃のない剣が、魔導師の肩に触れる。


――沈黙。

そして、爆発するような拍手と歓声。


審判の声が響いた。

「勝者――ルシアン・ダグラス!」


荒く息をつきながら、ルシアンは剣を地面に突き立てる。

彼はエリザベスを見た。

汗に濡れ、火花をまといながらも、彼女はなお微笑んでいた。


「……楽しめたか?」

疲れた笑みでそう問う。


エリザベスは首をかしげ、愉しげに答える。

「ええ、とっても。――また、やりましょう?」


その瞳が、きらりと輝いた。


観客席は再び歓声に包まれた。

だがルシアンの耳には、ほとんど届いていなかった。


戦いの余韻。

肌を焼いたマナの感覚。

そして、あの魔導師の視線――


そのすべてが、深く彼の記憶に刻み込まれていた。

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