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崩れゆく城壁(ラ・ムラージャ・ケブラーダ)

ローレンスはヴァイレンシティの城壁を、険しい表情で見つめていた。

公爵領の魔術師たちは城門に集中攻撃を仕掛けており、

三つの部隊に分かれて交代しながら魔力を消耗しきらぬよう戦っている。


すでに二日間、休むことのない包囲戦が続いていた。

守備側に立て直す時間を一切与えないためだ。

魔法による防御で強化された城壁も、

絶え間ない攻撃の前に、少しずつ悲鳴を上げ始めている。


――城壁が崩れれば、次は騎士たちの出番だ。

そこで始まる白兵戦が、この都市の運命を決める。


ローレンスは、潜入していた諜報員たちの報告を思い出していた。

都市には、防衛側を強化し、侵攻側を弱体化させる

三つの広域魔法が張られている。


彼の当面の目的は明確だった。

都市へ侵入し、

最も優秀な部隊を送り込んでその魔法を破壊すること。

それによって、ダグラス軍は無駄な犠牲を出すことなく任務を遂行できる。


ダグラス家の軍は、装備の質が段違いだった。

武器、鎧、そして魔導具――

それらは王国建国の時代から受け継がれてきた遺産であり、

幾世代にもわたる公爵たちが、

戦争と戦略の中で鍛え上げてきた結晶でもある。


それに比べ、デニッセ伯爵家が貴族となってからは、まだ三代。

兵の数こそ多いものの、

経験も資源も、公爵領には到底及ばなかった。


ローレンスは眉をひそめたまま、問いかけた。


「兵の準備は整っているか?」


将軍アレフが力強く頷く。


「はい、閣下。

 城壁が崩れ次第、即座に都市へ進軍する手筈です」


ローレンスは短く命じた。


「私と共に進む兵に伝えろ。

 すぐに動けるよう、準備を整えさせろ」


アレフは一瞬言葉を詰まらせた。

声がわずかに震え、そこに隠しきれぬ不安が滲む。


「閣下……どうか、お考え直しください。

 指揮所に留まり、無用な危険を冒すべきではありません。

 兵たちは必ずや、役目を果たします」


だがローレンスは、城壁から目を離さずに言い切った。


「何度も言ったはずだ。

 ソフィアが指揮を執る。

 敵が目の前にいるのに、腕を組んで待つ気はない」


アレフは護衛を申し出たが、

ローレンスは首を横に振った。


「ついてくるな。

 それに、もし私に何かあれば――

 お前は、ルシアンが次の公爵になる姿を見られなくなる。

 それを、あれほど私に勧めていたのは誰だった?」


アレフは深く一礼し、静かに答えた。


「……閣下。

 あの時は、ただ正気に戻っていただきたかっただけです。

 最も有能な御子息を、正式な後継者に据えてほしかった」


ローレンスは短く頷いた。


「分かっている。

 後方の部隊を指揮し、問題が起きたらすぐに対処しろ」


アレフは命を受け、指揮官用の天幕へと戻った。

そこには、すでにソフィアが待っていた。


彼女はアレフの表情を見て、片眉を上げる。


「その顔……聞いてもらえなかった、ってところね?」


「はい、公爵夫人。

 公爵は前線に立つつもりです。

 自ら危険に身を置くことを、譲りませんでした」


アレフがため息混じりに答えると、

ソフィアは腕を組み、地平線を見据えた。


「心配はいらないわ。

 あの人は、自分の身くらい守れる。

 それに、あなたが精鋭をつけたでしょう?」


彼女は静かに言葉を続ける。


「今は、この戦争を一刻も早く終わらせることだけを考えなさい」

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