「闇の代償」
シノフェリアの森は、生きているかのように広がる闇に覆われ、ねじれた枝の間から月光を押しつぶしていた。異常な静けさが空気を支配し、踏みしめる葉の音だけが、ブラゴズとディミトリの歩みによって破られる。湿った濃密な下草を踏みしめながら、二人は進んでいた。
ブラゴズは力強く歩き、その威圧的な姿はほとんど触れるほどの圧力を放っていた。眼差しには、怒りと抑えきれない苛立ちが燃え盛っている。ディミトリは数歩後ろを慎重に歩き、言葉一つで命が絶たれることを知りながら、細心の注意を払っていた。
突然、ブラゴズが立ち止まった。激しく振り向き、深紅の瞳に奈落の怒りを映す。
「ディミトリ、お前は無能だ」彼の声は雷鳴のように木々の間に響いた。「たった一人で、俺の兄弟の一人を召喚するために一万の魂すら集められんのか」
ヴァンパイアは唾を飲み込み、空気が重くなるのを感じた。悪魔の存在だけで身体が震える。しかし、言葉を絞り出す。
「主よ、私の忠誠は揺るぎません」声は震えていた。「しかし、この計画を一人で実行することはできません。だからこそ、主の力が必要なのです。マナの高まりが訪れるとき、すべてが整うように」
ブラゴズの瞳に抑えきれぬ怒りが灯る。彼は一歩踏み出し、その影がディミトリを完全に覆った。
「お前と過ごした二十五日、すべてが拷問だった」軽蔑の吐息をもらす。「言葉で無能さを補えると思うな。言え。どうやって自分の過ちを償うつもりか…俺の忍耐が尽きる前にな」
ディミトリは頭を下げ、深く息を吸った。たった一度の失敗が運命を封じることを知っていた。
「王国内のカルトの全員を集めました」声に力が宿る。「学院の生徒を待ち伏せしました。隠れ場所から引きずり出した後、犠牲として捧げます。しかし、主の力が必要です。森で最も危険な魔物を呼び寄せてください。そうすれば、儀式は無敵になります」
ブラゴズは軽蔑の目でディミトリを見つめ、牙を覗かせて残酷な笑みを浮かべた。
「俺をお前の愚かな計略の餌に使うつもりか?」冷たい声で問いかける。「いいだろう、ヴァンパイア。もし計画が失敗したら、お前の魂を引き裂き、兄弟たちへの供物にしてやる」
「承知しました、主よ」ディミトリは忠実に頭を下げるが、心中では火のような思いを燃やしていた。
(いつか…必ず、俺はお前たちから自由になる。その時、地獄は俺の本当の姿を知るだろう)
影が囁くように二人の思考を覆い、森の奥へ進む。木々の間で、カルトの五十人は幽霊のように動き、緑の炎を灯したたいまつが狂信と狂気に歪んだ顔を照らす。
森の奥深くに進むにつれ、空気はさらに濃くなり、霧が巨大な根や暗闇で光る目を隠す。目標は明確だった。森の王――Ωランク(オメガ)の魔獣、古代かつ破滅的な存在――をも呼び寄せること。彼の覚醒は自然災害と同等とされる。
堕落した魔法使い、刻印を受けた戦士、召喚された獣たち――呪われた軍勢が整う。
儀式は始まろうとしていた。
カルパティア王国に、新たな闇が覆いかぶさる予兆だった。
一方、ルシアンは護衛を従え、アクロポリスの街へ向かっていた。月末が近づき、エリザベスへの約束――デート――の日も迫っている。
石畳を駆ける馬の蹄音が心地よく響く中、彼の思考は浮遊していた。
心の準備を整えなければならなかった。姫は絹の衣をまとった嵐、抵抗は容易ではない。
前世、エリザベス――魔王として君臨していた彼女――は、PCの壁紙だった。権力と欲望の象徴。
今、実体として彼女とデートすることが、非現実的に思えた。
その考えに、微笑みがこぼれ、同時に震えが走った。
夜が訪れ、ルシアンは劇場に入る。
建物には七つのホールがあり、どれもクリスタルのシャンデリアと光を吸い込む赤いカーテンで飾られていた。
エリザベスは第四ホールで待つように告げていた。
入ると、彼女は広いホールの中央で一人座っていた。金色のスポットライトに照らされ、挑戦的な視線をルシアンに向ける。
「私のために演じるつもりか、姫君?」ルシアンはいたずらっぽく微笑む。
「ええ」エリザベスは眉を上げる。「そしてあなたも、私のために演じるの」
「劇場を丸ごと貸し切って、演技ごっこを?」
彼女は本を手に取り、魅惑的に危険な表情を浮かべる。
「これ、私の好きな小説の一つ。あなたと演じたいの。私はリリス、純粋さを象徴する侍女。あなたは邪悪な公爵、彼女を堕落させ王国を滅ぼそうとする」
ルシアンは眉を上げた。
「そんな不条理なアイデアはやめろ、姫」
「心配しないで」エリザベスはウインクして楽屋へ向かう。「台本通りに演じるだけ…あまり即興はしないこと」
ルシアンはため息をつき、台本を手に取る。
物語は予想以上に濃厚だった。公爵は執着するが、侍女は純真を象徴し、誘惑と権力のゲームに巻き込まれる。
エリザベスが侍女の姿で戻ると、ルシアンの心臓は跳ね上がった。
質素な衣装と王族としての佇まいのギャップが、彼女をさらに魅惑的に見せた。
「いかがですか、私の公爵様?」いたずらに身をかがめる。
ルシアンは自制心が揺らぐのを感じた。
「限界まで責めるな、姫」
「ただの小さな芝居よ。始めましょう?」危険な笑みを浮かべる。
演技が始まる。声は空のホールに響き、物語が進むにつれて、登場人物たちは演じる者をも飲み込むようだった。
エリザベスは偽りの純真と計算された魅力を行き来し、ルシアンは誘惑する公爵を自然に体現する。
そして、決定的なシーン――キス。
エリザベスは緊張しながら、ルシアンのために待つ。しかし、彼は躊躇しない。
腰に手を回し、力強く、ためらわずにキスをした。
一瞬、時間が止まった。
(この世界で死ぬことがあれば、少なくともこの記憶を持っていこう)ルシアンは心の中で思った。
ゆっくりと離れ、微笑む。
「どうした、姫? セリフを忘れたのか?」
「バカ」エリザベスは息を荒げて囁く。
「違うだろう。この場面をもう一度やろう」ルシアンは挑むように言った。
「楽しんでるでしょ?」彼女は困惑と楽しさの入り混じった顔で尋ねる。
「姫の望みに応えているだけだ。後悔してるのか?」
「こんなので怯えると思う?」顎を上げる。
「証明してみろ、姫」彼は再び近づく。
三度、同じ場面を繰り返す。
しかし最後には、エリザベスも、二人が演じているのか、それとももっと危険な何かに落ちているのか、わからなくなっていた。
長年、彼女は挑発を楽しんだ。ルシアンの赤面を見て、優越感を得ていた。
だが今、ルシアンは違う。挑戦的で、自信に満ち、目を逸らさずに彼女を見つめる。
その力に、彼女は無防備になる。
舞台の光がゆっくり消えるとき、エリザベスは気付いた。
この遊びは単なる冗談ではなく、見えない境界線を越えてしまったことを――
初めて、誰が主導権を握っているのかわからなくなった。




