「山へ向かう道」
後ろに全軍を従え、鎧は日差しに輝き、魔法使いたちのマントは風に靡き、旗は丘を覆う色の海のようだった。エミリーは深く息を吸い込み、迫り来る混乱の中で一瞬だけ心を落ち着かせた。
ルシアンはアルベルトを呼び寄せ、経験豊富な戦士としての意見を求めた。作戦を安全に進めるためだ。
アルベルトは眉をひそめ、声は乾いた硬さで応える。
「賛同できません、殿下。この件は我々の管轄ではありません。」
ルシアンはため息をつき、説得を試みる。
「そうか、二人目の反対か…だがエミリーには約束した。助けると。君の協力が必要だ。」
アルベルトの口調には皮肉が混じるが、軽く鋭い。
「なるほど…では、結婚したときは、エミリー嬢が公爵領を仕切るのか?私も彼女のご機嫌を取るべきか?」
ルシアンは声を上げ、苛立ちを露わにする。
「手伝うつもりなのか、それともただ茶化すつもりか?」
アルベルトの表情が変わる。皮肉は消え、決意に置き換わった。
「もちろん手伝います、殿下。この任務が婚約者の心を得るために重要なら、成功させねばなりません。」
ルシアンは安堵の息をつく。
「では、他の騎士たちを説得して支援させてくれ。」
アルベルトは忠誠心をにじませる微笑を見せる。
「説得など必要ありません。殿下が命じれば騎士たちは従う。それが我らの義務であり、最大の名誉です。たとえ死地に向かうとしても、殿下のためなら喜んで従います。」
ルシアンは仲間の眼差しを受け止め、感謝しつつも冷静に告げる。
「ありがとう、アルベルト。しかし死地には向かわない。誰も傷つけないように手伝ってほしい。」
アルベルトは真剣に頷く。
「全力を尽くします。しかし冒険者たちとも話すべきです。三体のリンチがアンデッドを召喚するのは脅威ですが、対処可能です。この村に現れたときも、我々と戦う前に退いていました。」
ルシアンは眉をひそめ、状況の深刻さを理解する。
「誰かが彼らを操っているのか?悪魔教団か…」
アルベルトは厳しい声で頷く。
「その通りです。通常、犠牲者を誘拐して悪魔を召喚します。高位の悪魔は膨大な犠牲が必要です。ここでは人数が限られています。」
「なら、下位の悪魔を召喚しようということか。」
「そうです。王国には危険はありませんが、小さな村や中規模の集落には地獄になります。」
ルシアンは考え込む。
「悪魔召喚には生きた人間が必要だ。きっとどこかに閉じ込めている。」
アルベルトは厳しく警告する。
「愚かではありません。誘拐者を守るため、基地周辺に罠を仕掛けているはずです。」
「危険が高い、ということか…」
ルシアンは心配そうに呟く。アルベルトの沈黙がすべてを物語る。
ルシアンは状況を整理する。ケイタロウは王国で妻を失い、英雄たちの助けを得れば歴史を動かせる。エミリーが味方であれば、成功の可能性は高まる。
一方アルベルトは騎士を編成し、冒険者たちを呼び寄せた。
「殿下は、村人を救出する作戦を行うと決めました。そちらはどうするつもりですか?」
カインが一歩前に出て決意を示す。
「手伝います、殿下。仲間の仇を討ちたい。」
アルベルトは権威を示し、頷く。
「参加するなら、命令に従うこと。銃火の中で混乱したり、騎士を傷つけたりすることは許されません。わかりましたか?」
冒険者たちはうなずき、ルシアンとアルベルトのもとで連携する準備を整える。
山の上では、悪魔教団の黒魔術師ジェルゲスが部下に指示を出していた。
「支援魔法を展開し、全員に知らせろ。王国軍が来たら退くのだ。」
部下が緊張して尋ねる。
「犠牲者はどうしますか?悪魔を召喚するには足りません。」
ジェルゲスは冷たく答える。
「兵が来れば逃げる。予言は近い。我らの主、魔王がクリアに降臨し、願いを叶える。我慢あるのみだ。」
一行は山道を進む。アルベルト、ルシアン、エミリー、アデラが中央を進み、ウンバーとアウレウスが周囲を警戒する。
ルシアンは眉をひそめる。
「方向は確かか、アルベルト?ウンバーを偵察に向かわせるべきでは?」
アルベルトは自信たっぷりに笑う。
「ウンバーの嗅覚は万能ではないが、腐ったマナの匂いは感じる。助けが必要なら知らせる、殿下。」
突然、ウンバーが動きを察知。ルシアンとの連携で、グループは木々に隠れる。前方には黒マントの男たちが20人、男女や子どもを縛っていた。
アルベルトの合図で、騎士たちが攻撃に移る。数と連携の優位は圧倒的で、教団を驚かせる。三騎士が敵一人に異なる方向から襲いかかり、八人を倒し、十二人を捕縛。
ルシアンはチャールズに命じる。
「捕虜を安全な場所に移し、できるだけ情報を集めろ。」
「承知しました、殿下。」
次に全員に告げる。
「さらに進み、地域を調査し、次の作戦を練る。」
アルベルトが補足する。
「救出した者も村に戻す。十騎士を警護に割り当てる。」
夜が迫る中、ルシアンはエミリーに心配そうに尋ねる。
「大丈夫か?テントは張らない、目立たぬようにする。」
エミリーは自信に満ちた笑みで応える。
「大丈夫、ルシアン。私も戦えるよう訓練済み。侮らないで。」
白い獣が近づき、ルシアンのそばに座る。アデラも一緒だ。
「アデラ、何をしている?」
「殿下とエミリー嬢の食事を持ってきました。」
ルシアンは眉を上げる。
「つまり“見えない”食事か?」
アデラは笑い、腕輪から果物と干し肉を取り出す。
「騎士たちは常に非常用を備えています。生き残るためです。」
「ありがとう、アデラ。」ルシアンは微笑む。
エミリーはアウレウスを撫でる。
「ウンバーは戻るのに時間かかる?」
「彼に任せて休めます。私は安全を見守ります。」
「触ってもいい?」
「もちろん、エミリー嬢。」
エミリーは微笑み、白獣の毛を撫でる。
「強そう…」
「C–イプシロン級です」アデラが説明する。
「王国で調教師に訓練された最強の魔獣。」
ルシアンはため息。
「自慢するな」
「自慢じゃない、殿下。アウレウスと私は、彼女の最強の僕です。」
エミリーはアデラの自信に微笑む。
アルベルトとチャールズが深刻な表情で近づく。
「殿下、悪い知らせです。」
ルシアンは皮肉に笑う。
「当ててみよう…罠とアンデッドか?」
「教団員も多く、基地を築いていました」アルベルトが付け加える。
「大きな計画か?」ルシアンが尋ねる。
「予言と魔王の時期のことだけでした」チャールズが答える。
ルシアンは眉をひそめ、興味深く考える。
「奴らは知っている…でもどうやって?」
エミリーが尋ねる。
「知っているって、何を?」
「関係ない」ルシアンは呟く。
「どうする、アルベルト?」
「兵と魔法使いを分散させ、山を包囲する。入口は複数ある。チャールズ、レオニダス、私で部隊を率いる。殿下は主入口にエミリーとアデラと共に残る。冒険者たちは副入口をカバーする。」




