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「痛みを伴うレッスン」

マグナスはカーラを抱き上げ、建物内の治癒室へと運んだ。

一方、ルシアンは身体の痛みに耐えながら、自室へ向かい、残りの一日は誰とも接触せずに休む決意を固めていた。

しかし、部屋を出ようとしたその時、心配そうな声が耳に入った。


「ルシアン、大丈夫?」

エミリーが不安そうな目で問いかける。


「…大丈夫だ。数日休めばいい」

折れた肋骨の痛みを隠しつつ、何とか平静を保とうとするルシアン。


「まだまだ初心者だけど、この数日間に学んだ治癒魔法で、手伝えると思うの」

エミリーは一歩前に出る。恥ずかしさを押し殺しながらも、その瞳には真剣な決意が宿っていた。


彼女は慎重に手を差し伸べ、患部に置く。

柔らかく呪文を口にし、手のひらから淡い青い光が溢れる。

温かな治癒の感覚が、ルシアンの脇腹を走った。


その瞬間――何かが崩れた。


痛みではない。

それはまだ感じてはいけなかった、静寂のような感覚だった。


触れ方は優しく、正確で、真摯だった。

その事実が、彼の心を凍らせた。


身体は先に反応した。

筋肉が緊張する。痛みではなく、不可解な確信のせいだ。

まるでその温もり――祝福にも似た感覚――が、まだ存在すべきではない瞬間に属しているかのようだった。


――運命が彼を待つ未来では、世界が炎に包まれる時、エミリーはそばにいないはずだ。


ルシアンは歯を食いしばる。


傷を恐れているのではない。

――慣れてしまうことを恐れていた。


「ありがとう、エミリー」

声を無理に落ち着かせて言う。

「助けてもらって、本当に助かった」


――そしてそれが、最悪だった。


エミリーは穏やかに微笑み、腕に寄りかからせながら、廊下をゆっくりと慎重に進ませる。

ルシアンは体力を振り絞るが、彼女の存在が、少しだけ重荷を軽くしてくれた。


遠くの柱の陰から、アレハンドロが観察していた。

その表情は抑えきれぬ怒りと隠し切れない嫉妬が入り混じっていた。

拳は白くなるまで強く握られ、目はエミリーの一挙手一投足、ルシアンに向けられる微細な接近や言葉を追った。


彼にとって、それは単なる気まずい場面ではない。

――屈辱だった。

そして屈辱は、必ず返さねばならない。


週の終わり、1A教室で戦闘のクラス分けが始まった。


生徒たちのざわめきは、クララ先生が手を挙げた瞬間に止まった。

平台の上で、ジャスリン・エルカームとサンドラ・ザ・モンドリングが四メートルの距離で向かい合う。

言葉は交わされない。

この沈黙が、試験の一部であることを二人は理解していた。


「始め」


最初に動いたのはサンドラだった。


水が勢いよく噴き上がり、光を遮るほどの塊となり、ジャスリンへ生きた波のように押し寄せる。

衝撃は全てを押し流さんとする威力だ。


しかしジャスリンは間一髪で反応した。


空気は鋭く切り裂かれ、水は進行中に凍りつき、氷の破片となって平台を打ちつける。

残りは冷たい雨となって散乱し、床を濡らした。


戦いが終わった時、ジャスリンは立っていた――だが呼吸は荒い。


エミリーはすぐに気づく。

呪文は成功していた。しかし、手は震えていた。


数秒後、サンドラは膝をつく。

腕の一部は霜で覆われ、肌は赤く硬直していた。

叫ばなかったが、その表情だけで十分だった。


エミリーは小さく身震いする。

――防いでも、無傷ではいられない。


クララの合図で平台は修復される。


「次」


名前を呼ばれると、エミリーは前に進む。

向かいにはサマー・ケスラーが風を集めていた。


頭上に光の球が現れ、強引に浮かぶ。

思った以上に重い。いつもそうだ。


渦巻く竜巻が唸りを上げる。


最初の一撃は空気の流れに弾かれ、息を奪われる。

歯を食いしばり、角度を修正。二撃目は良く、三撃目は痛い。


腕や胸、集中の根元からエネルギーが吸い取られる感覚。


――もう、持たない…


サマーも同じだった。

風は応えていたが、姿勢は崩れ、足は平台で滑る。


彼女が倒れ、静寂が一瞬支配する。


エミリーは光の球を下ろし、片膝をつく。

勝った。


しかし、あと数秒続いていたら――立てたかどうか分からなかった。


次の対戦は、初めから異なっていた。


ナオミ・シュナイダーとアブデル・ブラウンはためらわず、攻撃を仕掛けた。


炎が平台を包み込み、熱で数人の生徒が本能的に後退する。

前進する炎同士がぶつかり、 incandescent な柱となって空気を歪ませた。


ナオミは耐えた。軽い火傷、荒い呼吸、それでも立ち続ける。


アブデルは耐えられなかった。


倒れた瞬間も、炎がその体を包む。


クララが即座に介入。


静寂が支配する。


誰も拍手しない。


エミリーはアブデルが無意識のまま運ばれるのを見て、胃の奥に締め付けるような感覚を覚える。

――ここで後戻りできなかったら危険だった。


「先生!」ナオミが息を切らして叫ぶ。「騎士たちに立ち向かい、骨まで焼き尽くす準備ができました!」


クララは厳しくも冷たくもなく、静かに見つめる。


「その呪文には十秒から十五秒かかる。訓練された騎士は五秒であなたを倒せる」


ナオミは口を開け、そして閉じた。


「そんなに差が…?」

小声でつぶやく。


「そう。だから、力だけに頼れば死ぬ。ここでは、どれだけ強力な呪文を放ったかではなく、誰が立ち続けられるかが重要だ」


エミリーは唾を飲み込む。


――初めて、騎士と対峙するという考えが、試験ではなく、脅威として響いた。


その瞬間、次の対戦のアナウンスが学院中に鳴り響いた。


騎士 VS 魔法使い。


ざわめきが戻る。

1Aの生徒たちは闘技場へと向かう。

――誰も声には出さないが、これから目にするのは「レッスン」ではなく、「警告」だと知っていた。

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