「訓練場――ルシアンとジャン」
訓練場に到着すると、オースティンはすでに彼らを待っていた。
七人の生徒と、見慣れた顔であるジャンを注意深く見渡す。
「おはよう、若者たち。私はオースティン・エヴァンス。君たちの戦闘教官だ」
落ち着きと威厳のある声で語り始める。
「クララ先生からどこまで説明を受けたか分からないので、改めて話そう。毎朝、ここで実戦訓練を行う。教室へ行く必要はない。直接、訓練場に来なさい。最終週には対面式のランキングトーナメントを実施する。全員が互いに戦うことになる――ルシアン、お前も例外ではない。すでに学院の総合ランキング入りしているが、疑問があれば遠慮なく聞くように」
クラスで自分が最強だと信じて疑わないコンウィック・ブリッグスが、我慢できずに口を開いた。
「今すぐ、ランキング戦を始められませんか?」
「今は無理だが、来週から組むことはできる」
オースティンは冷静に答える。
「一日一戦だ。負傷に備えて治癒魔導師と回復ポーションも用意する」
「一週間も待つんですか?」
コンウィックは苛立ちを隠せない。
「そうだ。それと……ジャン嬢、君はなぜここに?」
「おはようございます、先生。ルシアンと少し剣の稽古を。彼とは同じ師に学んでいますので」
「なるほど。では、いい機会だな」
その隙にコンウィックはカスパーに声をかけ、模擬戦を申し込んだ。
カスパーは即座に了承する。
――もし圧勝できれば、次はルシアンに挑むつもりだった。
戦闘が始まる。
コンウィックは地面を強く踏み鳴らし、四級魔法を発動。
大地が震え、足場を崩そうとする。
次の瞬間、土属性マナを纏った剣を手に、一直線に突っ込んだ。
だがカスパーは微動だにしない。
二メートル近く跳躍し、重力と魔力を乗せた一撃を振り下ろす。
――直撃。
コンウィックは吹き飛ばされ、着地と同時に左脚を骨折した。
「ご、ごめん……やりすぎたかも」
「くそっ……! 体を土マナで硬化してたはずなのに……!」
「はは、悪い。姉と戦うのに慣れててさ」
オースティンが近づき、六級回復ポーションを手渡す。
「四日連続で飲めば完治する。一日一本以上は飲むな。マナ中毒になる」
「ありがとうございます……肝に銘じます」
その後、ルシアンとジャンが訓練台に上がった。
「全力で来なさい、ルシアン様」
ジャンは鋭い眼差しで言う。
「お手柔らかにお願いしますよ、か弱い貴族なので」
ジャンが先に動いた。
剣が風を切り、鋭く迫る。
ルシアンは即座に受け止めたが、次の突きがほぼ胴を捉えかける。
刃が肩をかすめ、冷たい感覚が走る。
反撃に転じたルシアンは横薙ぎを放つが、ジャンは剣で受け流し、体重を乗せて押し返す。
バランスを崩しかけるルシアン。
しかし、素早く回転し、再び距離を詰めた。
剣と剣が激しくぶつかり、金属音が響く。
互いに一歩下がり、間合いを測る。
ルシアンは姿勢を観察し、右脇を狙った。
だがジャンは猫のように身をひねり、流れる動作でルシアンの左脚へ斬撃を放つ。
素早く防御――反撃しようとするが、完全に抑え込まれる。
「なかなかやるわね」
ジャンはわずかに距離を取る。
「叔父が鍛えただけはある。でも、私に並ぶにはまだ足りない」
「お褒めにあずかり光栄です」
ルシアンは軽く息を整えながら言う。
「そろそろ終わらせましょう。他のみんなを待たせてます」
ジャンは微笑み、全力の踏み込み。
速度と力を一体化させた連撃が襲いかかる。
ルシアンは後退しながら、すべてを正確に受け止める。
そして――
ジャンが剣を弾き、喉元に刃を当てた。
傷一つつけず、完全な制圧。
「覚えておいて」
ジャンは真剣な声で言う。
「攻撃は体だけじゃない。姿勢を崩し、主導権を奪うのも剣術よ」
「勉強になります」
ルシアンは苦笑しながら尋ねた。
「学院を卒業したら、どうするつもりですか?」
「まだ決めてないわ」
汗を拭いながら答える。
「いくつかの家から声はかかってる。でも……もし特別な誰かに誘われたら、考えてもいいかも」
ウィンク一つ。
ルシアンは素直に笑い、目に確かな光を宿す。
「ぜひ、君の剣を味方にしたい。心強い仲間になってくれそうだ」
ジャンは小さく笑い、誇らしげにうなずいた。
――こうして訓練場には、新たな信頼と火花が静かに芽生えていった。




