表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

217/266

『堕ちた神託の怒り』

砕けた光の玉座に座しながら、永遠の神託者ヴェリリオンは、自らの存在が指の間から零れ落ちていくのを感じていた。

幾千億の時を越え、あらゆる生きとし生けるものの運命を見つめてきた彼にとって――

今、この瞬間だけが例外だった。


未来が、見えない。


それは壁だった。

闇で塗り潰された、越えられぬ壁。


彼の賜物――誇りであり、枷でもあったその力は、完全に沈黙していた。


無限の鏡のように澄み切った古き双眸が、天界の虚無に答えを求める。

だが返ってきたのは、ただの沈黙。

そしてその沈黙の中で、神にとって未知の感情が芽生える。


――恐怖。


「……誰だ。神託者に刃向かう者は」


その声は現実の層を打ち砕き、雲なき雷のように諸界へと轟いた。


だが、いかなる幻視も応えない。

真実は、下界にあった。


彼の本質に亀裂が走る。

それは時に蝕まれたのではない。

忘却に喰われていたのだ。


彼を支えてきた信仰――

人が信じ、畏れ、祈ることで生まれる力が、風に散る煙のように消えていく。


神は老いで死なない。

忘れられたときに死ぬ。


ヴェリリオンは感じた。

力が一滴ずつ、血のように失われていくのを。


もし地上へ降りれば、残されたすべてを失う。

それが《法》だった。


――「大地を踏む者は、神であることを失う」


人の世界に降りた神は、ただの肉体。

有限で、脆く、殺され得る存在。


それでも――

この異常は、排除せねばならない。


神託者は次元の帳を引き裂き、捕食者の眼で人類を見渡した。

影を、血脈を、魂を嗅ぎ分け――

そして、見つける。


ルシアン・ダグラス。


定命の公爵。

運命の書に名を持たぬ存在。

それでも未来にしがみつく、消されることを拒む誤差。


ヴェリリオンは天より黒き予言を放った。

破滅の兆し。

神の告発。

彼を孤立へと追い込む断罪の言葉。


神殿はそれを復唱し、

貴族たちは囁き、

高位司祭たちは災厄を宣告した。


砕けた水晶のように力を失い、永遠そのものが軋む中で、ヴェリリオンは悟る。


――降りねばならない。


神の瞳に宿ったのは、

本来、神が知るはずのない恐怖に染まった怒り。


神は異常を、自らの手で裁く。


だが――

待ち構える者がいた。


堕ちた神、ケリス。

その暗く古い眼は、神託者よりも先に、この未来を見ていた。


罠はすでに完成している。

現実と神域の狭間で。


ヴェリリオンの降臨は、狩りではない。

判決となる。


地上で――

彼を裁くと定められた男は、まだ知らない。


神が、すでにその名を口にしたことを。


ルシアンがカルパティアの都へ足を踏み入れる頃、

虚偽と中傷は、毒を帯びた影のように背後から広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
"読んでいただきありがとうございます!コロンビア人ですが、日本のアニメや小説が大好きで頑張って書いています。翻訳ツールを使っての投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。"
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ