待ち伏せ
リチャードは素早く敵を評価し、背筋に寒気が走った。目の前には圧倒的な部隊が展開している。リーダーは地属性マギスター・デルタで、その存在感だけで周囲に畏怖を抱かせた。隣には火属性マギスター、風を操るロード・ガンマ二名、影を支配するロード・ベータ一名。さらに六名のロード剣士と四名のロード・ベータ魔導士が後方で、容赦なく攻撃する準備を整えている。
これほどの敵を前に、リチャードの立場は決して有利ではなかった。彼の側には氷属性ロード・デルタのエドワード、風属性ロード・ガンマ二名、ロード・アルファ三名、水と風の魔法に特化したロード・ベータ魔導士三名。そして中心にはアンドリュー王子――レギオネア・デルタ、戦闘力は低いが、極めて純粋なマナを持つ者――が控えていた。
数は王家側に有利ではない。リチャードは知っていた。一秒たりとも無駄にできない。生き延びるためには、一つ一つの動作を正確に計算するしかない。
その時、霧の中から一つの影が浮かび上がる。その黒い存在は、周囲の光を飲み込むかのようだった。
「名乗る必要はない」地属性マギスター・デルタのリーダーが言う。足元の大地が微かに震える。「王子を差し出せば、あとは生かしてやる」
リチャードは歯を食いしばる。
「俺たちを倒さなければ、王子には触れさせない」
男は冷酷かつ穏やかに微笑む。
「それなら、片付けよう」
張りつめた緊張が、限界のロープのように切れた。
王子の護衛たちは円形の防御陣を形成する。前に盾、後ろに魔法使い、武器はすべて構えられた。リチャードは小型の通信装置を作動させ、青い閃光を放つ――王家の部隊への救援信号だ。
空気には、金属、汗、圧縮されたマナの匂いが漂う。
「攻撃せよ!」リーダーが命じる。
地属性マギスター・デルタは前方に飛び出し、破壊的な速度で突進する。剣士たちは防御陣に衝突し、その力は下位の者なら一撃で破壊されたであろう。アンドリュー側の魔法陣は数秒で裂け、リーダーの強化された大地の力に押し潰される。
防御のラインが揺らぐ。
リチャードは敵マギスターに斬りかかる。剣が激突し、木々が軋む轟音が森に響く。右翼のエドワードは、二名の風属性ロード・ガンマの足を氷で固定し、速度を奪う。
しかし、敵も準備済みだった。王子の防御陣の構造を知っている。どこを突けばよいか、全て把握している。
敵の魔導士が闇の呪文を放ち、反射神経と意志を鈍らせる。二名の剣士が同時に陣を崩そうと動く。アンドリューたちの陣形は徐々に崩れ始めた。
混乱の中、王子は息を切らしていた。放たれる雷の攻撃は、彼の体力を限界まで追い詰める。しかし、彼は立ち止まらない。
激戦の二分間で、地面は血と魔法のクレーターで埋め尽くされた。王子側の五名のロード剣士が倒れ、敵の三名も死傷している。
防御の壁は、ついに轟音と共に崩壊し、青い火花と共に砕け散った。
疲労で震える二名の魔導士は、最後の力を振り絞り、圧縮した水の魔法を連携させ、敵二名を木に叩きつける。王子は湿った空気を利用し、叫び声と共に雷を放ち、三番目の敵を焼き尽くした。
エドワードは膝をつき、息を切らして崩れ落ちる寸前だった。
敵リーダーは手を上げ、攻撃を止める。彼もまた、リスクを見極めていた。静かで確信に満ちた足取りでリチャードに近づく。
「降伏しろ」ほとんど優しい声で言う。「誰も来ない。今日、王子を殺すために全て計算済みだ。もし身を引けば、お前の命は尊重しよう」
リチャードは正直な怒りを胸に、汗と血で汚れた顔を向ける。
「主を見捨てるなど、騎士ではない。俺の名に何の価値がある」
リーダーは嘲笑と歪んだ敬意を混ぜて彼を見つめる。
「では、速やかに死を与えよう」
リチャードは前に進み、王子に届く前にリーダーを止める。エドワードは残り少ない力で二番目のマギスターと対峙する。
剣と剣の間、リチャードは王子に叫ぶことができた。
「お前の属性を使え! 優位を活かせ!」
説明は不要だった。アンドリューはすぐ理解した。デルタ属性は控えめながら、消費マナが少ない。それだけで、生き延びるか死ぬかが決まる。
敵リーダーは地属性デルタで恐ろしい力を持ち、肉体を強化し、ほぼ無敵となる。
言葉は交わさず、手を上げる。
「潰せ!」
炎と氷の壁が衝突し、風が樹を紙のように裂く。リチャードは回転する水の壁を作り、魔剣の雨を防ぐ。エドワードは間合いゼロで氷の槍を投げ、三名を阻むが、呼吸は乱れ始めた。
「くそ…来ることは読まれていたか」リチャードは呟く。敵は防御陣を分断し、陣形を崩す作戦だと理解する。
戦いは絶望的になった。騎士一人が二名の敵に立ち向かう。魔導士たちは複合魔法で防御壁を補強するが、リーダーは一撃で亀裂を入れる。リチャードは理解した――この壁が崩れれば、王子は死ぬ。
二分間の地獄のような戦闘で、森は火と雷の閃光に照らされる。王子側の五名の騎士が倒れ、三名の敵が討たれた。
そしてついに、敵の魔導士が防御陣を破ることに成功する。壁が崩れた瞬間、疲弊した二名の王子側魔導士は残りのマナを全て集中させ、水の連携魔法で複数の敵を空中に吹き飛ばす。
王子は手を上げる。
「制裁の雷!」
湿った大地を増幅させた雷が落ち、敵ロード一名を叩き伏せる。衝撃で周囲が揺れる。
状況は絶望的だった。王子アンドリューは、エドワードが膝をつき、胸に炎の槍が突き刺さったのを見て、この日が自分の最後かもしれないと悟った。リチャードも、立つのがやっとだった。
その瞬間、暗殺者が王子に迫り、最後の一撃を放とうと剣を構える――




