「エルドリア:咆哮の夜 A-Ω」
星の帳の下、街は眠っていた――しかし、何かがそれを引き裂いた。
夜の静寂を切り裂く悲鳴。あまりにも残酷で、魔法の警報が反応するには遅すぎた。
警備兵たちはかろうじて叫んだ。
――「襲撃だ!襲撃だ!」
混沌はすでに通りを駆け巡っていた。
城壁の上、魔法で灯された松明は神経質に揺れ、濃霧に光を奪われていた。ちらりと見える光の先には、悪夢の断片が垣間見える――巨大な猫科の獣、刃のように逆立つ毛皮、赤く燃える瞳、一歩ごとに石を砕く爪。
その咆哮は耳に届くだけでなく、骨まで振動させた。
中央塔から、エルドリアの知事――“ジャッカル”と呼ばれるマーカス・ヴァレンタイン――が無表情で見下ろす。いつも無敵だと思っていた城壁が、獣たちの襲撃でまるで粘土のように割れ始める。呼吸は浅く、拳は震えた。
――「神々よ…」 ――声はかすかな糸のようにかすれる。
「まさか、こんなことが…」
獣の群れは生きた嵐のように街へ降り注ぐ。牙と爪の竜巻が触れるものすべてを貪り食う。
休戦はない。咆哮が城壁を震わせ、守ろうとする者たちの魂を揺さぶる。巨大な猫たちは第一線に飛びかかり、刃のような爪で盾を切り裂き、金属の衝撃、木の破片、骨の軋む音と人間の悲鳴が入り混じる。
兵士たちは数秒で崩れ去った。何百もの隊列は、押し合いへし合いの混乱と化し、人間の壁は逃げ惑う足で踏みにじられた。
城壁の上から、魔法で灯された松明が血の水たまりに転がり落ちる。火花が散り、地面に散らばった木材や樽に燃え広がった。通りは瞬く間に炎に包まれ、煙と霧が赤と灰色に染まり、影はすべて死の予兆に変わった。
猫たちはエルドリアを王のように支配する。
一匹は不可能な跳躍で塔に登り、一撃で城壁の半分を破壊した。別の猫は逃げる兵士を捕まえ、驚異的な力で持ち上げ、暗闇に布切れのように投げ捨てる。そして動きを止め、胸を上下させながら次の獲物を選ぶかのように周囲を見渡した。
マーカス・ヴァレンタインは机を叩き、羽根ペン、封印、巻物が宙に舞った。
――「魔法使い!少数でも構わん、あの獣を抑えろ!」 ――絶望が声を引き裂く。
魔法使いたちは命令に従いながらもよろめき、恐怖からほとばしる光を放つ。制御されない生の魔法が空中で暴れ、獣たちは嘲笑うかのように身をひねり、攻撃をかわす。命中した光も、獣のマナで強化された皮膚に弾かれ、雨粒が熱い石に跳ね返るように消えた。
反撃は静かに、予告なく、避けられぬ裁きとして現れる。
爪が胸を突き抜け、肋骨を枝のように折り、鎧は割れ、肉とともに破裂する。剣は手とともに落ち、喉は一撃で切られ、兵士たちは何が起こったか理解する前に倒れた。
戦闘はなかった。
あったのは、虐殺だけ。
そして広場は暗闇に覆われた。
煙や炎ではない、夜よりも濃い何かが。
瓦礫の中から、群れのリーダー――A-Ω――が現れる。
その毛皮は光を反射せず、まるで光そのものを吸い込み、絶対の沈黙の中で飲み込むかのようだった。動くたびに影を残し、その影は生きているかのように揺れた。深紅の瞳は鍛冶場の炭火のように燃え、知性、古さ、そして耐え忍ぶ怒りを帯びていた。
その存在だけで空気が張り詰める。
歩くたびに地面が軋み、石片が震え、世界すら支えるのを拒むかのようだった。咆哮は轟音ではなく、物理的な衝撃波として守備側の胸を打ち、息を奪った。兵士の何人かは膝をつき、恐怖ではなく、体が立つことを拒否したのだ。
A-Ωは彼らを獲物ではなく、取るに足らぬ障害として見つめる。
小型の猫たちが主門の防衛隊を包囲する。爪は盾や鎧を濡れた革のように貫き、牙は喉や胸当てを容易く裂く。槍も剣も斧も、無力な玩具のように弾かれる。数秒で城壁は赤く染まり、血が石畳を流れ、柱に跳ね、必死に戦う者たちの足元に厚い水たまりを作った。
兵士たちの悲鳴は獣の咆哮、燃え広がる炎と混ざり、街は虐殺の重みにうめく。
塔の上からマーカス・ヴァレンタインは、血の気の引いた顔と固い顎で見つめる。何十年もエルドリアを守り、戦争や包囲、怪物を見てきたが、これは比べるものがない。命令を叫ぼうとするが、驚きが兵士の従順を溶かしていた。熟練の戦士ですら疑念を抱き、不可能な捕食者と戦っていることを受け入れられない。
再び轟音が城壁を揺らす。影から猫が飛び出し、防衛隊に鉄球のように衝突する。衝撃で地面が爆ぜ、骨は枝のように折れ、盾は城壁に突き刺さる。
さらに別の獣が市場の門を突き破り、施錠が飛び散る。中の油樽や松明は転がり、地面に触れた瞬間に炎が燃え広がる。あっという間に周囲の家屋は巨大な松明のように燃え、悪夢を残酷な光で照らした。
炎の光が霧に隠されていたものを明らかにする――血に染まった兵士、市民の逃走、煙の中で動く猫たちの影は、地獄から抜け出た怪物のようだった。
街は襲撃されているだけではない。
――食い尽くされていたのだ。
攻撃は徹底的で、エルドリアは牙と炎に呑まれた。
そのとき、別の光が闇を裂いた。
遠くから、威厳に満ちた光が現れ、猫たちは戸惑って立ち止まる。虐殺の咆哮は弱まり、夜は息を潜めた。
空から三つの存在が降りる。そのオーラは巨大で、周囲の空気を歪め、世界そのものが迎え入れるかのようだった。雷の蹄を持つ馬も現れ、雷鳴の上を歩くかのように進む。踏むたびに石畳に火花が散り、倒れた死体、崩れた城壁、血の海を照らす。
一瞬、猫たちは後退した。耳を伏せ、体を強張らせる。恐怖ではなく、認識。簡単な獲物ではなかった――
今、違う相手と向き合う時だった。
打ち砕かれ疲弊した人間の防衛者たちは、血流の中に希望の鼓動を取り戻す。わずかに剣や杖を握る者たちが立ち上がり、長い窒息から息を吸い込むように呼吸した。
その時、マーカス・ヴァレンタインが塔から降りる。
石畳を踏む足音は威厳に満ち、マントは煙と灰、炎の間で鷹の翼のように広がる。もはや計算高い知事でも、恐れる政治家でもない。かつてエルドリアを築いた盾を握った戦士がそこにいた。
剣を抜く。
金属が抑えた雷のように鳴る。
――「列を作れ!下がるな!魔法と盾で防げ!」
その声は混沌を貫く。
兵士たちは躊躇せず応じる。杖が上がり、ルーンが疲れた光で燃え、盾は衝突し、血で濡れた生きた城壁を再構築する――不規則でも、壊れそうでも、しかし決して屈しない城壁。
煙と死体、雷馬の火花の中で、人類の最後の抵抗は立ち上がった。
残されたのは、壊れた人間、消耗した魔法…それでも、立ち上がった。
戦争は終わっていない。
ただ、局面が変わっただけだ。




