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ルシアン vs ブラーゴズ

ブラーゴズは、

母なる樹から“砕けた殻”のように姿を現した。


黒き樹液と腐敗した根で構成された存在。

その輪郭は液体の影のように揺らぎ、

一歩進むたび、地面には悪魔のマナが溜まり、

草木を喰らい尽くしていく。


彼の前で、エルフたちは後退していた。


エミリーは光の閃光で空気を切り裂き、

エリザベスは圧力に軋む防壁を展開。

ダヤナは獣のような動きで怪物を引き裂き、

サンダーは嘶きながら雷撃を放ち、

魔物の群れに電光の空白を作り出す。


だが――

ただ一人だけが、躊躇なく前へ進んだ。


ルシアン。


剣はまだ鞘の中。

呼吸は一定。

そして彼の周囲には、

意思を持つかのような“黒い燐光”が揺れていた。


ブラーゴズが嘲笑する。


「貴様のオーラは見覚えがない……

何者だ、虫けら?」


「お前を周回しすぎた奴だ」

ルシアンは足を止めずに答えた。


怪物は眉をひそめる。

意味が分からなかった。


その瞬間。


ルシアンの強化が発動する。


叫びもない。

印もない。

大げさな動作もない。


ただ、

空気がわずかに震え――

足元の大地が、

森に認められたかのように、ひび割れた。


ブラーゴズが先制攻撃。


黒い樹液の鞭が叩きつけられる。

だがそれは、

一秒前にルシアンがいた場所を穿っただけだった。


「初動、標準攻撃」

彼は小さく呟く。

「……週次イベントと同じだな」


続けて、怪物は赤いエネルギーの波を放つ。


ルシアンは、半歩だけ下がった。


爆発は彼の髪一本すら掠めず、

空を裂いて消える。


「二次パターン。前方範囲……

三回ごとに属性を切り替える」


まるで観察記録のような口調だった。


ブラーゴズが咆哮する。


「何がそんなに可笑しい!」


「シミュレーターと、

まったく同じだからだ」


その時――

怪物は初めて、

“恐怖”に近い感情を覚えた。


ブラーゴズは両腕を掲げる。

大地が揺れる。

広域殲滅級の魔法。


ルシアンは、

ほんのわずかに手を上げ、

闇を凝縮した。


衝撃波は、

命令に従うかのように、二つに裂けた。


ブラーゴズが一歩下がる。


「なぜ……

そこまで消費を抑えられる……?」


ルシアンは答えない。


ただ、前に出る。


怪物は生きた根を召喚した。

蛇の首のように地面から伸びるが――


遅い。

あまりにも、遅すぎた。


「ミスだ」

ルシアンが囁く。

「高コスト。低速度。

……最適なカウンター」


彼は剣を抜いた。


刃を満たしたのは、

腐敗ではない。


完全に制御された“純粋な闇”。


ブラーゴズが身を強張らせる。


「その光……

まさか……」


次の瞬間、

ルシアンは目の前にいた。


一太刀。


音もない。

衝突もない。


ただ、

囁きのような斬撃。


ブラーゴズは自分の胴を見下ろした。

黒い樹液が、細い糸となって地に落ちる。


傷が……塞がらない。


「……どんな闇だ?」


「お前の闇だ」

ルシアンは答える。

「ただし、正しく使っている」


ブラーゴズは必死に、

母なる樹の力で回復を試みた。


だが、周囲の腐敗が干渉し、

術式は暴走する。


消費は倍増した。


ルシアンは、静かに首を傾げる。


「それと……

俺の射程内で闇を使うたびに」


微かな脈動が、

彼の周囲を震わせる。


「……お前のマナを、少しずつ吸ってる」


ブラーゴズの顔色が変わった。


「なぜだ!?

なぜ貴様のマナが減らない!?

レベルは下のはずだ!」


ルシアンは、ほとんど分からないほどに微笑む。


「強いからだ。

……でも、お前は賢くない」


激昂したブラーゴズは、

最終奥義を放った。


戦場すべてを飲み込む、

悪魔の大爆発。


それが――

最後の過ちだった。


力を流し込んだ瞬間、

母なる樹との接続が張り詰める。


ルシアンは、

その“根の心臓”を狙った。


斬撃は、

接続を断っただけではない。


反転させた。


樹のマナが逆流する。

まるで自然そのものが、

病を吐き出そうとするかのように。


ブラーゴズは内側から燃え上がり、叫ぶ。


「やめろ!!

それを――起動するな――!!」


ルシアンは冷静だった。


「もう遅い」


内側からの爆発。


怪物は膝をつき、

自らの力に焼かれる。


マナ残量は、

数字が崩れ落ちるように急落した。


もはや脅威ではない。


ただの残滓。


ルシアンは近づき、剣を掲げる。


闇が彼の元へと収束し、

周囲の腐敗したマナをすべて啜り取った。


ブラーゴズが、震える手を伸ばす。


「……やめ……」


「じゃあな。

週ドロップ」


最後の一撃は、

あまりにも静かだった。


ブラーゴズは倒れた。


一般的な魔物のようにではない。

叫びも、爆発も、咆哮もなく。


――胸の内側で、

世界の灯が消えるように。


その身体は赤黒い煙となり、

汚染されたマナの糸へと分解され、

地に触れる前に霧散した。


死体は残らない。

血も残らない。


そこにあったのは――

つい先ほどまで悪魔がいた、

暗い空白だけだった。


ルシアンは剣を下ろす。


武器は、

まだ喰らい続けるエネルギーに震え、

彼は息を吐いてそれを鎮めた。


「……終わりだ」


ブラーゴズの消滅と同時に、

母なる樹へと繋がっていた黒い根は、

純白の光となって弾け飛んだ。

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"読んでいただきありがとうございます!コロンビア人ですが、日本のアニメや小説が大好きで頑張って書いています。翻訳ツールを使っての投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。"
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