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「根源戦争(ルーツ・ウォー)」

その咆哮は、

悪魔からではなかった。


母なる樹からだった。


何千もの骨が同時に砕け散るような、

深く、軋む音。


上層の枝が激しく震え、

黒きマナの奔流が――

まるで毒の息のように、外へと噴き出した。


エルフたちは恐怖に駆られ、後退する。


グリセラが叫んだ。


「――陣形を組め!

第一列、弓兵! 第二列、ドルイド!」


弓兵たちは弦を引き絞り、

ドルイドたちは緑の魔法で空気を浄化しようとする……

だが、悪魔のマナはその術を、

煙のように焼き尽くした。


「ダメだ!」

一人が叫ぶ。

「空気そのものが呪われている!」


ブラーゴズは、

なおも幹と融合したまま、嗤っていた。


「疲れ果てて死ぬか……

降伏するか。

結末は同じだ」


母なる樹の樹皮が裂け、

巨大な“口”のような亀裂が開く。


そこから落ちてきたのは、

歪んだ怪物、蠢く根、

そして腐敗に育てられた異形の獣たちだった。


北方戦線 ― グリセラとエルフたち


母なる樹から溢れ出る魔物の波を、

ここで食い止めなければならない。


南方戦線 ― エミリーと負傷したドルイドたち


エミリーは光の結界を維持し、

ゆっくりと空気の腐敗を浄化していた。

それがなければ、

ドルイドたちは呼吸するだけで命を落とす。


西方戦線 ― エリザベス + サンダー


エリザベスは制御された魔界障壁を展開。

サンダーは雷を纏い、

重装の魔物へと突撃する。


東方戦線 ― ダヤナ(吸血鬼)


影の中を滑るように移動し、

エルフを包囲しようとする

上位個体を静かに狩る。


中央戦線 ― ルシアン vs ブラーゴズ


最も危険な戦場。


ルシアンは、

腐敗が樹の心臓へ届く前に――

悪魔と母なる樹の“繋がり”を断たねばならない。


ブラーゴズは、

完全に幹から身を引き剥がした。


だが背中は、

巨大な血管のように脈打つ黒い根で繋がっている。


暗黒の樹液が脈動し、

直接、悪魔の心臓へと流れ込んでいた。


一度、鼓動するたび――

森全体が震える。


ルシアンが前へ出る。


その存在が、闇に沈んでいく。


濃密な影が、

彼の剣に絡みついた。


ブラーゴズは楽しげに腕を広げる。


「ほう……

泣き虫の女どもを連れ歩く、

ちっぽけなオメガか」


エミリーは拳を握りしめたが、

その場を動かなかった。

――ルシアンの命令だった。


ルシアンは、ただ一言。


「……よく喋る」


次の瞬間、

彼は踏み込んだ。


衝突が、

戦場全体を揺るがした。


北方戦線グリセラとエルフ


母なる樹の眷属たちは、

不気味なほど完璧な連携で動いていた。

まるで、

一つの意志を共有しているかのように。


六本脚、樹皮の皮膚を持つ獣が前線に突進し、

三人のエルフが宙を舞う。


グリセラは聖弓――

《最後の芽吹きの弓》を掲げた。


腐敗によって自然との絆は断たれている。

それでも、

その内にはまだ、

光る樹液が脈打っていた。


三本の矢を同時に放つ。


森の直感に導かれた矢は、

獣の関節を正確に貫いた。


怪物は倒れた。

だが、死なない。


地面から根が飛び出し、

弓兵を貫こうとする。


グリセラは跳び、転がり、

短剣でそれを断ち切りながら、

古の詠唱を囁いた。


根は痙攣し、

力を失って裂ける。


「退くな!

ここは――私たちの故郷だ!」


その声に、一瞬だけ、

森が応えた。


葉が絡み合い、魔物を押し留め、

蔓が締まり、侵入者を捕らえる。


だが、それでも前線は後退する。

腐敗の圧力は、あまりにも強かった。


グリセラは深く息を吸い、

自然との繋がりのすべてを集中させる。


彼女の矢は、

もはやただの矢ではない。


一射ごとに森の力を宿し、

魔物の動きを鈍らせ、

貴重な数秒を仲間に与える。


「……もう少しだけ、耐えて」

鋼の意志で、彼女は呟く。

「森が傷ついても……

私が息をしている限り、

この地は守る!」


南方戦線エミリー


エミリーは両手を掲げ、

暗い茂みを貫く神聖な光輪を展開した。


それは空気を浄化するだけでなく、

悪魔を弱体化させ、

母なる樹そのものを震わせ、

腐敗の進行を遅らせていた。


「エミリー! 結界が弱まっている!」

黒い魔力に押され、

ドルイドが叫ぶ。


「分かってる!

悪魔のマナが、抑えきれないほど増えてる!」

汗を流しながら、

彼女は光をさらに強めた。

「だから……もう少しだけ、耐えて!」


影から腐食の魔物が飛び出す。


エミリーは純白の障壁を張った。


触れた瞬間、

怪物は悲鳴を上げ、

光に焼かれて悶えた。


だが、その代償は重い。


女神の力が、

彼女の身体を内側から圧迫する。


エミリーは血を吐いた。

皮膚の下で、

光が暴れている。


一秒耐えるごとに、

母なる樹の汚染は遅れる。


だが、一秒ごとに――

彼女の命は削られていく。


限界だった。


それでも、

彼女は戦いを止めなかった。


西方戦線(エリザベス + サンダー)


エリザベスはサンダーに跨り、

デルタ適性の電撃マナを迸らせる。


二人は雷の渦。

彼女が魔法を編み、

サンダーが敵に電撃を叩き込む。


体内の悪魔マナが暴れ、

一つ一つの術が、

常軌を逸した負荷を伴っていた。


ルシアンとだけ繋がる契約によって、

サンダーは戦況を理解し、

命令に即座に反応する。


『耐えろ』

ルシアンの思念が届く。

『いけ、サンダー!』


エリザベスは意識を集中させ、

雷を馬体へと通す。


「……これ以上……

ここで……

黒いマナを……抑えきれない……」


サンダーは攻撃を躱し、

雷を放ち続ける。


ルシアンの指示と完全に同期しながら、

彼女を守るために。


東方戦線ダヤナ


ダヤナは影から影へ跳び、

気づかれる前に喉を裂く。


彼女の心を満たすのは、

ただ一つの標的――

ブラーゴズ。


その瞬間。


何かが、

彼女の足首を掴んだ。


生きた根。


それは彼女を引きずり、

黒い樹液が酸のように滴る

母なる樹へと引き寄せる。


逆さ吊りのまま、

ダヤナは叫んだ。


「ルシアン!!

これ――焼ける!!」


樹液が肌に触れた。


聖なる炎のように、

彼女を灼いた。


もう、

これ以上近づけない。


あまりにも純粋すぎるのか……

それとも、

あまりにも悪魔的なのか。


その皮肉が、

彼女を恐怖させた。


二年間、復讐を求め続けてきたのに――


今の彼女は、

ブラーゴズに触れることすら、

できなかった。

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"読んでいただきありがとうございます!コロンビア人ですが、日本のアニメや小説が大好きで頑張って書いています。翻訳ツールを使っての投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。"
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