死の霧
トーナメント四日目の夜明け、森は湿った危険な霧に覆われていた。ルシアン・ダグラスは静かに立ち、仲間が補給の準備をする様子を見つめていた。隣には黒い狼、ウンブラが身を低くし、暗がりの中で燃えるように光る瞳を森に向けていた。
ルシアンは彼を見て、低く囁く。言葉には微かにマナが流れ込む。
「アンドリュー王子を探せ。隠れていろ。何かあれば、合図を送れ。」
ウンブラは頭を傾げ、木々の間へ消えていった。その影は森の闇と一体化する。
ルシアンは理由を理解していた。「ゲーム」の記録――この世界での隠された指針――によれば、今日こそが王位継承者の死の日と記されている。アンドリューに同情はないが、彼の死は王国全体を巻き込む政治的混乱を引き起こす。許すわけにはいかなかった。
「アルバート、北へ向かう。森の中央あたりだ。ウンブラが道を示す。」
ルシアンは魔法の馬サンダーに跨り命じた。
アルバートは黙って頷く。ダグラス家騎士団の規律は絶対だ。
数リーグ離れた場所で、アンドリュー王子の一行は蔦に覆われた高木の間を進む。森はいつもより重く、マナは濃密に感じられた。
隊長リチャード・ボーランスは手を上げ、停止の合図を出す。
「何かおかしい…隊列を崩すな。」
騎士の一人が慎重に偵察に出るが、警告を出す前に影から魔法のカマキリが現れる。体長四メートルを超える巨大な生物で、緑色の外骨格はマナで輝き、複眼は不自然な光を放つ。瞬く間に、鎌のような前脚が超人的な力で騎士を捕らえる。悲鳴は麻痺毒で消され、カマキリは再び森に姿を消した。
「離れるな!」リチャードは剣を抜き、エドワードが氷と水の結界を展開する。
二人の魔法と騎士の連携攻撃で、一瞬カマキリの動きを止めることはできたが、完全には阻止できなかった。致命の一撃で捕らえられた騎士は消え、カマキリは群れに向かって突進する。魔法や剣の攻撃は集中力を奪い、マナも体力も徐々に減少していく。
「油断するな!」エドワードが叫ぶ。水の奔流と氷の波が前脚に打ち込まれる。生物は一瞬退いたが、すぐに反撃してきた。
数百メートル離れた茂みの中、暗い衣服をまとった三十人が戦闘を見守る。腕章にかすかに輝く帝国の紋章。
「待て」リーダーは低く命じる。「まずはあいつを倒させろ。疲れ果てたところで任務を遂行する。」
無言で頷く者たち。狙いはただ一つ――アンドリュー王子の命。
戦場では、カマキリが猛攻を続ける。三騎士が反応する前に倒れ、避けようとした者も一撃で倒れる。呪文と防御で徐々に体力とマナが削られ、息は荒く、筋肉は緊張に震える。
リチャードとエドワードは状況を判断する。戦いを長引かせれば消耗するだけだ。
「連携攻撃だ!」リチャードが叫ぶ。
二つの巨大な魔法陣が足元に現れ、重なり合う。水と氷が融合し、部分的に地面を凍らせ、カマキリを氷の牢獄に閉じ込める。一つの脚が氷で覆われ、エドワードが正確に印をつける。生物は激怒の咆哮を上げるが、動きは鈍り、空気は血の金属臭に満ちる。
アンドリューは残留の湿気を利用し、雷のマナを放つ。氷を突き抜け、怪物は二つに裂けた。最後の咆哮が森中に響き渡る。騎士と魔法使いは汗と血にまみれ、筋肉は震え、マナは限界に達していた。
「素早く回復だ。まだ終わっていない。」リチャードは息を切らしながら命じる。
勝利はした。しかし代償は明白だ。五人のロード騎士が倒れ、マナは枯渇し、負傷と疲労がピークに達している。今や彼らは脆弱で、奇襲が命取りになる。
そして、その希望は一瞬で消え去る。殺意の波が、見えない刃のように血を凍らせて襲った。
リチャードは前に出て声を張る。
「全員、構えろ! 名乗れ!」
森の影から冷たい声が響く。
「無駄だ。我々は王位継承者の命だけを狙う。」
剣の金属音が森に鳴り響く。第二の戦いが、今、始まろうとしていた。




