指導者の重さ(エル・ペソ・デル・リデラズゴ)
キャラバンはアルヴィアンに導かれ、街の大通りを進んでいった。
市民たちは希望と恐怖が入り混じった表情で道を空け、カルパシアの騎士たちは完璧な規律のもと、王女と公爵を護衛していた。
アルヴィアンの屋敷――白い石で造られ、使い古された青い旗を掲げた広大な建物――は、王女とその随行団を収容できる唯一の場所だった。
中へ入ると、使用人たちは今にも倒れそうだった。
最低限の物資で数週間を耐え抜き、難民の世話に休む間もなく働き続けていたのだ。
エリザベスは彼らに穏やかな微笑みを向けた。
ルシアンは何も言わず、ただ静かに観察していた。
アルヴィアンは深く一礼する。
「王女殿下のお部屋を、四人の英雄様のお部屋を…そして、もちろんダグラス公爵のお部屋をご用意いたします」
エリザベスはきっぱりと訂正した。
「ルシアンは、私の棟に滞在します」
アルヴィアンは瞬きをした。
英雄たちは緊張し、
エミリーは抗議しようと口を開いた。
だが、王女は一切の余地を与えなかった。
「彼は私の正式な守護者です。部屋は私の隣に。
昼も夜も、常に私のそばにいてもらいます」
カルパシアの兵士たちは静かに頭を下げた。
アルヴィアンに拒否する選択肢はなかった。
エミリーは歯を食いしばる。
―――
カルパシアの一行は、正式にアルヴィアン総督の邸宅へと入った。
馬車を降りたエリザベスは、毅然とした態度で告げる。
「アルヴィアン総督。ここを私と護衛の休息地とします。
負傷者の保護と、街の秩序維持を最優先で」
アルヴィアンは事態の大きさに戸惑いながらも頷いた。
負傷しているにもかかわらず、背筋を正したルシアン・ダグラスは、王女を玄関まで護衛した。
言葉は一切ない。
それでも、その存在だけで場は引き締まっていた。
ルシアンが一時的に離れ、警備の指示に向かった後、部屋に残ったのは二人だけだった。
空気は、剣の刃のように張り詰めていた。
最初に口を開いたのはエミリーだった。
柔らかな声――だが、毒を含んでいる。
「エリザベス……ルシアンを休ませるべきよ。
彼は疲れ切っている。あなたの都合で縛るのは不健全だわ」
王女は冷たく、感情を見せずに振り返る。
「“私の都合”?
ルシアンは物じゃない、エミリー。
彼が私のそばにいるのは、彼自身の意思よ」
エミリーは視線を逸らさない。
「忠誠心を疑ってるわけじゃない……でも、昨夜のことは――」
エリザベスは即座に返さなかった。
そして、はっきりと言う。
「彼の天幕で起きたことを話したいの?」
沈黙が落ちた。
エミリーは唾を飲み込む。
「彼のそばに立ちたいなら……
言葉では癒せない傷があることを受け入れるべきよ」
エリザベスは一歩、また一歩と近づく。
エミリーは彼女の香りを感じた。
柔らかく、強く、挑むような香り。
「面白いわね」
エリザベスは囁く。
「“癒す”立場の人ほど、触れてはいけない心があることを知るべきじゃない?」
エミリーは拳を握り締めた。
「……じゃあ、あなたはいいの?」
王女は些細な質問だとでも言うように見つめ、答える。
「私が望んだからじゃない」
声が鋼のように硬くなる。
「彼が、先に許したからよ」
エミリーは瞬き、ほんの一瞬だけ脆さを見せた。
「ルシアンは、あなたのものじゃない」
エリザベスは、ゆっくりと、圧倒的な笑みを浮かべる。
「たぶん、そうね……
でも、彼がそばにいる限り、私もここにいる。
あなたが受け入れなくても」
エミリーは一瞬視線を落とし、深く息を吸う。
「彼は、私の婚約者よ。忘れないで」
返事を待たず、彼女は背を向けて部屋を出た。
―――
エミリーが去った後、エリザベスはしばらく沈黙した。
深呼吸し、命じる。
「アルヴィアン総督を、すぐに呼んで」
数分後、総督は慌てて入室した。
「総督。
私たちと共に、八千人以上が避難してきました。
主に女性と子供です。彼らはあなたの管理下に置かれます」
「は、八千……!?」
アルヴィアンは声を上げる。
「とても食料が……我々自身でさえ限界です!」
「心配はいりません」
エリザベスは落ち着いて答えた。
「一か月分の食料はこちらで用意します。
それと、この地域で容易に育つ植物があります。
屋根の上で育ち、年中実をつける。味は良くありませんが……飢えは防げます」
―――
大広間は、もはや政庁ではなかった。
そこは、痛みの聖域だった。
即席の蝋燭が、灰色の毛布に覆われた遺体の間で揺れ、
鉄と薬草、乾いた血の匂いが漂う。
負傷者のうめきと、押し殺した嗚咽が混じり合っていた。
レオナルド・エルクハーンは、一つの遺体の前で立ち止まる。
若い司祭――十八歳にも満たないだろう。
彼の手は雷の神殿の護符を握り締め、
ポケットからは皺だらけの手紙が覗いていた。
「英雄エルクハーン様。
あなたの隣で戦います。
あなたが、私たちを救ってくれると信じています」
胸が締め付けられる。
誰かに心臓を掴まれたかのように。
「……私の軍は、ほとんど損害を出さなかった」
声が、一瞬だけ震える。
「それでも……彼らは……」
アレハンドロ・ジョーンズがゆっくり近づく。
彼の信奉者たちも、そこに横たわっていた。
煤と火傷に覆われた赤毛の少年。
死の中でも、穏やかな笑み。
――あの子だ。
戦いの後、いつも助言を求めてきた。
自分のように強くなりたいと夢見ていた。
声が砕ける。
「……俺を信じてたんだ……
俺が、守れると……」
重い沈黙。
カラ・ボウルランスが近づく。
いつもの挑発的な態度はない。
彼女の目も赤かった――泣いたことを、決して認めないだろうが。
整然と並べられた三つの遺体。
彼女の部隊の戦士たち。
「……最高だった」
かすれた声で言う。
「私が持っていた中で……一番……」
口元を押さえる。
罪悪感が、溢れ出しそうだった。
「規律はあった……
一番組織だった部隊だった……
それで何になる!?
三割が死んだ!
私を信じた者が、真っ先に死ぬ……
それで、私は何の指導者なの……!」
アレハンドロは拳を握り、
レオナルドは唾を飲み、
カラは震えた。
少し離れた場所で、エミリーは腕を失った子供の血を拭いていた。
手は確かだ。
だが、涙は止まらない。
「……彼らは……」
呟きながら。
「私たちのために祈ってた……
あなたたちのために……私のために……
英雄が救ってくれるって……」
近くの兵士が泣き崩れる。
大人の男が、子供のように。
「……あいつは……俺を兄みたいに慕ってた……
英雄がいる限り、神々が共にある限り……
怖くないって……」
レオナルドは強く目を閉じた。
ほんの一瞬――
叫びたかった。
壊したかった。
世界そのものを、叩き潰したかった。
夜が訪れ、エリザベスは邸宅の職員に最後の指示を出し終えると、自室へ戻った。
ルシアンは沈黙のまま後を追い、二人の背後で扉を閉めた。
王女は部屋に入るとわずか二歩で、その日の重みが押し寄せた。
壁に凭れ、頭を下げ、深く息を吸い込む。
「……今日は、あの時、危なかった」
かすれた微笑を浮かべながら呟く。
「それに……あなた。もう私のために自分を危険にさらさないで」
ルシアンは、彼女を圧倒するその危険な静けさで見つめる。
「それが俺の役目だ」
低く、冷静に答えた。
だがエリザベスは首を横に振り、彼に歩み寄る。
「違う」
両手で彼の顔を包み込む。怒りと安堵が混じったまなざし。
「あなたは私の護衛じゃない。私の人よ」
彼は、まだ傷があると警告しようと口を開いた。
しかし、彼女はそれを許さなかった。
柔らかく彼をベッドに導き、彼女自身もその上に座る。
死の恐怖を目の当たりにした者の、時間を無駄にしない切迫した行動だった。
唇は無遠慮に、許可もなく、彼の唇を求めた。
「エリザベス……」
小さく、囁く。
「黙って」
彼女は首筋に唇を這わせながら呟く。
「もう二度と、私の前で死にかけたなんて思わせないで」
ルシアンは、その瞬間、初めて今日一日の戦いを忘れ、
彼女に、
その熱、
そして彼女が抱きしめる強さに身を委ねた。
崩れかけた世界の中で唯一、現実のように感じるもの――それが彼女だった。
二人の体は、長く抑えられていた必要性に応え、
部屋は荒い呼吸、抑えた吐息、ベッドが壁に触れる柔らかな音に包まれた。
ここに戦争はない。
神聖な儀式も、怪物も、神々の計画もない。
あるのは二人だけ。
生きている。
まだ、生きている。




