ヴァレンドール包囲戦
かつて黄金の平原に囲まれ、栄華を誇ったヴァレンドールの街は、今や息も絶え絶えだった。深い森に棲むはずの怪物たちが、不可解な現象に押されるように、最も臆病な生き物さえも凶暴化させながら、暗い波のように迫っていた。夜ごとに城壁は轟音で震え、作物は失われ、飢饉は命をむさぼる影となった。
総督アルヴィアン・ソーン、レベル85は、疲れ果てた目とこけた顔で城壁の上から街を見下ろしていた。食料の備蓄は数週間前から底をついていた。狩人を派遣することは、ほとんど自殺行為だった…それでも彼は送った。そうでなければ、街はとっくに陥落していただろう。
帝国に救援を求めた。
だが、届かないことは分かっていた。
それでも、毎朝、帝国の騎士団が来ていないかと空を見上げ、
毎晩、肩を落とす日々が続いた。
そしてある日、空が轟いた。
最初は遠くで響く雷鳴のようだった。
次に、怪物たちの墓場のような静寂。
そして一瞬にして光が炸裂した。
城壁の向こう、怪物の群れを切り裂く炎の筋。範囲攻撃が隕石のように降り注ぎ、群れを一掃する。何週間も無尽蔵に思えた獣たちが、次々と後退し、死に、消えていった。
「—軍だ!—」見張りのひとりが叫ぶ。「東から軍が来る!」
アルヴィアンはついに希望の火花を感じた。
だが、その火花は、煙の中に翻る旗を見て消えた。
帝国の旗ではなかった。
黒と銀、そして深紅。
フラクタル・ドラゴンの紋章。
カルパシア――
敵国だ。
ほんの一年も経たないうちに戦った、あの国だ。
カルパシアの軍勢は敵意を見せず、正確な軍事行動で怪物たちを排除しながら進軍した。アルヴィアンは混乱しながらも、部下たちと共に、先導者を迎えに降りた。
送った伝令が、駆け戻ってきた。
「—総督!—」息を切らして言う。「指揮官は…王女殿下、エリザベス・エルカーンです。帝国の首都へ向かう途中ですが、街の支援を決めたそうです。」
アルヴィアンはそれを処理する暇もなく、騎士たちが道を開けた。
そして、彼を見た。
あの男を。
あの影を。
アルヴィアンの膝は震え、背筋に冷たい汗が流れ、原初的な衝動――生存本能が逃げろと叫んだ。
だが、彼は動かなかった。踏みとどまった。
あの顔を思い出す。
あの名前を思い出す。
ローレンス・ダグラス。
どうして…? 彼は死んだはずだ。
皇帝が自らの手で処刑した。誰もが知っていた。誰もが見た。
いや、違うのか?
その男は落ち着いた動作で馬から降り、揺るぎない瞳――鍛えられていない鋼のように鋭い黄色の瞳がアルヴィアンを捉えた。
伝令は震えながら訂正した。
「—ロ、ローレンスでは…ありません…
デューク、ルシアン・ダグラス、兄上です。王女を護衛して来ています。」
だが、恐怖はすでに仕事を終えていた。
アルヴィアンだけが本能的に後退したわけではなかった。
カルパシア遠征で戦った古参兵たちも、終わりの見えない戦争で鍛えられた男たちも、手の震えを隠せなかった。
なぜなら、ダグラス家と戦った者たちは、苦い真実を知っているからだ。
戦うことは戦闘ではない。
ただ…死へと歩を進めるだけなのだ。
空気は張り詰め、
風さえも吹けなかった。
カルパシアの騎士たちは微動だにせず、完璧に整列し、黒い像のように待っていた。
その後ろを、王女エリザベスが馬で進む。年齢に似合わぬ冷静さで、青いマントが血と焼けた土の匂いの中でそよいでいた。
だが、誰も彼女を見ていなかった。
視線はすべて、ルシアン・ダグラス公爵に注がれていた。
アルヴィアンは唾を飲み込む。
この男は弱くない。
包囲戦も反乱も、怪物も国境戦争も経験している。
それでも、彼の存在は胸の奥に見えない手が握り込むような痛みを与えた。
ルシアンは笑わない。
眉をひそめない。
感情をまったく表さない。
それが最も恐ろしい。
――殺しすぎて、生き残った者だけが持つ存在感。
アルヴィアンは全身の意志を振り絞り、前に進む。
敬意を示すために、外交的ではない…本能的な一礼をした。
「ル、ルシアン公爵…」
声はかすれた。「ハーロンの街は…その…ご支援に感謝いたします」
ルシアンは彼を見据える。
すぐには話さない。
全く急いでいない。
「首都への道は、ここを通る」
ようやく低く、古い石のように硬い声で答えた。「街が落ちれば道は閉ざされる。助けるのは…当然だ」
カルパシア流に言えば「助ける義務はないが、助ける」という意味だった。
エリザベスは優雅に馬から降り、柔らかな笑みを浮かべながらアルヴィアンに近づく。
ルシアンの圧力を和らげるかのように、ほとんど人間らしい笑みだった。
「アルヴィアン総督」
挨拶する。「もっと早く来られず申し訳ありません。食料、医療、増援を持参しました。よろしければ中に入り、状況を確認させていただきたいのです」
アルヴィアンはすぐに頷く。
「も、もちろん。街はご自由にお使いください」
すると、口頭の命令を待つことなく、カルパシアの兵士たちが動き出した。
足取りは確かで、
静かで、
完璧だった。
巨大な歯車が動き出すようだった。
キャラバンが門をくぐると、住民たちは固まった。
恐怖ではない。
対比によるものだった。
彼らはヒーローに慣れていた:若く、輝き、衝動的で、騒々しく、傲慢な者たち。
だが、カルパシア人は違った。
兵士たちは馬を降り、荷馬車を下ろし、樽を開け、整列させ、物資を配る。
まるで千度も同じことを繰り返してきたかのように。
叫びも、混乱も、無秩序もない。
そのうちの一人が穀物袋を持ち上げる。
「子供を先に。
老人を後に。
負傷者は最後。
押す者なし」
声を荒げず命じる。
誰も押さなかった。
圧倒的で、
恐ろしく、
そして祝福だった。
住民たちは、希望と警戒を抱えながら近づき始める。
多くにとって、数週間ぶりのまともな食事だった。
森の怪物たちが作物を荒らし、倉庫は空、飢えは命を奪い始めていた。
だが、その食事は魔法ではなかった。
レベルを上げることも、力を与えることもない。
安全な食事――
低マナで作られた、誰も中毒で死なない程度の量。
飢えで命を落とさせない、最低限の命綱だった。
数か月ぶりに、空気は死の匂いだけではなくなった。
兵士たちが働く間、ルシアン公爵は一歩引いた場所に立ち、城壁を、軍勢の動きを、脱出経路を、街のあらゆる細部を観察していた。まるで見えない亀裂を探しているかのように。
通りかかる帝国の古参兵たちは、彼に命じられずとも自然と頭を下げた。
エリザベスはその張り詰めた空気に気づく。
「ルシアン…」
彼女は囁く。「人々を怖がらせてるわ」
彼は視線を水平線から外さなかった。
「死なせないようにしているだけだ」
冷静に答える。
エリザベスはため息をつく。
いつもそう。
彼の護衛は絶対的で…
だが決して優しくはない。
「この街は、ここ数か月で多くの人を失ったわ…」
彼女は続ける。「もしかしたら…」
だが、ルシアンの表情を見て言葉を止める。
彼は街を見てはいなかった。
評価していたのは…
神の脅威。
カルトの痕跡。
異常なマナの流れ。
そして、彼女を――
課せられた運命を。
彼女の身体に加えられようとしていることを。
もしカルトが儀式を完成させれば、数千を殺さねばならないことを。
エリザベスは唾を飲み込み、何も言えなかった。




