「再会」
ルシアンはソフィアを伴い、王城へと到着した。中に入って三歩も進まぬうちに、プリンセス・エリザベスの側近である侍女が、慌ただしく一礼しながら近づいてきた。
「殿下が……お一人でお話ししたいとのことです、閣下」
ソフィアは、数少ない公爵夫人だけが許されるような、優雅で大胆なウィンクを向けた。
「行ってらっしゃい」
くすっと笑い、どこか共犯者のような声音で言う。
「こういう会議は退屈だもの。それに、あなたの提案なら、もう本人以上に理解してるわ。ここは私がうまくやっておくわね」
ルシアンは諦めたように小さく息を吐き、侍女の後を追った。
案内された部屋は、執務室でも謁見の間でもなかった。
それは古い私室――広く、静まり返り、分厚いカーテンによって外の喧騒から完全に切り離された空間だった。
淡い光の中、宙に漂う埃は、まるで死んだマナの残滓のように見えた。
そして、その静寂の中心に――彼女がいた。
エリザベス。
背を向け、身じろぎもせず、まるで一つ一つの呼吸が重荷であるかのように、静かに息をしていた。
振り向いた瞬間、ルシアンの胸に衝撃が走る。
そこにいたのは、八か月前に別れた、あの快活な少女ではなかった。
「……ルシアン……」
囁き声は、壊れかけていて。
視線は、深く疲れ切っていて。
身体は、今にも折れそうなほど張りつめていた。
それでも――彼の姿を認めた途端、彼女が必死に築いてきたすべての壁は、音もなく崩れ落ちた。
一歩。
また一歩。
そして、走り出す。
彼女は縋りつくように彼に抱きつき、首元に顔を埋めた。
身体が震えている。
恐怖ではない――安堵から。
「……ずっと……」
声が詰まる。
「もう二度と、会えないんじゃないかって……」
ルシアンは強く彼女を抱きしめた。まるで世界そのものから守るかのように。
「ここにいる。エリザベス」
彼女は少しだけ身を離し、彼を見つめた。
潤んだ瞳は熱を帯び、長い間抑え込まれてきた想いが、はっきりと宿っていた。
「八か月よ……」
「触れることもできなくて……戻ってくるかどうかさえ、分からなくて……」
彼女の指が、ルシアンの頬をなぞる。
沈黙が、重く、濃く、逃れようもなく広がる。
エリザベスは背伸びをして、彼の唇に口づけた。
許しを求めない。
穏やかさも、理性もない。
それは再会のための口づけ。
渇望のための口づけ。
生き延びるための口づけだった。
ルシアンも同じ熱で応えた。
積み重なった月日、戦い、空虚な夜――そのすべてが、一気に二人を包み込む。
エリザベスの手は震えながら、さらに強く彼を抱きしめる。
「……どれだけ……会いたかったか、分からないでしょう……」
そして、もう一度。
さらに深く。
何度も、何度も。
呼吸が混ざり合い、身体は自然と引き寄せられる。
抑え込まれていた緊張が、嵐のように弾けた。
抱擁と口づけの後、二人の距離は、衣服さえ意味を失うほど近くなっていた。
言葉のないまま想いを交わし、やがて力尽きたように並んで横たわり、同じ息遣いを分かち合う。
しばらくして、休息の中で、静かに言葉を交わし始めた。
「……こんな結末になるとは思わなかったな」
ルシアンが、疲れた笑みを浮かべて呟く。
エリザベスは、柔らかく笑った。
「私は思ってたわ。……まあ、こんなに早いとは思わなかったけど」
「でもね……こんなふうに自分をさらけ出せるのは、あなただけだって、ずっと分かってた」
ルシアンは彼女を腕の中に抱き寄せ、くすぐるように力を込める。
「唯一、ってことか? 本当に?」
「ええ、そうよ」
肩で軽く押し返しながら言う。
「あなたがどれだけ面倒でもね」
「それでも一緒にいる……」
「ちっ。私の悪い選択を思い出させないで」
二人は笑い合った。
温かく、柔らかな空気は、まるで外の世界など忘れてしまったかのようだった。
やがて彼女は、彼の心を射抜くような真剣な眼差しを向ける。
「ねえ……私があなたを好きになったの、いつだと思う?」
ルシアンは瞬きをする。
彼女は、答えを待たずに続けた。
「初めて、私の前で頭を下げなかったときよ」
「他の人は皆そうだった……皆……」
声が、震える囁きに変わる。
「でも、あなただけは違った」
「……」
「母はよく言ってたわ。ダグラス家はエルクハン家と同じだって」
「王女が見下ろすことのできない、唯一の存在だって」
「……だから、成長してからずっと、あなたにもそう見てほしかった」
指をそっと開き、彼の指と絡める。
「ルシアン……私、何度あなたと一緒に公国へ逃げようと思ったか、分かる?」
「エリザベス……」
彼女は額を彼の額に寄せた。
その一瞬、世界は消えた。
王国も、責務も、運命もなかった。
ただ二人だけが、同じ鼓動で息をしていた。
――数時間後。
再会の余韻が、なお胸の奥で脈打っていた。




