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砕けた公爵領

蹄の音、鋼の衝突、魔力の奔流――

それらが重なり合い、

これから始まろうとする戦争の最初の鼓動のように響いていた。


軍勢は、

完璧な一本の矢のようにカーター領へと進軍していた。


だが――

その矢は、やがて歪み始める。


公爵領内にいる最初の数日は、実に順調だった。


移動中の魔物は発見され、

分類され、

そして外科手術のような正確さで排除されていく。


連携された分隊。

担当ルートを持つ魔術師。

完全に制御された魔獣たち。


まるで――

戦場そのものが管理されているかのような領域。


だが、公爵領の境界線を越えた瞬間――


……世界の秩序は、音を立てて崩れた。


空気は重く、

マナは荒れ狂う海のように渦巻き、

森の奥では、無数の光る眼が闇の中で瞬いていた。


最初の遭遇は、

公爵領を出て二日目に起こった。


――巨大な草食系魔物。


「攻撃するな!」


ルシアンが手を上げ、即座に命じた。


三メートルを超える鹿に似た魔物たちが、

石と苔に覆われた角を持ち、平原で草を食んでいる。


瞳は淡い緑色に輝いていた。

――魔力を帯びた草食獣。


軍勢は無言のまま進軍を続けた。


巨獣たちは、

ただ首を上げて一瞥しただけで、

再び草を食み始める。


だが――

その静寂は、長くは続かなかった。


咆哮が、夕暮れを引き裂いた。


次に一つ。

さらに三つ。


森の奥から現れたのは――

捕食者の群れ。


骨が露出した狼。

蒼い炎を纏う大型猫科。

飢え、狂気を宿した肉食魔物たち。


草食獣たちは、一斉に混乱した。


平原は、

瞬時に地獄へと変わる。


暴走する巨体の群れが、

一直線にキャラバンへと突進してきた。


「――盾隊!!

前線を固めろ!!」


アルベルトの怒号が響く。


サンダーが嘶いた。

全身に雷を纏い。


アンバーは、

生きた影のように前へ躍り出る。


衝突は――凄絶だった。


数十体の巨大草食獣が、

ダグラス軍の盾の壁へと叩きつけられる。


だが、

軍は――一歩も退かない。


魔法武器が腱を断ち、

サンダーの雷撃が魔獣を丸ごと薙ぎ倒す。


アデラと白虎が地面を凍結させ、

肉食獣たちの動きを完全に止めた。


十分も経たぬうちに――


混沌は、

沈黙へと変わった。

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