『マナの悪魔たち』
虐殺は、なおも続いていた。
炎と血、そして溢れ出すマナに全身を染めたダグラス家の戦士たちは、一歩も退かずに前へ進み続ける。
それは勝利を信じていたからではない。
生き延びたいと願っていたからでもなかった。
彼らは、主であるローレンスが倒れた瞬間に――
すでに自らの運命を受け入れていたのだ。
主と共に生きるか……主と共に死ぬか。
それがダグラス公国に伝わる、古き誓約。
魔法よりも、政治よりも、命そのものよりも重い誓い。
そしてその日、誰一人として、それを破ろうとは思わなかった。
ダグラスの戦士たちは次々と、数十、数百に及ぶ帝国兵へと斬りかかっていく。
脚を失い、膝立ちのまま戦い続ける者。
血で視界を失い、ただ本能だけで剣を振るう者。
鉄の規律で鍛え上げられた帝国兵でさえ、原始的な恐怖を覚え始めていた。
「な……内臓が出たまま戦ってるぞ……!」
「そいつ、もう死んでるはずだろ!」
「退け! 退け、くそったれ!」
――無意味だった。
ダグラスは退かない。
交渉もしない。
慈悲も乞わない。
栄光など求めていない。
彼らが求めていたのは、ただ一つ。
主と共に死ぬこと。
彼らにとって公国とは制度ではなく、家族だった。
ローレンスは公爵ではない。
指導者であり、血であり、生きる理由そのものだった。
恐怖に駆られた帝国の隊長が叫ぶ。
「やめろ! やめろ、もう死んでいる!
あいつらは……死体みたいに戦っている!」
事実、多くはすでに人の域を超えていた。
彼らを動かしていたのは、残滓のマナと、最後に燃え上がった感情――
絶対の忠誠心だけだった。
戦場は、生きた墓場と化す。
ダグラスの屍は、一人、また一人と倒れていく……
だがその一つ一つに、十人分の帝国兵の死が伴っていた。
それほどの惨劇の中でも――
退いたダグラスは一人もいなかった。
助けを求めた者もいなかった。
逃げようとした者もいなかった。
やがて最後の一人が倒れ、
剣がわずかにマナの残光を放ったまま静止したとき、
戦場は沈黙に包まれた。
重く、
ほとんど神聖とも言える沈黙。
肩で息をする帝国兵たちは、それを信じられずに立ち尽くす。
一人の将軍が、かすれた声で呟いた。
「……誰も戻らなかった……
一人も……」
震える別の将校が続ける。
「こんなの……見たことがない……
あの男たち……
あの悪魔たちは……
自ら死を選んだんだ……」
その真実は、影のように帝国軍全体へと広がっていった。
ダグラスは敗北していなかった。
成し遂げたのだ。
彼らは生き様そのままに死んだ。
死に至っても主を見捨てることのない、
不屈の意志の壁として。
その日、ダグラス公国は戦場から姿を消した……。
だが帝国は、決して忘れ得ぬ真理を悟る。
――名を守るため、すべてが死ぬ覚悟のある“家”は、
決して征服できない。
戦の最後の轟音は、ほとんど不自然な静寂へと溶けていった。
そしてようやく、帝国兵たちは皇帝へと視線を向ける。
ローレンス・ダグラスとの決闘は、兵の目には一瞬の出来事だった。
だが、マナを感じ取れる者たちにとって――
それは、紛れもない怪物的な戦いだった。




