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第9話

 荷馬車の周りでは3人の護衛?がウルフ系の魔物と戦っていた。

 魔物の数は見えてるだけで30匹以上だ。俺は魔物が密集している場所目掛けて雷魔法を放った。


 バリバリバリバリッ


 バタバタバタバタバタバタ


 次々と魔物が倒れて残り5匹ほどになったので残りは護衛に任せて、俺は倒れている人の元へと向かった。

 怪我をしていたのは、護衛をしていた女性のようだ。手足に噛み傷と、頭部からの出血もある。

 魔法で回復させても良いのだろうか。回復魔法が珍しいスキルなら、後々騒ぎになる可能性もある。少し迷った俺は、自家製のポーションを飲ませて様子を見る事にした。

 傷口にポーションを振りかけてから、口の中に少しずつポーションを流し込んでいく。すると次の瞬間、腹の底から恐怖を抱かせる咆哮が轟いた。

 振り向くと、近くの林の中から巨大なウルフが姿を現した。群がっているウルフの3倍以上の大きさがある。

 周りを見渡すと、戦っていたはずの護衛の3人は今の咆哮で身がすくんで動けなくなっているようだった。


「仕方が無い。俺が倒すか」


 たぶん、隠れていたボスのウルフは俺がさっき使った魔法を見てるから雷魔法を警戒してるはずだ。

 火魔法は、火事に成りそうなので却下。

 水魔法は、街道が水浸しになって後始末が大変そうなので却下。

 土魔法は、ウルフ系は耐性を持ってる場合があるので却下。


 どのように戦うか思案していると、ボスウルフがゆっくりと間合いを詰めるように俺に近づいて来た。

 一瞬、ボスウルフの動きが止まったと思ったら、その巨体は鋭い牙をむき出しにして襲い掛かって来た。

 俺は奴の前足を掴んで、思いっきり放り投げた。

 ボスウルフが体をよじって着地しようとした所を狙って


「エアカッター!」


 空中に居たボスウルフは避ける事も出来ずに、光の粒になって消えた。

 次の魔物の追撃が無いか周りを見渡すと、3人の護衛も、生き残ってるウルフも、俺とボスウルフとの戦いをボケーっと見ていやがった。


「まだ3匹ウルフが残ってるから戦え!」


 その後戦闘はすぐに終了した。

 流石は本職の護衛だ。ウルフ相手に1対1なら完勝でした。


 ☆★☆


「護衛のメルです。今回は助けて頂き有難うございます」


 怪我をして倒れていた女性が御礼を言いに来てくれた。ポーションが効いて良かった。

 女性がリーダーで、護衛をしてる事に少しだけ驚いたけど、レベルが存在する世界では性別や体格の差は重要視されないのかも知れない。

 地球の常識で考えてはいけない、って事だろう。


「私は護衛を依頼した商人のフェバルです。私からもお礼を申し上げます」


 へー。キチンとお礼が言える商人なんだ。

 テンプレみたいな、護衛をゴミクズのように使い捨てるコウマンチキな商人とは違うようだ。


「俺はセンです。偶然通りかかっただけなので気にしないで下さい」


 あれ?異世界なのに言葉が通じてる?

 ムーちゃん、どうして日本語で会話が成立してるの?


『あたしがセン様の脳内で理解可能な言語に翻訳してるだけです』


 えっ!それって俺の脳を弄ったのか?

 今更だけど、そういうのは止めて欲しいな。でも、翻訳は助かるから今後もお願いします。


『わかりました。設定を変更しました』


 それって設定の問題ですか?

 ムーちゃんが全部事後報告で済ませようとしてるだけじゃないのか?

 まぁ、翻訳してくれる事は感謝してるけど。


「私たちはイチノマチーに向かう途中でしたが、もう少しという所で魔物に囲まれてしまいました」


 あそこに見える街の名前ってイチノマチーっていうのか。初めて知った。

 森から離れた街道にも魔物が出るって事は、辺境にある街なんだろうか。


「俺もイチノマチーへ向かってました。実は街に行くのは今日が初めてなんです。今まではあの山の森に住んでたんです」


「「「「「エエエエエーーーーー」」」」」


 護衛と商人、5人の声が一斉に響いた。


「あ、あの山って、死の森に住んでたんですか?」


 凄い名前の森だな。そんな物騒な名前を付けたヤツは、誰だよ! ネーミングセンスが無いだろ。

「信じられないけど、あのグレーウルフを1撃で倒せる強さなら住めるのでしょうか」

「いや、無理だろ。グレーウルフより強い魔物だっているだろ」

「それも、1匹や2匹じゃなくてウジャウジャ居るらしいぞ」


 護衛の人たちがゴチャゴチャと話しをしているが、詳しい事をツッコまれても困るので話をズラす事にした。


「また魔物に見つかる前に、出発しませんか?」


「そ、そうですね。あんた達ドロップを集めて終わったら出発するわよ」


 護衛のリーダーをしてるだけあって、メルさんは切り替えが早かった。

 ちなみに、俺が倒したウルフのドロップ品はメルさんに押し付けた。正直、ウルフ系の毛皮は万単位で【収納】に入ってるので今更5個や10個渡されても持ち運ぶのが面倒だ。だからと言って【収納】スキル持ちとバレるくらいなら、その程度のドロップは所有権を放棄した方が良いのだ。

 俺も異世界の考え方に慣れて来たなぁ。なんて思っていたら、メルさんは商人のフェバルさんと交渉していた。どうやら俺の取り分はフェバルさんから現金で貰えるようだ。


 俺が出会ったこの人達は、俺が想像していたテンプレ的な異世界人よりも凄く優しい。

 この世界に住む全員が優しいとは限らないけど、イイヒトが多い街なら住みやすい街だろうな。街に行くのが楽しみだ。






この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


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