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第8話

「忘れ物は無いか?」


『全部収納してます』


 俺は今日、異世界の街へ向かって出発する。前回の出発は転移してきた俺の家からの出発だったけど、今回は俺が作った家からの出発だ。

 異世界に転移して、たぶん今日で50日目だ。

 レベルは92になった。この森で俺よりも強い魔物は居ない。と、思いたい。

 戦った事は無いけど、ドラゴンには勝てる気がしない。この森では遭遇してないけど、もしドラゴンに出会ったら逃げよう。


「じゃあ、出発するぞ。・・・飛翔!」


 俺は昨日、【飛翔】スキルを取得してしまったのだ。

 まだ練習不足であまり早くは飛べないけど、森の中を歩くよりは早い。何より、直線で移動出来るメリットがある。飛んで行けば今日中に街へ到着出来るかもしれない。


 空の旅は思った以上に快適だった。

 森の中は魔物だらけで、移動の時間よりも戦ってる時間の方が長いくらいだ。魔物との戦闘をしなくて良い【飛翔】スキルは今までで一番の当りかもしれない。


『セン様、11時の方向より魔物が来ます』


 えっ。飛んでるのに魔物が来るの?魔物も飛んでるのか?

 ドラゴンじゃないだろうな。ワイバーンでもヤバいぞ。

 空中戦なんてした事が無いから逃げた方が良いかな。


『衝突まで2秒』


「ゲッ! 飛翔、飛翔、飛翔!!」


 考える間も無く接敵したので、俺は高度を高くして魔物を避けた。

 すれ違う一瞬、俺の足元を通り過ぎて行った魔物は奇妙奇天烈な形をしていた。


「鑑定」


 ―――――

 ビッグマウス


 武器は大きな口

 飛翔しながら捕食する

 ――――――


 マウスって、ネズミの事じゃなくて、口の事かよ。

 前方で大きく見えていたのは、開いた口だったのか。あのサイズなら人間を丸呑み出来そうだ。


「弱点! 弱点を教えてくれ!」


『表示させます』


 ―――――

 ビッグマウス


 武器は大きな口

 飛翔しながら捕食する


 弱点

 上顎を斬り落とす

 下顎を斬り落とす

 ――――――


 予想はしてたけど、マジで【鑑定】がポンコツ過ぎる。

 武器である口を使えなくさせたら勝てる事くらい誰だってわかるだろ。どうやったら。それが出来るのか教えろよ!

 あんなに早く飛ぶ魔物に魔法を当てれるとは思えない。それに、俺自身も飛んでるから姿勢が不安定で、狙って当てるのは無理だろう。

 どうしよう・・・取り合えず、逃げるか。

 スピードじゃ勝てないから、逃げるなら上空しかない。


「飛翔、飛翔、飛翔、飛翔!」


『真下から魔物が接近中です』


 ウソーッ! 追って来たのか!

 下をチラッと見ると、でっかい口が近付いて来るのが見えた。

 航空力学とか流線形とか完全に無視した跳び方してやがる。あんな形なのにどうして高速で飛び回れるのだろうか。


「収納物確認・・・ポチッと」


 俺は収納に入れていた大量の岩や土砂をビッグマウスの開いた口の上に出してやった。


 大量の岩を呑み込んだビックマウスは、自重に耐えきれなくなり墜落していった。


「まぁ。空中に廃棄物があるなんて思わないから、普通食べちゃうよね」


『あれは廃棄物では無く資源です』


 そりゃあ、まぁ。錬金の素材の為に収納した物だけど、今回利用したのは仕方ないと思う。あの魔物は結構強そうだったから。


「ムーちゃん。さっきのビッグマウスのレベルって解る?」


『レベル97でした』


 本当に俺より強かったのか。出し惜しみしなくて正解だった。

 また、襲われるかもしれないから、今のうちに地上に降りて岩や土砂を収納しておこう。


 ☆★☆


 出発から4時間。遠くに街らしき人工物が見えてきた。


「ムーちゃん、あれが街か?」


『そうです。もうすぐ森を抜けて草原になるので、そこからは徒歩で向かいましょう』


「このまま飛んで行ったらダメなの?」


『【飛翔】スキルの保有者は少なく、5万人に1人です。あの街の規模では1人もいないと思われます』


 そんなに希少なスキルだったのか。とても便利だけど街中では使わないように注意しよう。

 よそ者が目立ったらトラブルの元だからな。


「他にも、バレたら面倒事になりそうなスキルってあるのか?」


『【鑑定】は百人に1人、【錬金】は千人に1人、【収納】は1万人に1人です』


「【収納】もバレたら騒ぎになりそうだな」


『【鑑定】【錬金】【収納】の3つのスキルを取得する事でスキル内で複製を作る事が出来ますが、3つのスキルを全て取得してるのは10億人に1人です』


 複製の能力なんて普通の人は持って無いだろうなぁ、と予想はしてたけど、そんなに低確率だったのか。

 多くの人が持ってたら経済とかが滅茶苦茶になりそうだ。

 10億人に1人って事は、この国に1人もいない可能性が高いな。権力者にバレたら凄ーく面倒な事になりそうだから出来るだけ目立たないようにしよう。


 草原に降り立って1時間ほど歩くと、(わだち)のある街道に出た。


「異世界に来て初めて、俺以外の人間の痕跡を見つけた。ちょっとだけ感動だ」


『何を言ってるのですか。それよりも約1キロメートル先で馬車が魔物に襲われています。助けに行きますか?放置しますか?』


 放置して問題無いなら出来るだけ関わりたく無いんだけど、人道的に考えたら助けた方が良いでしょ。

 でも、異世界人とのファーストコンタクトがトラブルへの強制介入で良いのだろうか。それに俺が駆け付けた所で勝てる保証は無いんだよな。


「お、俺でも勝てる魔物なのかな?」


『はい。勝てます』


 俺は急いで現場へ向かった。


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


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