7.どれだけ絶望しようが、明日はやってきてしまう。
小さな神社を物色し、お守りを手に入れた。全部で26個ほど。
「しかしこれを飲み込むのかぁ?絵柄的にまずいだろ?」
「誰が私が飲み込むって言ったの」
「え?でも飲み込むんだろ?」
「まあ見てなさい。カニバル、飲み込みなさい」
そう熊谷が言い指を鳴らすと、白い霧が当たりに充満する。
またワープするのか、でも今ワープしたら回数が使えなくなるんじゃ、なんてことを考えていると、霧の中から何かが生成される。
「…なんだこいつ」
それは白い口だった。歯の内側にまた歯が生えている口は、お守りを見つけるや否や凄まじい勢いで突っ込み、お守りを全て飲み込んで消えた。
「あなたにも出てたでしょう?黒い手、それと同種の存在、いや器官と言ったほうがいいのかしら」
彼女がそういうと、自身の腕を確認し俺の方へと近づいてくる。
「とりあえずワープするわ。ワープ先は隣町仁奏町」
「おいおい、ワープ回数の回復はできたのか?」
「ええ、バッチリよ。だから移動するの。行くわよ」
そう言い、彼女は俺の手を掴む。その瞬間白い霧が辺りを見えなくし、景色が神社から小屋の中へと移動した。
「もう着いたのか?早いな」
「ワープできたからね、でも今日はもう無理ね」
「あ?なんでだ。ワープ回数回復できたんじゃないのか?」
「ワープ回数は回復できたわ。でもワープ使用回数は回復できてない」
「あぁ?どういうことだ」
「簡単に言えばゲームのスタミナみたいな感じで、能力の再使用には時間がかかるの、そして1日の回復回数も決まってる。
回復回数と使用回数を使い果たしたから、スタミナを回復しなきゃ使えないってこと」
「…なんもわからん、もっとわかりやすくだ」
「…今日はスタミナが切れました。スタミナを回復させるアイテムは複数あるけど、スタミナ回復は今日はもうできません」
「…お前の能力って最強の能力だと思ってたが、案外使い勝手悪いんだな」
「言っておくけど、私の能力はゲームのスタミナと違って数値の上限がないの。
だから使わなければ使わなかった分回数を保存できる。貴方が警察に囲まれて捕まりかけてなかったら、もうちょっと遠くに逃げられてたかもね!」
キレ気味に熊谷はそう言う。小屋の中を見渡す。昭和に出てきそうな埃の被ったテレビにこれまたオンボロのテーブルや椅子がある。
ソファもあるがこっちには埃は被っておらず比較的綺麗だ。
「それでだ、教えてもらうぞ熊谷」
「言いわよ、夜はまだ長い。なんだって教えてあげるわ」
髪を靡かせながら熊谷はキメ顔でそう言ってきた。こいつ昔ドヤ顔が気持ち悪いとか言ってたな。今の自分を見せてやりたい。
「とりあえずだ、この能力はなんだ?正体が知りたい」
「めちゃくちゃ単純言うと、神様が持っている器官ね。人間が持つ口や鼻、動物が持つ尻尾、それを私達は使うことができる」
「…」
まったくわからん。とそんな顔をしているのが分かったのか。熊谷はこちらを睨みつけ、そっぽを向いて話を続けた。
「言ってしまえば、私達に新たな器官をつける手術をしたのよ。求人を受け取ることが手術の内容。今私たちには、動物の尻尾が移植されている状態なの」
「詰まるところ…俺は第二の両腕が移植されたってことか?」
「まあそんなとこ、よかったわね。カイリキーになれて」
ポケットから飴を取り出し、彼女は口に運ぶ。そこから少しリラックスしたのか。
落ち着いてこちらを向く。
「だから私達は今、一部神様なのよね。神様の器官を持っているんだから」
…一部神様、つまり俺たちはもう人間ではないってことか。
「じゃあ第二の質問だ。俺たちの行き先だ。このまま警察から逃げててもジリ貧だ。いくら北海道がでかいからと言っても俺の顔はニュースにも載っている。見つかるのは時間の問題だぞ」
「とりあえずの目的地は函館に行くことね、あそこには私のラボがある。結構入り組んでいるから、警察も入ってこれないと思う。」
「…ラボ?お前、何を」
「だけど、函館はここからかなり遠い。だからまずは長万部で3日間休息を取るわ。そして一気にワープして函館にたどり着く。長万部なら私の隠れ家もあるしね」
「…待て、お前の能力は回復には時間がかかるって言ってたな」
「ええ、そうよ」
「1日でどれくらい回復するんだ」
「聞いて驚きなさい。一回しか回復しないわ」
…こいつを再開した時の、あのシリアスが一気に吹っ飛んだな。
「あのね、ワープなんて強い能力。そんな簡単に使えるわけないでしょ。どんな力にも使う条件が決まっているものよ。100で1が帰ってくる世界なんだから、慣れなさい」
「…なんかもう疲れてきた。とりあえず寝ることにする。」
「寝床はそこのソファを使いなさい」
「…珍しく気がきくな。お前はどこで寝るんだ」
「別室の自前のベットで寝るわ」
………
「じゃあそう言うわけで、またねー」
…彼女はドアを勢いよく閉めた。
俺は何も考えられず、とりあえずソファに寝っ転がる。
どうなるかわからない。どうするのかわからないが。寝なければ頭は働かない。
「はぁ…不安だ」
そう思いながら俺は眠りについた。




