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6.それは、巨悪へ至る物語。

倒れた死体を見て、俺はため息をこぼす。

彼は、悪ではないのだろう。元より正義を持つ人間だ。

娘を大切にする。素晴らしい父親なのだろう。だが、その考えに至るまで、どれだけの人をいじり、いじめ、学習してきたのだろうか。


立派と思う大人ほど、小さいころにはクズでどうしようもない人間で、それを昔話のようにどこかで語っていたのだろう。傷ついた人間を思い出しもせずに。


「だが、奴は強かった。こういう時敬礼をしたほうがいいのか?」


「殺人鬼に敬礼されても別にその人は嬉しくないと思うけど」


ドアの向こうから、熊谷が顔を出す。そして俺のネクサスを見て驚いたような顔をし、ネクサスに近づいた。


「これが貴方の能力、刀を持った黒い手かぁ...中二心くすぐられちゃうね」


「お前、俺が戦っているときはどこに行ってたんだ」


「裏口から色々とみてたよ?弾の在庫とか、でもだめね。玉ほとんどが水に突っ込まれて駄目になってる。この人の仕業だろうね」


熊谷はポケットから濡れた弾を取り出す。こいつは、自分が死んだ後のことも考え用意していたのか。


「とりあえず今使える弾の数はライフル弾が50、散弾が40個って感じかなー店長さんが個人で管理してた金庫に入ってた分」


「銃はどうする?なんかたくさんあるが」


「とりあえず一人一つずつ持っていきましょ、コマンドーみたいに複数持っていけるほどの実力貴方にはないでしょ」


「ああ、使ったこともない」


熊谷の言葉に適当に返していると、遠くからサイレンの音が複数聞こえてきた。その音は少しずつ近くなっていく。


「考えている時間はなさそうだな。俺は散弾を貰う。弾をよこせ」


「あなた使ったことないんでしょ、おとなしくライフルにしときなさい」


俺は投げて渡されたスコープが付いたライフルと、弾を受け取る。

そして、刑事の死体からハンドガンと弾、防弾チョッキを回収した。


「ちょっとそういうのはレディーに譲るものじゃないの?」


「これからバク食いする奴にチョッキは不要だろ、さっさと行くぞ」


サイレンの音は大きく鳴り響いている。車のドアが閉まるような音が聞こえたと同時に、白い霧が俺たちの周りを包んだ。


「...この感覚、なれねぇな」


目を開けると、鳥居の前についていた。昔言ったことのある。少し大きな神社懐かしさと思い出、そして憎しみが湧き出てくる。


「警察はいないみたいだな」


「多分、刑事さんの無線から位置を特定して、今は小屋を囲んでいる最中じゃない?神隠しにあったばっかりだっていうのに」


「さっさとお守りを奪って、ここから脱出しましょ」


「その前に、聞きたいことがある」


俺は、熊谷の話を遮り話しかける。彼女はもう鳥居を潜り抜けていた。彼女は俺の方を見て困った顔を浮かべた。


「時間がないって言ったでしょ?後で話すから」

 

「いや、この質問だけには答えてもらう」


俺は、ライフルを彼女に向ける。彼女は真剣な顔になり私に体を向ける。


「何故、俺の所に来た。俺が殺人鬼であることはお前と会った時点では報道されてなかったはずだ。

どうやって俺の状況を理解し、行動した。」


そう質問する。ずっと気になっていたことだ。

俺は、33人を殺した。だが、ニュースで報道されたのは犯人はまだわかっていないという報道だった。


警察はわからないが、一般では報道されていない。

どうやって俺の状況を知り、俺を雇おうと思ったのか、それを知りたい。


「貴方が殺人鬼になったなんて、知らなかったわよ」


「…なに?」


彼女は、銃を向けられてもそれがどうしたという表情で俺を見つめる。

月の光が彼女を照らし、まるで舞台を見ているような感覚に陥る。


「私が知っていたのは、妹が自殺したという事実よ。ネットニュースで報じられたわね、そしてボロクソに彼女が叩かれた。いじめっ子じゃなくてね」


彼女は俺に近づき、猟銃の銃口を手で掴み、自身の心臓の位置に持っていった。


「私は、貴方をいじめていたわ。水をかけたり、カバンを隠したりしていたわね。靴を泥だらけにしたりもした。全て私の罪よ。でも、貴方は私を恨んでいなかった。嫌悪感を出すことはしたけど、話を聞かなかったりなどせず。どれだけ酷い目に合わせても、あなたは二本足で立っていた。ずっと変わらずにね」


彼女は私の顔へと手を伸ばし、髪をそっと撫でる。


「そんな貴方が今、妹を殺され憤怒している。私は知っているわ。怒りはいつだって悲しみの果てにしかない。辛かったわね。だから私は貴方の力になりたい」


「そうか、よくわかったよ。真面目に答える気がないことは」


俺は彼女の手を払いのけ、彼女の頭に銃口を向け直す。


「…はっはっはっ!気づかれちゃったわ。そうよ、そんなバカなことはない。ただ、貴方ならこの世界を滅ぼせると思ったからここに来たのよ」


彼女は俺をいじめていた時と同じ顔で俺の方へと笑いかける。


「だから、能力を与えた。言ったでしょ?私たちは休戦状態、私は世界のリセットと人類の浄化が目的、そのためにあなたを利用する。ただそれだけ」


俺は、少しため息をつく。そして、銃を下ろし、鳥居の中へと入っていく。


「お前はその顔が一番似合ってるよ。クソ野郎」


「言っておくけど、この鳥居をくぐる意味を分かってるのよね?」


「分かっているさ、精々死ぬまで親友でいようぜ」


俺は軽口を叩き、神社の事務所の方へと向かう。


「はっはっはっ!これから始まるのね!新たな物語が!」


彼女は笑いながら、私の後ろをついてくる。

気持ち悪く、気味の悪い、クソ女それが熊谷綾だ。

これが俺の知っている彼女だ。


「お前の物語なんかじゃねぇよ。これは俺の物語だ」


そうこれは俺のクソッタレの腐った物語、後戻りができなくなった。悪党の物語。


これは、俺が小物の悪から、世界を壊す巨悪になるまでの物語。


誰にも邪魔はさせない。日本人は見つけ次第皆殺しだ。

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