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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
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52.月下往来

クソ!なんなんだこいつ!


隙がなさすぎる。いや、隙があると言えばある。だが、その隙を自分で瞬時に理解しカバーしている。


意味が分からない。こいつだけマルチプレイでもしているのか?実力差はこちらの方が上のはずだ。

だが、こいつは圧倒的センスでそれをねじ伏せてる。何が何だかわからない。

こいつはどこから現れた?筋肉量もさほどなく、手にタコなども見当たらない。訓練せずにこれほどの力を出してやがるのか?


「お前、なんでそこまでして国家を敵に回す!」


銃弾を撃つ。これで鎮静用の弾は品切れだ。ばれたらやばい。

急いで警棒での鎮圧にシフトを


「単純だ。俺は俺のために殺しているだけだからだ!そこに何の思想もない!信念もない!ただ俺の目的のためにお前らを殺す!」


そんな隙与えてくれないよな!お前は!


「国家を敵に回すことに何の意味がある!お前はそこまでのセンスを持っていながら!お前なら軍隊でも通用したはずだ。下手すりゃ英雄にだって」


「...誰が見つけてくれるんだ?」


...?手が止まった。いや立ち止まったのか?奴はただこちらをじっと見つけている。


「俺はあいつを失うまで一人だった。どこに行っても浮いたり、いじめられたりしていたよ。それでもよかったんだ。あいつがいてくれるなら、だから働いたんだ。黙って、働き続けた。俺は学歴がなくてな。中卒で働けるのは工場だけだったよ。ただ一人で黙々と働いたんだ。

そんな俺がなんもしていなくて、まじめだったときに、なんで俺を見つけなかったんだ?」


いや、ちがう。


「結局な、お前らは凡人なんて見ちゃいねえのさ、自分のことばかりを見て、自分のことばかりを気にかけている。自分が少しでも惨めな気持ちになったり不快な気持ちになったりすれば、そいつを蹴落とすのに全力を注ぐ」


警棒を使えと誘ってきているのか?銃が弾切れなのを見抜いて。


「俺はな、そんな日本人を皆殺しにするためにここにいる。大義名分ではなく、ただ不快だから皆殺しにするんだ。不快なものを殺し続けて、なくしてやる」


「...だから、殺すと」


「本気でかかってこい、俺はお前を半分の力でねじ伏せる」


「なめるな。お前の発言に裏があることくらい。わかるんだよ」


()()警棒を構える。その瞬間だ。白い霧が辺りを包み込み始める。これを使うべきではないと思っていた。使ってはいけないと思っていた。だってこの力は本質的にクトゥルフと同じだから。


でも、この力で街を壊そうとするやつを止められるなら。


もう一度、使うだけだ。


「...こい、フィクサー」


その瞬間だった。ヤギの鳴き声が辺りに響き渡る。次に出てきたのは、首のないヤギの体だった。


辺りに霧とは違う煙が充満する。


「...何も見えない」


「違うな。そうじゃない。お前は与えられたんだよ。夢を」


この中では、身体の共有が行われる。

相手の腕が切れたら、こちらの腕も切れる。逆に相手の体に何かを埋め込まれたら自分もそれを得ることができる。


お互いがお互いの感覚と体を共有し、こちらが死ねば相手も死ぬ。相手が能力で治療したらこちらも治療される。


つまり、完全なる停滞。


資格情報を与えないのは、視界に映る情報が増えれば増えるほどお互いの脳への負担が甚大になっていくからだ。

それに相手に情報を与えないで戦うことができる。

そういう風に変化した。私の能力。


「...どこに出口がある」


仮面をしたあいつはどうやら出口を探しているらしい。無駄だ、私が脱出する意思を持たない限り、相手も脱出ができない。

停滞こそ私の能力、状況をその場に固定し終わらせない。


「...覚悟など問うに決まっている」


地面に座り、持っていた警棒を、足に打ち付ける。痛みが体を支配する。


「ぐっ!?」


相手にも、どうやら痛みが共有されたようだ。このまま足を悼み続ける。だが、私は死ぬつもりがない。お互いの足を負傷させ逃げられなくし、外の仲間が来るまで待ち、確保させる。それが私の役割だ。

3分程度撃ち込んだら、たとえ鍛えている私でも骨折できるだろう。その瞬間、相手も骨折する。


「...そうか、感覚の共有か」


違う。身体の共有だ。お前は痛みだけが来ていると思っているだろうが、その体に負荷は蓄積されていく。


「...運が悪かったな。お前」


...なに?


「黒い、霧?」


煙に重なるように、黒い霧が充満していく。これは、月下往来と同じ?


「ネクサス、俺を斬れ」


その瞬間だった。煙はまるで強い風にあおられたように急激に晴れていった。

強い風に目が明けられなくなる。風が弱くなって見えてきたのは、刀を持った腕と仮面をかぶった男だった。


「...縁切りの神か」


「察しがいいな。こいつは使い勝手が良くてな」


「...そうかよ!」


ただ警棒で襲い掛かった。最終手段は通用せず、ほぼ積みの状態だ。でも諦めるわけにはいかない。


「...私は!守らなくちゃいけないものがあるんだ!あいつが守ったこの街を守るんだ!」


「そうか、ご立派だな。だが」


力押しだった。力押しならば訓練している私ならばどうにかなるかもしれないと考えた。だが、無駄だった。奴は私の力を横に流し、力押しをしていた私はバランスを崩した。


「それは、お前が踏み潰してきた弱者たちの憎しみより軽い!」


...ああ、殺される。ナイフが振り落とされている。

ごめん、何も守れなかった。


「...お前らしくもない」


その瞬間だ。空から何かが落ちてきた。仮面をつけた男は瞬時にそれを理解し、後退する。


「...そのお面似合ってないな。お前に一番程遠いお面だ」


空から落ちてきたのは、見慣れた。いや、懐かしい鎧を着た男だった。

赤い装甲をしている男は、ザリガニのような鋏を両手に装着し、ヒーローのような鎧を着ていた。


私はそいつを知っている。3年前、皆で戦った。4人の仲間のうちの一人、特攻隊長。


「月下往来...」


月下往来、私たちのチームのリーダーが、そこに立っていた。

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