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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
49/57

49.世界は残酷だと、元凶はつぶやいた。

ヒーローの力を手に入れた彼女は想像以上だった。


魚の化け物が、一匹だけならば何も問題なく倒していた。

私はそれを茫然と見ていた。



私たちが脱線した地点は、長万部の端っこ八雲町と長万部の間だ。

どっちの町からも遠いこの場所ですら、化け物たちは大量にいた。


道を歩けば8匹程度が群れを成して、辺りを歩いている。

私たちは隠れながら、どうしても通れない場所をモモちゃんが処理する。


そうやって、前を歩いて行った。だが、どこに向かえばいい?

この化物たちは街にも出現しているだろう。それは長万部だけなのか?八雲にもきているのでは?


そもそもどうしてだ、どうしてこんなことになっている。どこに逃げればいい。どこにいけば、桃ちゃんを安全な場所に避難でき


「...光希ちゃん」


桃ちゃんが、私の手を両手で握った。そこで気が付いた。手が震えている。

いや、足もだ。私は恐怖していたのか。


...怖い、怖いよ。そりゃそうだよ。どこにいけばいいの。どうなっているの?わからないよ。


「...大丈夫、私はずっと一緒にいる」


「...ありがとう、桃ちゃん」


そうだ、桃ちゃんも怖いんだ。意味の分からない状態になって。変な力を手に入れて対抗できたとしても、そんな状況だったとしても、怖くないはずがない。そんな状況で、手を握って勇気づけてくれたんだ。私も報いなけば


「...多分、この魚たちは海から来てる。なら、今長万部に行くのは得策じゃない」


「...うん」


「それに、私たちの乗っていた電車は長万部に入った瞬間に襲われた。でも、今から八雲町に戻っても、多分また同じ魚の化け物に襲われると思う。なら、山を登ろう」


「光希ちゃん、でも、長万部から山に行くルートは」


「うん、この近くだと国道230号線しかない。でもあそこから登れば、ピリカ湖に行ける。山の上にあって、発電機もある。そして、農場もあるから、人がいるし、長万部から脱出もできる。これしかない」


「...わかった。光希ちゃんを信じる」


...でも、問題はそこしかルートがないことだ。今の私たちは完全な私服だし、お土産のお饅頭しか持ってない。山道を通るには危険すぎる。

だからこそ、このルートしかない。だけど、このルートに行くには必ず、海の近くにある橋を渡らなければならない。


...そこで待ち伏せされていた場合、桃ちゃんに戦ってもらうしかなくなる。それはだめだ。この力がどういう原理なのかすら分かっていないじゃないか。それに、桃ちゃんにはできるだけ戦ってほしくない。


「...230号線にいくには、必ず橋を通らないといけない。それも海から近い」


「この近くに橋ってあったんだ」


「うん、でも多分そこにはあの化物が大量にいると思う。道中の数に加えて、海から増援が来るかも」


「...考えてみたんだけど、この近くって高速道路あったよね?そこに行ってみよ」


「高速道路?」


「うん、高速道路は事故を起こした人用の非常用通路があるはずだから、底を探して高速道路に行ってみるの。高速道路だったら入りずらいし、人もあなりいないんじゃないかな」


「...モモちゃん!ナイスアイディア!」


「イエーイ!」


私たちはハイタッチをしてから、スマホで現在地を調べる。電波はかなり悪いが、何とか現在地を把握することができた。


「上に登ればもうありそうだね」


「うん、向かってみよう。案外何とかなるかもしれない」


今私たちは、畑が放置されて、草原になっていた場所を通っていた。そこから、家がぽつぽつある場所から、少しの丘を登れば、高速道路に上がれそうだ。


私たちは、急いでそこに向かった。多分色々なことが起きて、マヒしてたんだと思う。きっと心のどこかで大丈夫って思ってたんだ。


「なに、これ」


目の前のこれが現れるまでは、そこは町はずれにある田舎だった。

畑があり、小さな家がぽつぽつあるような、よくある形の田舎。


何も変わらない。村の光景だ。


ハエが大量にいることを除けば


私たちは奥に進む。高速道路を目指して、一歩一歩

奥に進んでいくにつれて、ハエが多くなっていく。


村は驚くほどに静かだ。いや、村は静かなものなのかもしれない。でも、それでも人の気配がなさすぎる。


歩みを進めて高速道路の前にたどり着いたとき、私たちは目の前のものを見て動けなくなった。


「あ...あぁ」


それは、死体の山だった。熊、鹿、牛、豚、そして人。すべての生物の肉のかけらが山積みになっている。


飛び回るハエが死体に泊まり、卵を産み付ける。死体に産み付けられた卵が孵りウジたちが死体を飲み込んでいく。


「うっうえ...」


私は胃のものを吐き出す。その瞬間、ハエが嘔吐物に泊まり、また卵を産み付けた。


「光希ちゃん」


桃が私の背中をさすってくれる。それでも私は吐くのをやめられなかった。


胃の中のすべてを吐き出した時、ようやく立ち上がれるようになる。


「ごめん桃ちゃん...もう大丈夫」


「...うん」


私たちは、何も言えなかった。くらくらとする頭をなんとか動かし、この場を後にする。駆け足でこの場にいたくなかった。この現実を見たくなかった。


高速道路に上り、周りを見渡す。車が転倒し、街の外に向かう通路をふさいでいた。さっきの死体の中には、この車の持ち主もいたのだろう。


「...」


「...光希ちゃん、大丈夫?」


「大丈夫...じゃないかも。でも進まなきゃ、逃げなきゃ」


「...うん、あのね。光希ちゃん。きっとこの先に、私たちを襲ったやつとは違う何かがいる」


「何か...って?」


「死体を山積みにしたり、車でバリケードを作ったり、明らかに知性がある。あの魚たちじゃこうはならないと思う。きっとこの先に魚たちのボスか、それ以上の何かがいる」


「...でも進まなきゃ、どうにもならなくても、まずは進まなきゃ、私たちは生きなきゃ」


「...うん、光希ちゃん、私が守るから」


桃ちゃんはそう私に言ってくれた。きっと心配してくれてるんだろう。

でも、その言葉が苦しかった。桃ちゃんはさっき変な力を手に入れただけの普通の女の子だ。怖いはずなんだ。


私が、足を引っ張ってどうする。


「よし」


私は、歩みを進めた。早く安全な場所に帰るために、桃ちゃんが傷つかないように、普通に戻すために。

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