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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
47/57

47.弱者の報復を憎むのではなく、解決策を探せ。

嫌だった。この世界が、


昔の俺、高校生の時の俺は図書館で本を読んでいるようなやつだった。

ただ恨み言を言っていた気がする。周りが馬鹿だからとか、クズしかいないとかそんなバカげたことを昔は言っていた。


神社にも、こんな場所から脱出できますようになんてお願いをしていた。


でも、あの日。すべてが変わった。


海から現れた怪物たち、食いちぎられる。家族やクラスの奴ら、最初はそいつらを見て笑っていた。


ムカつく奴が死んで済々したと戯言を言っていた。


でも、涙が止まらなくて、目の前にある現実が受け止められなくて、ただゲロと涙が止まらなかった。


家族とクラスメイトの死体の前で、ただ奴らがこちらに向かってくる。


逃げようとしたが、震える足が動かなかった。立ち上がれなくて、ただ後ろに後ずさって、それで、でも。


「に、げて」


死んでいたと思っていた。母さんがそう言ってきて、逃げた。


ただ逃げた逃げて逃げて、涙が止まらなくて、ただ逃げ続けて、化け物たちがそれでも追ってきて、気が付けばいつも通っていた神社にたどり着いていた。


それでも化物たちが追ってくる。震える体でお社に向かって、何度も何度も手を合わせた。


「ごめんなさい...ごめんなさい...馬鹿だった...大切にされていたのに、気にかけてくれていたのに、すべてを馬鹿にして、馬鹿だったんだ...死にたくない...死にたくない...」


ただへたり込み、お社にただ祈り続けた。その時だった。

時間が止まった。いつの間にか化け物が消えて、ただ神社と鳥居だけがある空間に行っていた。


何が起きているか、わからなかった。ただ放心状態で鳥居を見ていた。


意識を取り戻した時、体に何かが入ってきた。ぐちゃぐちゃと音を立てて、それでも痛くなくて、そこでこの力を手に入れた。


_____________________


「...それでどうしたの?」


熊谷と呼ばれた女性が、こちらに向いていた。先ほどまで私たちは龍神社にいたはずだ。それなのに今は小さいぼろい部屋にいた。


サザエさんであったようなキッチンに埃のかぶったソファ、床は片付いており、見てみると奥で同い年くらいの男の子が掃除をしていた。

男の子は少しするとこちらに気が付いたようで駆け足で近づいてくる。


「熊谷さん、ワープ使ったんですか?」


「ええ、どっかの誰かさんが警察に捕まりかけてたからね」


「...えへへー」


先ほどまで、優しく凛々しい表情をして私を守ってくれた少女はどこが自由奔放な表情をしていた。多分こっちがいつもの表情なのだろう。


「警察に捕まりかけたってことは、ここにいるのばれたじゃないですか!?どうするんですか?!」


「まあ、さっさと退散するのがいいと思うけど、多分神居崎はまだ出ていく気はないと思う。あいつの話を聞いてからね」


...神居崎?誰かの名前でしょうか、


「やっぱり気になるよね!カムイのこと!」


少女がこちらに視線を向けてくる。まるで憧れの人のような無邪気な顔をしていた。


「カムイがね、私の神様なんだ!奴隷の首輪を斬ってくれて、私を従えていた奴のことも再起不能にしてくれたの!最高の人なんだぁ!」


「あ゛ああ?」


そうなんだ、と言おうとしたが、うまく発音ができない。やっぱり口が溶けてしまっているようだ。


「...あれ?この子、生物だったんですか。てっきり僕の祟り神を使って人形でも作ったのかと」


「失礼な!人間だよ、言葉は喋れないけど、ね!」


「ああ゛」


...この扱いちょっときついな。一応、中身は高校生だから


「それで、この子どうするの?そもそもどんな奴か知らないで庇うって」


「だって、一人でかわいそうだったんだよ」


「...はぁ、まあいいわ。あいつが連れて行くって言ったなら、貴方のことは守ってあげる。だけど、無理はしないことね」


...あいつっというと、神居崎と呼ばれていた人のことか、そんなにすごい人なのかな。あの子は、その人のことを多分神様と思っているだろうし。


「というか、黄色い雨合羽だけですか。この子どろどろしていますけど、寒さとか感じるんですかね。感じるなら服を着せた方が」


「さっき体に触ってみたけど、頭以外はドロドロになってて腕が沈んだから服は着れないと思う。雨合羽は頭にかけてるからかろうじて着れてる状態」


「じゃあそのままのほうがいいですね。ただ、その格好だとどろどろの体が見えちゃいますし、前だけ占めちゃいましょうか」


「待って!男性にやらせるわけないでしょ。それは私がする」


「ええ!女性なんですか!?」


...どうやら、本当に仲がいいようだ。心から本音で接しているのがわかる。昔の私たちを見ているようで、少しうらやましい。


「ああ、そうだ。私たちについて説明しておくね。私たちは...なんだっけ?」


「グループ名なんてないわよ。適当につけときなさい」


「じゃあ、カムイ団!カムイの手伝いをしながら、函館を目指すグループ!」


「あながち間違ってないですね...」


「それでね!私たちは、この長万部を壊しに来たの!」


...え?


話を無言で聞いていた。ただ、聞いていた。ほほえましいと思っていたグループの会話から、突拍子もない言葉がいきなり発せられ、放心状態になる。


「だからね、安心して!あなたを虐げた街も私たちが破壊してあげる!」


...先ほど助けてくれたその少女の笑顔を、屈託のない満面の笑みをみて、私はこのグループが狂っているのを理解した。


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