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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
45/57

45.積み重ねたものがある日突然崩壊し、自分を押しつぶすことだってある。

龍神社は何も変わっていなかった。

木でできたであろう小さい鳥居をくぐり、神社の中に入る。

小さいお社が私を出迎えた。

私は財布からお金を取り出そうとした。だけど、そもそも財布自体を持っていなかった。


「...今私、服も来ていないのか」


体がドロドロになって忘れていたが、私は今服を着ていない。つまりは全裸の状態だ。そう考えると羞恥心が湧き上がってきた。

何かどこかで服を買わなければ、でもお金どうしよう。


「...ん?」


神社のお社に隠れて、何かの石碑が立っていることに気が付いた。こんなものなかったはずだ。小さい石碑には濃い茶色のコスモスの花束が置かれていた。

誰かの墓碑だろうか。それも神社に置くとは。


私は少しずつ、石碑に近づいた。石碑の周りにはたんぽぽが咲いており、雑草が取り除かれていた。大切に管理されているのだろう。


終点の合わない視界でも石碑が見えるように、すこしずつ近づく。

やがて、このぼやけた視界でも、認識できるくらいになり、ついに石碑の名前を見ることができた。


「...長尾光希」


そこに書かれていた名前に見覚えがあった。ずっと見てきて、書いてきた私の名前だった。もう何が起きているのかわからなかった。

いや、海に飛び込んで、生きていると考えるほうが不自然だろう。

だが、こんな墓碑が経ち、なおかつ周りにタンポポが咲き誇っている。

...ずっと海に流れ着いたと思っていた。奇跡的に一命をとりとめていたと思っていた。


だが、この墓碑はおかしい。おかしいんだ。すぐ立った墓碑の周りにたんぽぽが咲くわけがない。


私は、何日、いや何か月海をさまよっていたんだ?


「お前が、例の怪物の生き残りだな」


声がして、私は後ろを振り返った。鳥居の真ん中に立つ仲間はいくらぼやけた視界でも誰かを判別できた。

眼鏡をかけ、スーツを着ている男の名は藤野 武光 自分の名前を嫌い、仲間に眼鏡と呼ばせていた奇人だ。


なぜこんなところに


「お前が生きていると住民が安心して暮らせないんだ。ここで駆除する」


辺りに白い霧が立ち込める。まさか、あれを使おうとしているのか。


「あ、あああ!」


必死に言葉をかけようとする。だが、私の放つ言葉はすべて、赤子のような嗚咽にしかならなかった。


やがて、それは顕現した。それは巨大な目であった。彼の後ろに存在する目は、対象の弱点や体の構造を完全に把握する。

人体の構造を掌握する彼の象徴する医療の神の能力、それが彼の能力だ。


「...なんだあいつ、脳みそ以外が存在しない?クトゥルフを作ろうとした失敗作か?だがならば脳みそをつぶせば」


眼鏡くんは私の頭に照準を合わせた。瞬間、私の頭が恐怖で支配される。


死にたくない。せっかく助かったのに、死にたくない。


私は全力で逃げようとする。だが、足がないこの体じゃうまく動くことができなく、私は体勢を崩した。


銃口が頭に合わせられる。私はせっかく生き延びたのに、仲間に撃たれて死ぬのか?いやだ、いやだ、桃に会いたい。いやだ。

桃に会うためにここまで来たのに、こんな結末。


「面白いのがいるねー」


声がした。少女の声、だが聞き覚えのない声。その少女は、眼鏡君の後ろに立っていた。


「!?なっ」


とっさに、距離を取ろうと彼はお社のほうへと進む。だが、その隙を、少女は逃がさず、腕で銃を叩き落とした。


結果、眼鏡君は距離を取ることには成功したが、私と少女にはさまれる形になった。


「...お前、何者だ?」


「貴方に興味がない。それよりも、こんにちはお姉さん?こんなぼろぼろになって大丈夫?裸でこんなところまできて、どこかから逃げてきたのね」


その少女は、こちらに話しかけてきた。何が何だかわからなかった。でも、やっと、やっと自分を人間だと言ってくれる人が現れた。


「...何を言っている?こいつが人間だというのか?」


「うん、人間でしょ?どう見ても」


「ふざけるな、人間は脳みそだけで動いたりなどしない。こいつは化け物だ」


「へぇ、見たところ、この子は何もしていないよね?警察に危害を加えたわけでもない。ここにきて貴方に危害を加えたわけでもない」


「それがどうした。これから危害を加える可能性もあるから駆除をするんだ」


「貴方、傲慢だね。差別的で、愚別的」


「差別?これは区別だ」


「神様が言ってた。一番の差別主義者は、区別という言葉を多用するって、

自分に都合の悪いものを区別だと言って迫害する。それが一番許してはいけない人間なんだって。


いい?区別と差別は違う。区別とは、区別された側も納得できるものじゃなくちゃいけない。貴方がやっているのは、ただ相手を陥れる差別だ。


生かしてはおけない。今ここで、貴方を排除する」


「神だと?神は何も発さない。何もしない。ただ見守るだけだ」


「そうだね、この力をくれた神様はそう、でも。私の神様は違う」


少女は、銃口を眼鏡君に向けた。

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