44.自分が相手を理解したからって、相手も理解してくれるとは限らない。
「あぁああ」
全身の痛みとともに、目を覚ます。寝ていた場所がぐちゃぐちゃになった木材の上で、なおかつ木のクズが大量にばらまかれているということもあり、快適に寝れたとは言えない。
それどころか、全身が痛くなってもおかしくない。けがをしてもおかしくない場所で寝ていた。
というのに、体にはまるで痛みはなかった。
昨日の最終決戦、心肺停止をした桃ちゃんを治すために無茶をし、死に物狂いで彼女を治療した。その後、動けなくなった体を突き落とされて、海に落ちてしまったのだが、それでもなんとか生きていたらしい。
「けど、この体は...」
目が覚めたとき、ふわふわとした感情と、激しい痛みに襲われた。まるで麻薬をやったときのような快楽と、拷問を受けたときの痛みを同時に味わった。
頭が働かず、ただひたすらに仲間を探した。街には車が通っていて、昨日までの荒れ具合とは程遠くて、でも、その時は何も疑問に思えなかった。
パトカーが通りかかり、サイレンを鳴らしながらこちらに近づいてきたとき、私を探してくれているのかも期待した。だってそうだろう。
今まで頑張ってきて、沢山の出来事を共にしてきたみんなが私を探してくれていると思ったのだ。
だが、現実は違った。パトカーが止まり、銃を発砲した。何が何だかわからず困惑している状況にも、彼らは発砲を繰り返す。
そこで頭がはっきりとしてきて、気が付いた。赤色になっていた空は元のきれいな空に変わっており、道には普通に車が走っていた。
壊れていたはずの建物は復興し、元の町に戻っていた。
私は何日寝ていたんだ?そんな思考回路になっている間も、警察は発砲をし続ける。
やがて彼らはそれが意味のない行為だとわかると、無線で応援を呼んだ。
「銃弾が効かない。至急応援を頼む」
その言葉を聞いて、はっとした。私は銃弾を受けているのに、何も痛みを感じない。それどころかまるで何事もなかったかのように立っている。
私はおなかを確認しようとした。だが、私には腕がなかった。
腕どころじゃない。胸も足も果てには口すらなかった。
体の部位は形成されて、崩壊を繰り返し、黒い泥になってなだれ落ちる。
辿ってきた道筋を見ると、黒い泥の跡がついていた。
何が何だかわからなかった。どうしてこんなことになっているのか、どうして体が崩壊しているのか。何もかもわからず。
ただ、パニックになって逃げた。
それでもパトカーは追いかけてきた。この光景、見覚えがあった。私はこうやって奴らを警察や自衛隊と協力して追いかけて駆除していた。
今度は私が狩られる番なのか?なんでこんなことになっている?私はこんなにも街のために動いていたのに、今は街に殺されかかっている。
ただパニックになり、悲しさと困惑が入り混じり、私は逃避のため海に飛び込んだ。海の中では体があったころとは違い、半固形の状態では思うように体が動かせず、流されてしまい、夜に気が付いたらこの小屋の前に流れ着いた。
「どうなっている」
私は必死に考えた。外に出ようとも考えたが、黒い液体が見られでもしたらただじゃすまないだろう。
だからといってやれることもないので、今の状況を整理する。
「私は、最終決戦で海に落とされて、流されたはず。それから目が覚めたらこんな状態、復興も始まっている状態らしいし、1週間程度流れていたのかも...でもそれじゃあ人間なら死ぬはずだ」
私は体を見る。相も変わらず体は半固形の状態を保っており、床には黒い液体が垂れていた。そもそもなぜこの体になってしまったのだろうか。
私は人間だ。神の力を授かったとはいえ、人間のはずだ。
だけど、こんな状態の私が人間と呼べるのだろうか。べとべとで、顔がなくて、言葉が通じない。まるで化け物だ。いや化け物なのか。私は
「...あいつが改造したのか?いや、でも神の力は人間に害を与えられないはず」
...よし、考えてもわからないことだけは分かった。そもそもここどこなのだろうか。こんなぼろぼろの小屋、いつ崩れるかもわからない。
「出るしかないか...」
意を決して、ドアだった所を退かして外に出る。そこには太陽の光と海がお出迎えしてくれた。
私の見立て通り、小屋の後ろには道路があった。復興したてだからか、車どおりはない。
辺りを見渡すと、ソーラーパネル、昔電車が走っていた線路、そして川が流れていた。私はここに見覚えがあった。いや、何度も通ったところだ。
「ここ、龍神社の近くだ」
龍神社、草原の中にポツンとある小さい神社であり、仲間の一人が力を授かった場所、私は仲間たちと一緒にその神社に何度も参拝に行った。
「...あそこに仲間がいるかもしれない」
いなかったとしても、仲間が来てくれるかもしれない。とりあえずそこに移動して、どこかに隠れていよう。
...この体なら仲間に受け入れられないだろうか。いや、説明すればわかってくれるはずだ。最悪、桃にだけでも伝わればいい。
「...よし」
私は、龍神社に向かうことにした。




