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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
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43.ダンス・ウィズ・ミー

「自分の意見を正当化する癖があるようだな」


姉はボクにそう言った。小さい頃の話だ。泥にまみれたランドセルを海の水で洗っていた時に、姉はまるでここに来るのがわかっていたようにやってきた。


ボクは姉が嫌いだった。でも、姉が好きだった。

今思えばただの反抗期だったのだろう。そんなことを考えていた気がする。


ボクは姉が笑って、どうした。ランドセルを海で洗ったりして、なんて茶化してきたものだから、腹が立って文句の一つでも行ってやろうと口を開こうとした。


だが、口から言葉が出る前に、まず目から涙がこぼれ堕ちた。

辛いこと、悲しいこと、全部を姉に話した。姉は笑顔で話を聞いてくれた。だが、ランドセルを汚した奴らを悪く言った瞬間、姉はそう言葉を放った。


一瞬何が起こっているかわからなかった。味方だと思っていた姉がいきなり敵に変わったからだ。


「どうして...?」


「単純だよ妹ちゃん。君は彼らの攻撃を必死に耐えたんだ。その行為は到底許されるべきじゃない」


「...!ボク、耐えたんだよ。どんなことをされても、それでも耐えたんだよ?」


「それがだめだと言っているんだ。いいかい妹ちゃん、どれだけ耐えても、どれだけ我慢しても、現状は変わらない。妹ちゃんは何も悪いことをしていない立派な子だ


でもね、社会は悪い人たちで成り立ってる。だから、妹ちゃんがやるべきは、悪い人たちをやっつけることだったんだ」


...何を言っているのか、わからなかった。今思い出しても、姉が危険思考を持っているようには感じていなかった。

姉はいつだって私を守ってくれていて、家族のために動いてくれる人で、この前も一緒にお皿洗いをして、私は嫌だったけど、姉は笑顔で。


そんな姉が、まるで別の生物に見えて、ボクは、逃げた。

ただ走って逃げて、逃げて、その後ろを姉は追いかけてこなかった。


家には帰れなくて、その日は公園でただ隠れていた。トンネルの遊具の中に隠れて、ただ見つからないように息をひそめた。


誰も、探しに来なかった。


次の日だ。私は海のにおいがするランドセルを背負って、学校に向かった。

学校に行くのは嫌だった。でも、それよりも今は姉に合うのが怖かった。

学校に行って、家に帰ったら姉が元に戻っているかもしれないと漠然と考えていた気がする。


学校に着くと、いつもはしない変なにおいが学校中を包み込んでいた。

学校はいつもより静かだ。3階にある教室まで歩いている最中も、誰ともすれ違わなかった。

教室に近づくにつれて、においは強くなる。不快感のあるにおい。小さいころのボクにはそれ以外分からなかった。


嫌な予感がする。


教室の前に立った時、まるでこのドアを開けたら日常に戻れないような。そんな予感がした。わくわくじゃない。ただそう思ったのだ。

冷や汗が止まらない。手がぶるぶると震えた。


それでも、なんとか教室のドアを開けた。



最初に目に映ったのは、ハエの大群だ。

ドアを開けた瞬間にハエの大群が一斉に外へ出た。ボクはそれを見た瞬間、放心状態になり、膝から崩れ落ちる。


だが、そんなボクの目にさらに異質な光景が映りだされた。


それは、ぐちゃぐちゃにされた赤い血みどろな生物だった。


黒く、赤い人間サイズの物体が、まるでウジのようにうねうねを動き回る。

山のように積まれたそれらの周りには、警察服やランドセル、さらには学生カバンなど、ありとあらゆるものがちりばめられていた。

元々教室にあったであろう机やいすはバラバラにされ、それら一つ一つに血がこびりついている。


その光景を見て嫌でも察した。この赤黒いウジたちは、元々は人間であったのだと。


巨大な赤黒いウジたちはまるで山のように積み重なり、天井をぶち破っていた。4階にあったであろう教室が見える。


赤黒いウジの山の上にだれか人影が座っていた。唯一壊れていない椅子に座りこみ、何か本を読んでいた。


視線に気が付いたのだろう。椅子に座っていた人影は本をしまい、こちらに手を振った。ボクは、何が何だかわからず。ただその光景を見ていた。


「やあ!妹ちゃん、昨日ぶり」


「おねえ、ちゃん?」


「そうだよ!見てよ、これ!綺麗でしょ?」


「な、んで」


「なんで?ほら、妹ちゃん。話をしたら逃げちゃったから、それなら実践した方がいいかなって。ほら、この子見て!妹ちゃんのランドセルを泥まみれにした女の子、今はうねうね動いてかわいいでしょ?」


姉の目が狂気に染まっていた。まるですべてがうまくいったような、そんな歓喜の目、それが怖くて、でも動けなくて、ただ恐怖に支配されていた。


「そして!妹ちゃんにいじわるしてた男の子!この子もおんなじ姿だ!」


「なんで、こんなこと」


「なんでって、ほら私って平等な社会にしたいからさ。でも、今って平等じゃないじゃない?どれだけ何かをしても、嫉妬や傲慢を抱いている人が邪魔をするし、怠惰な人間がやる気をそぐ、それで思ったの。


あ、人間って救いようがないなって。


だから、私自殺したの、この世界に生きるの嫌だったから、でも!私神様に助けてもらったんだ!それで言われたんだ!この世界にいる屑を全員殺せって!七つの大罪を抱く者たちは人間が存続していくうえで一番の邪魔ものだからって!それでこの力を貰ったんだ!」


「...」


「名前も決めたんだ!私の能力名は、ダンス・ウィズ・ミー、いい名前でしょ!」


ただ話を聞いていた。放心状態で、でも、こんなに話を聞いていたら少しずつ正気に戻っていく。まだまだ恐怖が心の奥底からやってくる。


歯が震え、体が震え、手が震えた、目から情報が入ってこなくなり、ただ姉だけが視界の中に存在する。


「それで、私もう妹ちゃんの傷つくところ見たくないんだ。だから妹ちゃんのこと作り直そうと思って」


その言葉を聞いた時、ボクの本能がただ逃げろと叫んだ。ボクは必死に手を動かし、腰が抜けた体でもなんとか逃げようともがく。


でも、ボクの手は震えていて、うまく後ろに下がれなくて。


「大丈夫だよ!二度と傷つくことはなくなるからね!」


そう言って、姉はボクの頭に手を置いた。

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