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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
3.シーファイターズ
41/57

41.私たちは、なぜ苦しみを分け合えないのだろうか。

「また、首になっちゃった」


私は、海を見ながらそんなことをぼやいた。


「海はいいな...私を拒絶しない」


「海は拒絶しなくても、仕事場には拒絶されたようだな。桃」


意地悪な声が聞こえ、私はむっとした顔をして振り返る。そこにいたのはいつものいじわるな男だった。


「...みなと」


「よっ、またここで感傷に浸っているのか。ほらよ、カフェオレ飲むだろ?」


「...いただく」


みなとからもらったカフェオレを飲む。仕事場で貰ったのだろう。冷えていたカフェオレが常温になったのか、温かかったのがぬるくなったのか。

そんな感じの温度だ。今の私もこんな感じなのかな。


「...で、今度は何をやらかした?」


「...赤ちゃんが泣き続けて困っている人がいて、赤ちゃんを泣き止ませようとしていろいろしてたら、会社に1時間近く遅刻した」


「それで首になったのか...人助けは結構だが、自分が不幸になったら意味がないだろ」


「それでも見捨てたくない。だって・・・」


「お前変わったよな。昔は元気ハツラツで、人助けだってあんまりしなかっただろ。敵を倒すことに夢中で、気に入らない奴はぶったおすようなめちゃくちゃな奴だったのに」


「わかるでしょ、私はちゃんと生きないといけない。そうじゃないと...」


ただ、海を見ていた。3年前からずっと後悔をしている。海の向こうに光希ちゃんはいるのだろうか。ずっと向こう側で待っていてくれているのだろうか。


「...下手なことは考えるなよ。お前の命は長尾がくれたものだ。それを無駄にするな」


「わかってる...」


「落ち着いたら、家に戻ってこい。大丈夫だ。お前には俺がついてる」


「...ありがとう」


ずっと光希を考えている。海の向こうにいる光希を思っている。

前を向いて歩いていいのだろうか。光希を助けられなかった私が幸せになる権利はあるのだろうか。


「お前が何を考えているか。当ててやる。また幸せになっていいのかって考えてるんだろ」


「...」


「あれから3年たった。16だった俺達も今や社会人、一部のメンツは酒が飲める年齢になった。お前はいつまでそこにとどまっているつもりだ」


「...でも」


「でもなんて使うな。俺達は犠牲者を出した。だが、この街を、世界を救った。幸せになっていい理由なんてそれで充分だろ」


「それでも自分が許せないよ。彼女を、私が好きだった人を見捨てて得た平和に私は寄生している。ずっとどうして生きているかわからないんだ」


「...お前の功績を何回でも行ってやる。お前は化け物たちに占拠されていた市役所を単独で奪い返し、どんな時でも先行し道を開いた。

この平和に寄生しているんじゃない。お前がこの平和を作ったんだ。

平和を作ったんだから、そこにいていい理由なんてそれだけで十分なんだよ」


「...みなとはどうしてそんなに私を励ましてくれるのさ」


「はぁ、ずっと言ってるだろ?お前が好きだからだよ」


「でも、三年前からずっと言ってるじゃん」


「3年間冷めることがなかったんだから仕方ないだろ」


...真顔でそんなこと言うなよ。


「...俺はお前が立ち直るまでずっとそばにいる。だから付き合ってもらうぞ。俺のわがままに」


「...馬鹿、ずっとわがままに付き合ってるのは。貴方の方でしょ」


私は立ち上がる。海に背を向けて、歩き始めた。


「ねえ、光希に会いに行こ?」


「お前...」


「...あなたの考えてることじゃない。会いに行きたいの光希に、だからさ、墓参りいこ。それで終わらせられる気がするの」


「...わかった。行こう。それで終わらせよう」


私たちは歩き出す。お墓がある場所へ、光希が力を授かった場所。


「墓に行ったら、人助けもほどほどにするようにしろよ?お前、向いていないんだから」


「...あなた、それ今言うの?だから私にしか好かれないんだよ」


ただ、歩き出す。今日見る青空は、最近見た中で一番綺麗に見えた。


_____________________

「あ...あ゛あ゛」


少女は、いや少女だったものは歩く。ただ街に向かって。

途中、警官車両が横を通り過ぎた。かと思ったら、サイレンを鳴らしながらこちらに近づいてくる。


「あ゛あ゛?」


彼女は、警官がどうしてこちらに来たのかわからなかった。少し考えた後、行方不明だった私を保護してくれるのかと考えた。


だが、警官が車両から降りた瞬間、銃弾を一発こちらに放った。


「...また来たのか」


警官たちは、まるで化け物を見る眼でこちらをみる。無線で誰かに報告をしながら、こちらを恐怖が入り混じった目で見つめる。


「あ゛あ゛、なあ゛でえ゛」


少女は声を出そうとした。だが、うまくでない。放つ声は、まるで化け物の鳴き声のようで、警官たちはまた銃弾を放った。


「あ゛あ゛」


弾丸は少女の足元に放たれる。そこで少女は気が付いた。自分の足がないことに、全身が腐り落ちていっていることに。


「ああ゛...あああ゛...あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


「?!逃げたぞ、追え!」


少女は逃げた。何もわからない現実から、警官たちから、ただひたすらに逃げた。恐怖に駆られながら、ただひたすらに。


まだ朝日は昇っている。その朝日はまるで少女を逃がさないために見つめる瞳のようであった。

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