4.彼が信念を持ち成長するまでに、誰を虐げて生きてきたのだろうか。
「ここが、射撃場か」
山の中にある射撃場は、案外小さい施設だった。
山小屋が立っていて、外に的のようなものが設置してある。
ある程度はセキュリティがしっかりしているものだと思ったが、田舎だからこんなものか。
「...おかしいわね」
「確かに銃を扱っているのにこのセキュリティのがばさは少しやばいな」
「状況がわかっていないようね、貴方は今、連続殺人犯としてニュースに出ててしかも逃走中の状態よ。しかもこの街に潜伏してるっていうのに、銃を置いている場所に誰もいないって変すぎるでしょ」
「まぁ、確かにな」
こやのいりぐち場か」
山の中にある射撃場は、案外小さい施設だった。
山小屋が立っていて、外に的のようなものが設置してある。
ある程度はセキュリティがしっかりしているものだと思ったが、田舎だからこんなものか。
「...おかしいわね」
「確かに銃を扱っているのにこのセキュリティのがばさは少しやばいな」
「状況がわかっていないようね、貴方は今、連続殺人犯としてニュースに出ててしかも逃走中の状態よ。しかもこの街に潜伏してるっていうのに、銃を置いている場所に誰もいないって変すぎるでしょ」
「まぁ、確かにな」
ただ、人の気配がしないのも確かだ。いや隠れていて小屋の中に入るのを待っているか、それとも小屋の中で待機している場合もある...だが、それがわかっていたとしても対策している時間はない。
「でも、入るしかないだろ」
「あなた、今の状況分かってる?ほぼほぼ生身2人よ、小屋の中に銃を構えた人間がいたら私たち一発で終わりよ」
「つっても対策立ててる時間ないんだし、入るしかないだろ。はいお邪魔します」
「あっ?!」
俺は、勢いよくドアを開ける。とその瞬間、何かの爆発音とともに自分の頬に何かがすり抜けた。俺は急いでナイフを構える。
「...外したか」
そこにいたのは、葬儀屋にいた刑事だった。銃を構え、俺のほうへと向けてくる。
「...警察ってのは命令がないと撃っちゃいけなかったんじゃなかったか?」
「これは俺の判断だ、上の奴らはまた社会的弱者の暴走だと思っているらしいが、お前のやったことは異質すぎる。死にたくなかったら手を頭の後ろで組んでひざまずけ」
...家具の配置は、俺と奴を挟んだところにショーケースが3つ、右側に作業台が一つ。奥にカウンターか。
「嫌だな、目の前に日本人がいるんだ。必ず殺す」
俺は、滑り込みショーケースの後ろへと隠れた。爆発音とともに俺の元居た場所に銃弾が飛んでいき、扉を貫通した。
ここからどうする。ショーケースの中には銃が一応は入っている。だが、ショーケースを開ける道具も時間もない。
「神居崎俊三、27歳、中学を卒業しすぐに白馬工場へ就職。だが、社員への嫌がらせや責任の押し付けによって解雇され、次は派遣会社に登録をする。」
「何を言っている」
「お前の経歴だ、お前は人間関係でトラブルを起こしやすいようだな。今話してみてわかったぞ。お前は一般人とは価値観がずれている。だから話がかみ合わないんだ」
「ああ、それがどうした」
「人を恨むのはお門違いと言っているんだ。お前は30人を殺した大犯罪者だ。世間的にはお前は悪でしかない。そしてお前は日本人を全員殺すとまで言った。俺の娘もお前に殺されるかもしれない」
「殺すさ、絶対。日本人は根絶しなければならない」
「それだ、その考えを正せと言っている。何故お前の妹がされたことを日本人に返そうとする。悪いことをされたからと言って、それを返していい理由にはならないんだ」
やめろ
「殺された人間にも家族がいた。お前はどれだけの人を悲しませたと思っている。お前のやっていることは妹のためにもなっていない的外れなことだ」
知ったような口をきくな。
「そいつらは死んだんだろう。お前が妹が死んだ後の一週間で全員殺した。それで終わりだ。復讐は終わっただろう。おとなしく捕まって死ね」
「...はは、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
怒りで頭が煮えくり返る。確かに俺はそいつらを妹を殺した奴らを殺して終わらせるつもりだった。だが、あいつらは
「妹が死んで、ニュースで沢山騒がれたな。最初はかわいそうだとか、許せないだとか言ってたさ。あいつら」
「何を言っている」
「俺は...俺たちは、明日食うものにも困っていてな。親からは何も食わせてもらえなかったから。近所の池でザリガニを釣ったり、草を食べて生活していたんだ。想像できるか?お前らに」
そう、これが俺達がいじめを受けた原因だ。価値観が違う?住んでいる世界が違うんだ。価値観が違くなるのは当たり前だ。
「なあ、俺たちは生きるために工夫していたんだ。こんなカスの田舎じゃ、共感さえされれば虐待も、薬も、性的暴力も合法になる。お前らに想像もできないだろうな。共感とかいうクソが罪を罪じゃなくするんだ。
逆に言えば、共感できないものは排除されるんだよ。どれだけ誠実に生きていても共感できなきゃ犯罪者以下の扱いをされるんだ。俺はこの街だけで外に出たらそんな奴ら居ないと思ってたんだ。だから妹とこの街を出ようとしてたんだ。だけど!!あいつが!!屑が!!!!!」
怒りが抑えられない。ずっとずっと我慢していた憤りが、ずっと耐えてきた苦しみが、ひたすらに体を動かす。
「妹が死んだとき、ある一人の生徒が妹のおかしいところを書き始めたよ。
虫を食べていた。臭かった。ただひたすらに不快だった。それを書いたんだ。そうしたら日本人は何と言ったと思う?それは仕方ないのだの、気持ち悪いのだの、死んで当然だの!!!あいつらが!!!あいつらが!!!
あいつら自分の悪いところを見ようともしない!!!日本人が!!!何が自分の醜さを見ろだ!!!許せるわけがない!!!!
あいつら!!!妹を二回も殺しやがったんだ!!!」
頭痛がする。頭を押さえる。刑事は俺のほうへと銃を向けている。何故だ?
何故奴らには向けない。奴らも殺したというのに、妹を殺したというのに。
「日本人は、自己正当化をする人間たちの国だ。共感されなきゃそいつが悪い。やつらは被害者に原因を求める。いつだって原因は加害者にしかないのに」
「お前もしているだろう。今」
...知っている。この言葉も感情も自分を正当化しているに過ぎない。だが、
それでも俺は、妹を二度も殺した日本人が許せない。
「必ず、日本人を滅亡させる。まずはお前からだ」
両手で顔を押さえ、指の隙間から奴を見る。その時だった。
音がした。何かがうごめく音が、足元に霧が充満する。いや違う。
黒い、黒い霧だ。まるで何ががやってくるようにまるで何かが近づいてくるように、霧は俺の後ろに集まり形を成していく。
霧が完全に固まったとき、そこに現れたのは手だった。宙に浮く巨大な両手には、片方に刀が握られていた。
「なっ、なんだ」
刑事が一歩後ずさる。
「...ネクサス、斬れ」
俺は、なぜか巨大な手をネクサスと呼び、そしてそう命令していた。
戦いが始まる。




