38.間話3-生きる理由も死ぬ理由も存在しない。だが、人を殺す理由は自分で決めることができる。
「…ここは」
気がつけば、俺は星空を見ていた。プラネタリウムのように綺麗に見える星空は、ここを現実ではないと説明してくれているようだ。
「…こんにちは」
声をした方向を見ると、占い師のような格好をしているお婆さんから話しかけられる。
お婆さんは椅子に座っており、テーブルにタロットカードを並べている。またおばあさんの向かい側にはもう一つ椅子が設置してあった。
お婆さんは俺に座るようジェスチャーをする。俺は何故かわからないが椅子に座った。
「…ほう、おまえの運命はまるでダイアモンドのようだね」
「何言ってるんだ」
「綺麗であり、高価そうに見えて、そうなるようにコントロールをされている。運命に、コントロールされている」
「…どういうことだ」
「昔の世は石炭が主な燃料源だった。石炭のおかげで電車が動き、石炭で様々なものが動いていた。
人は昔、石炭をこう言ったんだよ。ブラックダイアモンドと、だが、時代と共に石炭は石油に置き換えられ今では価値は無くなった。ダイアモンドも、人工のダイアモンドが出てから価値がどんどん下がっているようだよ。悲しいわね」
「わからないな、結局何が言いたいんだ」
「あたしはダイアモンドと言う鉱石は人間の欲を象徴した鉱石だと思っている。一見綺麗に見え、様々な人に持ち上げられ、そして価値がなくなっていく、だが、ダイアモンド自体は変わらず存在しているだけの鉱石でしかない。人間に振り回され、価値を測られ、勝手にいらないと言われる。まさにお前のようだ」
「…話はそれだけか?」
「あたしがするのは占い、占うに決まっているだろう?神に魅入られたお前の運命を、神によって曲げられたお前の運命を占おう」
「タロットカードで占うだけか?ならなんでこんな場所を用意した」
「何を言っているんだ。お前が来たんだよ。お前がこの場に来たんだ。私はお前の運命を占うだけの存在だ。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。占いとはそう言うもんさ。さあ、一枚カードを引くといい」
俺はお婆さんに言われた通り、カードを一枚履いた。そこに書いてあったのは鎧を着た骸骨のカード、死の刻印が記されたカードだ。
「…Deathのカード、全ての終わりと始まりのカードかい。お前は全てが死に、今始まったんだ。第二の人生がね」
「そんなことはとうにわかってる」
「いいやわかってないね。あんたの運命は無だったんだ。人はいう全ての人間が努力すれば幸せを高めると、あたしはね。そんな戯言を言った人間を片っ端から殺してやったよ。
この世には、タロットカードの絵柄の運命を持った人間だけじゃない。必ずカードを引けず苦しい運命だけを見て死んでいく人間もいる。
あたしはその事実を知らない人間と、それを知りながら踏みつける人間を殺して回った。
その結果、あたしは殺されて今はここにいるけどね」
「…結局お前は何がしたんだ。俺は何をお前から学べばいい」
「まあ聞きなよ。あたしは常人嫌いだ。お前とおんなじだよ。奴らは誰かを傷つけて生きているくせに、加害者である自覚を持たない。クズの集まりさ、あたしを倒した奴はそこら辺は弁えていた。嫌いな人間を省くことはしなかったし、あたしとも向き合ってくれた。だが、そいつはカードを持っていない。悲劇に向かっているんだよ。
あたしを倒そうと苦悩した人間を、あたしは救ってやりたいのさ。だからこれは今ここに辿り着いたお前にお願いがしたい」
「いきなり何かと言われれば、俺は妹を嘲笑った日本人を皆殺しにするだけだ。それ以外に行動はしない」
「…男の名前は荻咲 未城。あんたが向かっている長万部にいる。助けてやってくれ」
「おい!いい加減に」
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「しろ!」
俺は勢いよくソファから起き上がる。どうやら眠っていたようだ。何か不快な夢を見ていた気がする。
「神居崎さん!おはようございます!」
エプロンをした足李が声をかけてきて、急いでソファから起き上がる。
今日の朝ごはんはベーコンエッグとホットトーストのようだ。こいつが料理できて助かった。
「…さて、今日も探索に行くか」
この町、蘭越町にきてから3日が経とうとしていた。




