34.さあ、最悪な物語を始めよう
「死ぬかと思った」
「死んでなくてよかったな」
沼から彼方を救出し、俺は体育館の入り口を確認する。黒い沼がゆっくりと出てきており、もう体育館に入ることはできなさそうだ。
「今、火月と足李が最後の挨拶中だ。それが終わったらさっさと退避するぞ」
「…?火月はわかるけど、足李って誰?祟り神の人?」
「おーそうだ、その町にボコボコにされてもこの町を守ろうとした祟り神さんだ」
「それは興味ないけど、2人ってどんな関係なの?」
「一言で言うと、集団のゴミみたいないじめのせいで引き裂かれたインキャカップルだな。よくある話だ、気にすんな」
俺は紅を地上から探す。そいつは10m離れた場所に奴はいた。俺はハンドガンを撃てる状態にし、そいつに近づく。
「よお」
「…だからオレはこいつを相手にしたくなかったんだ」
紅の状態は両足が沼にハマり、動けない状態で、たまに体全体が痙攣し苦い顔をする。さて、こいつが訓練を受けているなら持ち前の技術さえあれば沼から抜け出せるはずだ。
さては、こいつ足を骨折したな。
あり得ない話ではない。こいつは彼方を助けるために彼方より早い速度で落下したんだ。沼がクッションになったとしても怪我してもおかしくない。
「さあ、今からお前を殺すが何か言い残すことはあるか?」
「お前はそんなこと言うほど優しくないだろ。だが、そうだな。お前はなんでそんなに人間に対して無感情になれる?オレだって最初の人殺しは答えて一週間はねこんた寝込んだってのに、お前はまるでそんなのなんでもないみたいな顔をしている。それはなんでだ?」
「それが最後の遺言か?つまらない奴だなお前は」
「答える気はなしかよ」
「…お前は沢山の人にパーティを開いてもらったことはあるか?」
「ないな、それがどうした?」
「世の中にはパーティに誘われる側の人間と誘われない側の人間がいる。俺とお前は後者だ。さて、問題だ。悲惨な心になっていくのはどっちだと思う?」
「…」
「お前は親に愛されていたんだろうな。だから人は嫌いでもそいつに感情移入して一週間は寝込んだ。だが、俺にはそんな奴は1人しかいなかった。妹と2人だけでずっといた。その妹は世間の理不尽によって死んだ」
「…」
「クラスメイトによる陰湿ないじめ、教師による黙認、親による虐待、居場所がない孤独が妹を殺した。さらにそんな妹がニュースに載れば世間は妹の頭のおかしさを聞いて、死んで当然と言いやがった。さて、お前に質問だ。お前の妹がおんなじ目にあった時、お前はそいつらを許せるか?」
「…それでもここにいる奴らは何も関係ないだろ」
「だから言ってるだろ。足李みたいな奴を迫害する奴等はどこにいっても人を迫害する。
お前らに自覚はないんだろうな。
お前らはこいつ嫌いだなと思った奴を無視する努力をする。それが1番楽だからら
お前らはそいつの嫌いな場所を探して友達に共有するんだ。共感して欲しいから
そうやってそいつは変わる機会すら与えられずに迫害されて死ぬ。そいつらは嫌いな奴がいると言う事実を我慢することができないんだ。
何故わからない。嫌いという感情はお前らの中の醜さだと、お前らが1人で向き合わないといけないものだと。
なんて怠惰だ。自分と向き合うことから逃げ続ける奴らが他者を迫害する資格はない。だから殺す。妹の復讐のため、そんな考えの日本人を皆殺しにする。それだけだ」
「お前も逃げてるだろうが、人殺しが」
「そうだ、俺は人殺しだ。俺は殺される覚悟も、否定される覚悟もできてるんだよ。さて、答えたぞ。死ねるな」
俺は銃器を額に銃口を向けて、引き金をひいた。
「…ダンス、デカダンス!オレを救え!」
そう言った瞬間、足元が爆発を起こす。俺は防御体制をとった。煙があたりに充満する。
俺は急いでやつを探した。奴はすぐに見つかった。奴は空を飛んでいた。というか吹っ飛ばされていた。
「どうする、追いかける?」
「いや、奴がいた場所を見てみろ」
追撃を提案してきた彼方の提案を拒否し、俺は紅がいた場所を見るように提案する。
彼方が足元を見ると、奴の半分が残っていることを確認した。
「足、ふっとんでるね」
「もう戦士としては戦場には出てこれない。ここまでの痛手を与えたなら上出来だ」
俺は飛んでいる紅の方へと視線を向けた。爆発は火月にも聞こえていたらしく。火月は空を飛び紅を抱えて飛んでいった。
「初恋の相手は殺せないか」
「火月、どうなるんだろうね」
「成長していくんだろ。神はどんなクズにも成長する機会はくださるからな。それを没収するのは人間だけだ」
火月に逃げ出されたのを確認すると、その間に足李と熊谷が降りてきた。
「さて、どうする?このままだと絶対紅の組織の奴らがくるぞ」
「さっさと逃げましょう。ここにいるのは危険だわ」
「美月がどこかに隠されてると思うんですけど、殺さないんですか?」
「時間がないわ。ワープされるところを見つかると遠くも探される。さっさと蘭越町にいくわよ」
俺たちの周りに白い霧が充満する。
「熊谷」
「何?」
「俺はこの大惨事を引き起こした。犠牲者はどれくらいだと思う」
「軽く千人はいるでしょうね。ニセコ中を飲み込んでいるんだから」
「ああ、俺は決めた。この大惨事を他の町でも起こす。全ての街を破壊し、日本人を皆殺しにする。お前はどうする?」
「付き合うわよ。結局私たちはこの事件の共犯者、離れることはできないだろうからね」
「僕も一緒に行きますよ。僕たちは結局大犯罪者なんですから、何人殺しても一緒です」
「わたしも、自由が保障されるなら」
…こいつらは仲間じゃない。ただの利害関係の一致だ。俺たちはクズだ。大量の人を殺したテロ犯。
だけど、これは俺たちの物語だ。悲しいことに始まってしまったなら付き合っていくしかない。
「さっさといくわよ」
白い霧が四人を包み込んだ。
さあ、最悪な物語を始めよう。




