3.未来には希望などなく、ただひたすらに辛い現実が続いていく。
「それで、俺の能力とやらはどうやって出すんだ」
俺は下水道から出るためにマンホールをこじ開けながら、熊谷彩に質問する。
「さあ」
「さあ、ってお前にもわからないのか」
「だってここはゲームじゃないのよ。あなたが生まれたとき、歩き方を誰かにレクチャーされた?現実では誰も動き方なんて教えてくれないのよ」
俺は少しため息をつく、こいつに質問したのが間違いだった。
マンホールを横に移動させ、足に力を込め外に脱出する。辺りは夕暮れ時、夕日が落ちかけていた。周りを見渡すと目立った建物などはなく、ただ森が広がる道路、どうやらここは街と街をつなぐ国道のようだ。
俺は下水道に残っていた熊谷彩に手を差し伸べる。
「ただ、これだけは言える。貴方の能力は縁切りの神様から授かったもの」
熊谷彩は俺の手を拒み、自分で下水道を出た。
「縁切りだと?どういうことだ」
「私たちが立っているこの土地、北海道は結構たくさんの信仰が芽吹いた場所なの、神居振興は有名なところね」
神居振興、野生動物を神様と崇め、信仰する宗教だったか。
「だけどね、大本はすべて同じ、天照大御神から派生した信仰なの、神道と言われる信仰形態が元になっているわ」
「確か、経典や教えなどはなく、ただ神様を信じて生きていく信仰形態だったな」
「ええ、日本人はほとんどが神道を歩んでいるといっても過言ではないわ。神社に参拝したりするのもそこから来ている。でも、今の日本人は都合のいい時に神様を頼りすぎたのよ。それで」
「神道で信仰されていた神様が怒ったってことか」
「ええ、でも神道っていうならばすべてのものに神様が宿るってことなのよ。縁切りの神様にも複数いる。貴方がどの神様から求人を受け取ったかなんて、特定不能なの。ただ一つ、縁切りの神様から求人が来たってことは分かっているわ」
「...つまり俺の能力は『縁を切る能力』であり、どの縁を切るか、どうやって切るかはわからないと」
「まっそういうことね」
...こいつの口車に乗せられて求人とやらを受け取ったが、本当にこの能力で軍や警察官に引けを取らないくらいの力が手に入るのか?
「...お前の能力はどこで、どうやって、どう使っているんだ」
「詳しくは今は教えられないけど簡易的なら、神居峠で、一度死んで、体から出す形で使っているわ」
「待て待て、一度死んでだと?体から出すってわけがわからないぞ」
「簡易的にって言ったでしょ。今は時間がないの。とりあえずこの街を脱出して、体を休めるところに行くのが先。状況分かってる?」
確かに、そうだ。今の状況は警察官に追われている状態。この町は田舎町だからまだ警察が来るのが遅いが、近くの大きな街には検問が引かれているだろう。ここら辺に来るのも時間の問題だ。
「私たちは今の今まで下水道にいた。見つからないためにワープをしたっていうのもあるけど、一番は警察犬に嗅ぎつけらないため。といってもこれも効果があるかはわからないけどね」
「町の近くまで行って、お前のワープ能力で街に潜伏するか?」
「そうするつもりだけど、私の能力って回数制限付きなの。あと2回程度しか使えない。正直、街に近づくまでに警察に見つからないとは限らない。だからまずはワープ機能を回復させたい」
「状況は分かった。それでお前のワープ機能を回復させるにはどうすればいいんだ」
「神社のお守りを飲み込めば一回使えるようになるわ」
「...は?」
「お守りを食えば一つに付き一回回復する。」
...まじかよ。だが、こんなに真剣な顔で言っているということは、そうなのだろう。神様がぶちぎれているって話だったのに、神様を食って回復するとは、原理がわからないが。
「...はぁ、それでどこに行くんだ?お守りを食いに」
「この街は田舎町だから、小さな神社はあっても大きな神社はないわ。一つを除いて、街でお祭りを毎年やっている神社が一つだけある。まずはそこに向かうわ」
「つっても市街地の近くだよな。そっちには警察官も結構いるんじゃないか」
「だからここにワープした。この近くには射撃場があるわ。そこには猟銃が売られている。それを奪いに行く」
「また突拍子もないな、つまりあれか?俺たちは射撃場に侵入し銃を強奪、その後神社にテレポート、お守りを強奪してまたほかの場所にテレポートする。であってるか?」
「大体あってるわ。といっても、失敗したら終わりよ。射撃場に人がいて撃ち殺されたら終わり、神社にワープした先に警察官がいても終わり、かなりのギャンブルだけど...ってどこ行くの」
射撃場のほうへと歩く、幸い、ここは地元だ。地図は頭に入っている。
「行くんだろ。さっさと行くぞ」
俺はそう熊谷に言い、歩みを進める。熊谷は少し慌てた様子で俺の後ろをついていく。
「あなた、わかってるの?一歩間違えたら死ぬのよ。それに罪のない人を殺すことにもなるわ。」
「あ?確かにそいつには罪がないのかもな、でもな」
俺はこぶしを握り締める。罪のない人?ゆっくり生きている人?
違うな、そいつらが笑顔で過ごすのに、犠牲になったやつがいる。除外されたやつがいる。日本人は幸せになるために、他人の幸せを平気で踏みにじる。だから俺は
「そいつらは日本人だ、ならたとえ罪がなかろうと殺すだけだ」
そう俺は自分で決めたのだ。日本人は絶対に許してはいけない。日本人は必ず皆殺しにする。
「あなた、イカれていてイカしているわ」
俺たちは射撃場へと歩みはじめた。




