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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
2.ニセコシスターズ
26/57

26.君のすべてを否定して、僕は幸せを手に入れる。

「武器の無限生成か、強いな」


ライブカメラを見ながら、俺達は息を整える。

魔法少女の能力が判明した。俺のように名前を呼べば発動するタイプのようだ。

水から無限の剣を作り出すとは。


「あの花びらが、火月の能力...」


少年がそんなことを口にした。あの花びら、姿こそ見えなかったがあの火月の能力だろう。遠距離でも見方を強化可能な能力とは、かなり厄介だ。


「こんな感じでやってきたんだな。奴らの戦闘スタイルは、まず美月が最大火力をぶつけ、祟り神に大穴を開ける。その後、火月が祟り神本体に攻撃か。そして彼方が情報の処理。完璧なチームだな一点を除いて」


「...一点?」


熊谷が素っ頓狂な声を上げる。


「お前らはRPGやったことあるか?」


「私はドラクエくらいね」


「僕は結構やってます。ペルソナとか」


「だな、ならピンをくるだろ。あいつらに足りないのがあるんだ」


二人がはてなを浮かべる。少し考えたあと、少年が俺に言った。


「...ヒーラーですか?」


「そう、正解だ。あいつらは戦闘と情報処理に特化しすぎていて、民間人への被害拡大をふせげないんだ。民間人が一人でも負傷すれば終わり、完璧なチームワークを持ち合わせてはいるが、完璧なチームではないってことだな」


「でも、あの黄色い子は今回能力使ってなかったですよね?忘れ神持ちなのは確定としてほかに能力を持っている可能性はないんですか?」


「それはないわね。神の器官は人間は一つしか持つことができないの。ほかの能力を持つってなったら今ある能力を捨てるか変異させるしかない」


「そういうことらしい。つまり俺達のやることは変わらないってことだ。まあ、少し工夫をするが」


俺は街の地図を広げ。そして街の真ん中にある体育館に印をつける。


「明日、ここは使われているか?」


「...いえ、ここはあまり、放課後なら多分人が来ると思いますが」


「なら好都合、ここで俺とお前の能力を使って悪だくみをするぞ」


俺は二人に説明をし始めた。


_____________________


「という作戦だ」


俺が説明をし終わると、二人が俺をにらみつけてくる。


「よくそんな外道な作戦思いつくわね。貴方性格悪いでしょ」


「俺は性格悪いぞ。お前と同じで」


「...ですが、この作戦がうまくいけば。街のインフラ自体に大ダメージを与えることができます」


「そういうことだ。よし、行くぞ...ってなんだっけか名前」


「...えぇ!?僕ですか。僕名乗ってませんでしたか!?」


「そういえば私も知らない。何て名前なの?」


「...僕は足李です。よろしくお願いしますね」


「よし、足李。カラスの巣に祟り仕掛けに行くぞ」


俺達は地図を頼りに近くに向かった。時刻は0時をちょうど回ったところだった。


_____________________


昼時、少女がコーヒーを飲んでいると。ある客が入ってきた。少女が待っていた人物だ。


「...よお」


今にも逃げ出したくなるほどの威圧が体を包んだ。


「こんにちはー神居崎さん」


少女はコーヒーを置き、挨拶をする。神居崎はそれを無視し、椅子に座った。


「見てくれたライブカメラ」


「見た。二人の能力を見ることができたな」


「これでわたしのこと信じてくれる?」


「それはこれから次第だ。だが、次の指示が終わったらお前のことを信用してやる」


神居崎は彼方の飲んでいたコーヒーを奪い、それを飲み干した。


「...女の子の飲みかけが飲みたかったの?」


「お前と一緒に食事をすること自体がリスクなんだ。毒が仕込んであるかもしれないこれから出されるものよりお前の飲んでいる奴を飲む方が合理的だ」


神居崎は、少し間を置くと、彼方のほうを向く。


「本当に協力する気があるんだな?」


「うん、協力するよ。美月を殺してくれるなら」


「ならいい。これから街が騒がしくなる。その時が来たらお前は魔法少女になって仲間を後ろから攻撃しろ」


「町が騒がしくなるって?」


「今にわかる。じゃ、せいぜい役に立てよ」


言いたいことだけを言って神居崎は店を後にした。店に残された少女は少し不機嫌そうな顔をしながら注文を取りなおす。


数十分後、 ケーキとカフェオレを楽しんでいた少女だが、いきなり地面が大きく揺れる。地震かと思ったが違う。これは何かが爆発した音だ。


急いでお金を置いて店を後にする。そこに出たとき、少女は目を疑った。


「...黒い、沼?」


黒いどろどろのヘドロの沼が街全体を覆いつくしていた。


_____________________


体育館で少年は準備をしていた。とらえてきた祟り神候補たちが体育館を暴れまわっている。


「いよいよ、始まるんですね」


少年がそういうと、従業員の死体を処理していた熊谷が少年のほうへと話しかけた。


「貴方、本当にいいの?このまま行ったら貴方この街を滅ぼすことになるわよ?」


熊谷がそういうと、少年は髪を上げる。


「いいんですよ。僕はこの街が嫌いだ」


「でも、貴方の好きな人はこの街を必死に守ろうとしてる」


「...」


「見てればわかるわよ。貴方、あの子のこと好きだったんでしょう?だから必死に生きてきた。あの子の隣に立てる自分でいたかったんでしょう?なら、まだ間に合うわよ?ここから逃げ出して、罪を償えば」


「...始まりはそうでしたよ。でも、僕は自分の幸せすらつかめなかった。どれだけあがこうとも、どれだけ努力しようとも、何も変わらなかった。だから、僕の今の願いは違うんです」


「...準備はできてるみたいだな」


体育館に神居崎が入ってきた。引きこもり生活で長くなった髪を結び、少年は前を向く。


「熊谷さん、僕は幸せになりたい。トラウマを乗り越え、自分に自信を持ちたい。そのために僕に悪意を向ける者たちは邪魔なんです」


神居崎は能力を出す。大きな刀を持った腕は獲物をまだかまだかと待ちわびているようだ。


「だから僕は、君のすべてを否定して、幸せを手に入れる」


少年が手を挙げる。黒い霧が獣たちを体育館全体を包んでいく。


「...祟れ、デッドウェイト」


少年がそういうと、獣たちが苦しみだす。獣たちはたちまちどれもが黒い祟りを身にまとっていく。体育館が壊れるほどに大きくなったそれらを


「...斬れ、ネクサス」


神居崎がすべて断ち切った。


戦争が始まる。

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