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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
2.ニセコシスターズ
21/57

21.腐敗した世を正すには、上のものを全員殺すしか選択肢はない。

男は果然としていた。目の前の少女が言ったことがあまりにも気持ち悪かったからだ。


男はただ日本人を憎み、皆殺しにしようと考え行動している。

だが、そんな恐ろしいことを考え実行する前にも人生はあった。

男は挫折をし続けてきた、社会で幸福だったことなど一度たりともなかった。

だが、社会に出たということは。この男にも常識が少しはあるということだ。

人の普通もわかるし、人の考えも理解できる。だからこそ。


常識から外れすぎた少女を見て、男は嫌な顔を浮かべた。


「気持ち悪いからやめろ」


「なんで?わたし結構かわいいと思うけど」


「俺はな、体をすぐ売ろうとする人間が大っ嫌いなんだ。お前は何もわかっちゃいない。体を売るしか選択肢がなかったならいいんだ。だが、お前は出会ったばかりの俺に話すらまともにしたことがない俺に、そんな提案をした。

日常的にそんなことを言ってるのか?違うなら言うのをやめろ。不愉快だ」


「やっぱり怒るんだね。そしてあなたはわたしから目を離した」


「あ?」


「ごめん、さっき言ったことは嘘。貴方の視線を見たかった。普通の人はそんなことを言ったら、胸や手、唇に目線が行くの。そっちに行く人間は信用できない。意思を強く持てないってことだから。でも、貴方は違う。

まず私から目線を外し拒絶してから、顔だけを見て説得に入った。

それは、本当に人を思っていないとできない行動」


「...お前俺を試しやがったのか」


コーヒーが水面を作りだす。少女はそれをちらりと見ると、すぐに男に視線を戻す。


「そう、わたしの目的を言える人間か確かめたかった」


「初対面の人間を試すなんて、失礼だと思わないのか」


「わたしの要求は本当、貴方と試して変わるのは協力関係かわたしの駒としてうまく利用するか」


「...俺はな、そこまで交渉ごとは得意じゃない。俺が働いていたのは工場だったし、そもそも学校でもはぐれものだった。だから一つだけ言っておく

俺の能力は、もう発動している」


その言葉を聞き、少女の額に汗が出てくる。少女は焦っていた。

男の能力の詳細がわからなかったからだ。


(あの能力、狐を元に戻したのは彼で間違いないはず。でもそういうことができる能力ってだけで詳細は分からない状態。

もしも何かを断ち切る能力であったならば、私の命なんていつでも奪えるってことを暗に伝えている?)


「ここからは慎重に言葉を選べよ。さて、質問だ。お前の目的はなんだ」


少女は後ろを振り返ろうとした。だが、その瞬間。男は足を移動させテーブルを少し揺らした。衝撃で食器同士がぶつかり鈍い音が響く。


少女は男の顔を見る。ただ少女を見つめていた。にらみつけ、光のない目で、まるで人間に向ける目じゃない。悪魔に向ける目をこちらに向けていた。


瞬間、首にヒヤリと何かがぶつかる。氷ではない。皮膚にくっつく感触がなかった。鉄だ。鉄が一瞬接触した。


「...後ろを振り返ってみてもいいが、おすすめはしない。この平和なカフェの雰囲気がガラッと変わっちまう」


男はただ少女を見つめていた。ずっと目だけを、少女は冷や汗をかきながらを冷静に手の震えを押さえ、強気に男の目を見た。


「私の目的は、言ったでしょ、美月を殺すこと。殺して魔法少女を解体させて、この町の社会の完全破壊。だから、今祟り神が消えるのはまずい」


「だから俺に協力をしてほしいと」


男は冷静にコーヒーを飲む。またも嚥下せず、少し口に含み、目のつぶって少し経ってから飲み干した。


「舐めているみたいだな。餓鬼、なんで俺がこの街に来たのかわかるか?

潜伏のためだ。潜伏するため、だからここの町の人は殺していない。

だがな、状況が変わったんだよ。この街は明日には完全に破壊できる。だからお前も安心して死ね」


少女の首辻に何かが当たる。それは先ほどの冷たい鉄であった。

だが、少女はさすがに気が付いた。その冷たい鉄は刃の形をしていると。


「美月は、すぐに機関と連絡を取れる。騒ぎが大きくなったら機関がこの街に来てしまう!それはあなたにも不都合なことのはず」


「そうだな、だがそれでもやる。それが俺だ」


「違う!失敗に終わるって言ってるの!私と組めばその計画はもっと強固になる!」


「違うな。それが失敗しようが成功しようが危害を加えることが重要なんだよ。それが俺があいつと交わした約束だからな」


「...あなたの目的は何?」


「いうわけないだろ。お前は俺に大本の目的を離さなかった。お前が言っていたのは結果に至るまでの目的だ。それで何を実現したいのかを話そうとしない。社会を壊してどうしたいのか。何をしたいのか。それを言わない人間に話してやる義理はない」


男が席を立ちあがる。テーブルには2千円が置かれた。


「ここはおごってやる。だから俺のことは忘れることだな」


「待って!」


少女は席を立ちあがる。男は足を止めた。


「...私の目的は生きること。生きて生を謳歌すること。だけど、この国では生きていくためにお金がかかる。私は散歩をするのが好き、鳥といるのが好き。でも、人間といるのは嫌いなの」


「...何がいいたい」


「私の目的は、私の心を殺そうとする資本主義という考えの完全破壊、そのために貴方たちの力を借りたい」


「話にならないな。俺に何のメリットがある」


「...忘れ神、それが私の能力。トラウマや苦痛の記憶を削除することができる」


男は、顔を変えない。少女は話し続ける。


「貴方の目的を教えて、ここで魔法少女を殺してくれるなら、貴方の目的のためにこの力を使うって約束する。だから」


「俺の目的は、日本人を皆殺しにすることだ」


少女の首から冷たい感覚が消える。少女は男の目を見続けた。


「俺は悪魔だ。人間に対して情はないし、殺そうと思えば殺す。意味わかるか?悪魔に交渉してるんだよ。対価は覚悟してるな?」


「かまわない。美月を殺せるなら」


「なら、信頼を見せろ。人間信頼がなければ交渉など成立しない。まずはお前が信頼を見せるんだ」


「...このお店」


少女は、スマホをポケットから取り出し、男に見せた。

スマホに映ったのはこの店と同じ名前のYOUTUBEのチャンネルであった。

少女はスワイプし、ライブの位置までウィンドウを移動させるそこには。


「ライブカメラ?」


この店を上から見たであろう。ライブカメラが映っていた。


「...配信を見ていて、ここに祟り神を配置してくれたなら、魔法少女たちをこの配信に写す。このライブカメラに映るように戦闘を行う」


少女の顔を、男は数秒見つめる。男は目線を離し、扉のほうへと歩みを進めた。


「わかった。見ておいてやる。だから、へまをするなよ」


男はそれだけ言って店の外へと出て行った。

数秒たち、少女は緊張がほどけると同時に膝から崩れ落ちた。

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