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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
2.ニセコシスターズ
14/57

14.弱者のやさしさなど、常人の食い物にされる餌に過ぎない。

「...空がきれいだ」


上履きを乾かしながら、僕は空を見上げる。きれいな空だ。

この空の下には、醜い人間がたくさんいる。この世界は普通に縛られている。

いや、人か。人が縛られているんだ。社会だの資本主義だのに、

何故この地球の土地は一つ残らず国のものなのだろうか。なぜ人のものになってしまったのだろうか。この日本も少し前まで自然のものだったのに。


「まーた難しい顔してるね。お兄ちゃん」


妹が僕の上から見下ろしてくる。僕は妹のほっぺを思いっきりつかんでやった。


「いや、もうここにいたくないなぁって」


「私も!どこか遠くに行きたいよ」


疲れて空を見る。いつの間にか、乾かしている上履きが二つになっている。


「僕たちって誰かの幸せの犠牲にしかなれないのかなぁ」


「んー?どういうこと?お兄ちゃん」


「だって、どれだけ僕たちが頑張ったところで。誰も僕たちなんて見てくれないし、それを笑いものにしてほかの奴らが幸せになっていくだけじゃん。

そんな人のためになんで僕たちが生きなくちゃいけないのさ」


「んー!よくわかんない!」


木の隙間から太陽が差し込む。川が、きらびやかに光っている。

こんな世界は美しいのに、なんで社会だけがこんなに醜いのだろうか。


「でも、私はお兄ちゃんがいるだけで幸せだよ!こうやって魚を取ってきてくれるし!一緒にご飯を食べてくれる!そんなお兄ちゃんが大好きだから!」


「...ありがとう」


妹の言葉に、僕は泣きそうになった。けど我慢する。男は簡単に泣いちゃいけないから。


俺は、妹がいて幸せだったんだ。


「気持ち悪い」


それを


「さっさと消えろよ」


あいつらが全部


「貴方って本当に要らない子よね」


許さない。


絶対に全員殺してやる。


_____________________


太陽の光が目に差し込んでくる。今日も最悪で最低な夢を見た気がする。


「おはよう、神居崎」


ソファの横から、熊谷が俺に声をかける。俺は全力で嫌な顔をしてから、ソファから起き上がった。


「寝てるときは泣きそうな顔だったのに、今は全力で嫌な顔をするのね」


「うるせぇ、さっさと今日の予定を教えろ」


俺は、銃を背負おうとするがその瞬間に熊谷に止められ、熊のぬいぐるみのストラップを渡される。


「なんだこれ」


「位置情報が見れるやつ」


「なんでこんなもん持ってないといけない」


「予定変更よ、ニセコ町を調べておきたい。でも私は指名手配されてて動けない。だからあなたに行ってもらうの」


また理由も答えずにこいつは


「あの紅とかいう化物にあったらどうすんだ。一瞬でハチの巣だぞ」


「大丈夫、あいつのことだからもうあなたのことは追わない。それよりもニセコシスターズって言われている人たちを調べてほしい」


「...はぁ、わかったよ。それでどうやって調べる。聞き込みか?」


「とりあえずそれで、この街には3日間滞在する予定だから、その期間で情報を集めて頂戴。3日経ったらワープして蘭越町にいくわ」


「...なぜ、ニセコシスターズを調べようとする。それも予定を変更してまで」


俺は、銃に手をかける。それを見た熊谷は俺のほうへと正面へ向きなおし、俺の目を見る。


「単純よ、今街を離れるのは危険だから。あいつがいた組織には私も所属していたの、だから知ってる。あいつらがどれだけ残忍かを。

幸いニセコ町は観光地で人が多い、潜伏するのにはうってつけってわけ」


「このGPSはなんだ」


「貴方に何かあったとき、もしくは私に何かあったとき。私はワープ能力でそこに行ける。二人で合流して情報交換をしましょ」


「携帯電話でいいんじゃないのか」


「携帯電話なんて個人情報の塊でしょ。さっさと傍受されて終わり、さすがに使うわけにいかない」


「...」


まあ、筋は通っているか。だが、こいつは真実を言うが、隠し事は多い。


「...ニセコシスターズを調べろって言った理由についてまだ話していない。教えろ」


「...あなたにまだ教えていない。神の器官を出した時の霧の色が知りたいから」


「なんだそれは」


「霧の色は人の人生、定められた運命を表している。白に近づくほど栄光を、黒に近づくほど悲劇の運命をたどる。神の器官はそれに抗うための力でもある」


「...それがどうした」


「黒に近づくほど私たちの仲間になる確率が高くなる。ただそれだけ」


...なるほど、この二人で移動するにもさすがに限界がある。熊谷はそれを考えて紅を逃がしたのか。いつか仲間になるかもしれない。と


「わかった。街にはどう出ればいい」


「川を渡ってまっすぐ行ったら街があるわ。そこでまず情報収集をお願い、あと食材も買ってきてくれると嬉しいわ。お金は荷物の中に入れといたから」


「...わかった」


正直、あの一件からこいつのことが信じられない。

だが、信じる信じない以前に。今の状況がどうしようもないのは事実だ。

ならば、信じる必要などない。こいつも言っていたではないか。利用すればいいと。


「いってきます」


俺は、そう言って隠れ家を後にした。

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