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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
2.ニセコシスターズ
13/57

13.なぜ、私たちは虐げられたのに変わることを強要されている?

「いってて...なんだあいつは」


胸の切り傷をタオルで押さえながら、少女の姿をした殺人鬼は立ち上がった。

落としてしまった銃を持ち上げ、銃の調子を確認する。


「やっぱり問題ねぇんだよな。あいつの能力か」


殺人鬼は銃の弾を入れ替えながら、部屋の中へと入る。

部屋の中は、サブマシンガンによって穴だらけになっていた。

殺人鬼は周りを確認しながら、部屋に残された手掛かりがないかを確認する。


「どうなってんだぁ?あいつ」


殺人鬼は確かに熊谷彩を捕えるためにここにやってきていた。だが、彼女の興味はそこにはもうない。ただただあの時見た青年のことを思い出していたのだ。


「何をされたか...はこの際どうでもいいことだな。問題はあいつの感情面だ」


殺人鬼は人の感情を見ることが得意であった。人がどう思っているか、人が何を思っているのか。何を望んでいるのかを知ることができる。

だが、殺人鬼が感じた感情は、ただひたすらな怒りであった。


「あいつに惚れていたとか...いや違うな。そんな軽い怒りじゃねぇ。あれは死者への冒涜か。それにしてもビビったぜ、オレという人間が完全に固まっちまった」


あの時あの瞬間、殺人鬼はただただ恐怖していた。

刀を構えた化け物の後ろにいたのは、それよりも恐ろしい化物だった。

殺人鬼は戦場での経験も、軍人としての訓練も受けており、そこで特待生として扱われるほどのエリートだった。


「そんなオレを畏怖させて、あまつさえ殺す直前まで行くとは...怖えなもうかかわりたくねぇ」


殺人鬼は、部屋の探索を続ける。だが、そこには何もない。本当に何もないのだ。いた痕跡すら消えていた。


「...熊害の仕業か」


熊害は殺人鬼にとって便利な存在だった。座標を指定し、ワープすれば暗殺もすぐに終わる。だからこそバディを組んでいた。

だが、彼女が用事があると言って休暇を取った後、彼女は裏切った。


「...あいつ確か葬式があるからとか言ってたよな。誰のかは言わなかったが、関係者か?」


殺人鬼は彼女との連絡手段を持たなかった。殺人鬼は彼女がどうも苦手だったのだ。だからあまり関りを持ちたくなかった。それが裏目に出てしまったらしい。


「...いったん戻るか。」


「あら、紅ちゃん」


殺人鬼は声のしたほうへと振り向く。そこにはこの旅館の女将が立っていた。


「...お母さん」


「何をしているの?って!何が起きたの!」


女将は部屋の中から煙が上がっているのを確認すると、部屋に近づく。

部屋の中を見て女将は茫然と立っていた。


「なんなのこれ!説明しなさい!」


「今は説明している時間は...そうだお母さん!ここに泊まっていた人の名簿とかある!?」


殺人鬼は、女将にそう聞いた。だが、女将は顔を横に振った。


「わからないわ。そういえば名前も聞いていないわね...」


「なんで!ふつう聞くよね!」


「あの人たちは真白ちゃんが連れてきたのよ。夜遅かったしあの子に付き合わせてしまったからお詫びに...ってあの人たちはどうしたの!?」


「...真白が?」


殺人鬼は、持ち直したはずのサブマシンガンを地面に落とし茫然とした。

殺人鬼は知っていた。自分の妹である真白がどれだけ警戒心が強く、なおかつ人を見る目がいいのか。だからこそ、あの化物を宿に招き入れたのが信じられなかった。


夜が明けていく


_____________________


「なんで!なんでだよ!」


対面に立つ熊谷は、ただただ目を背けていた。

俺はただただ怒りが止まらなかった。


「もうちょっとであいつを殺せたんだ!あいつを!」


「...廊下の向こうに誰がいるかわからなかったでしょ。あそこで暴れるのは危険だった」


「だからって!あいつは気持ち悪いって言いやがったんだぞ!俺達を苦しめたあの言葉を!」


「冷静になりなさい。貴方の目的は全日本人を殺すことでしょ。その前にあなたが死んでは元も子もないわ」


「...クソ!」


俺は近くにある椅子を蹴り飛ばす。その光景をまるで何事もないかのようにただひたすら熊谷はじっと見つめた。


「...お前の世界にあいつは必要だったのか」


「いや」


「ならなぜ逃がした。考えがあるのか」


俺は冷静になろうと努力する。腸が煮えくり返りそうだが、ちゃんと意見を聞かなければならない。


「温情以外があるなら教えろ、あいつは俺達の目的の邪魔にならないのか」


「...大丈夫よ、邪魔にはならない。あいつは黒い霧を出していたから」


「またそれか...ならいい。ただし俺が説明を求めたらちゃんと答えろ。説明をしろ。俺はもう寝る」


働かない頭をなんとか落ち着かせベッドへと移動する。

今日の隠れ家は前とは違い家具類に誇りがかぶっていることもなく、ちゃんと家として機能している。


俺は部屋のソファで寝っ転がり、目をつぶった。

あいつが何がしたいのかわからないし、あいつが何を思っているのかもわからない。

だけど、あいつがいなかったら俺はすぐ捕まってすぐ死刑執行だ。

どれだけイラついても理性的に行動するんだ。

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