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世界を終わらせようとする悪党たちの話  作者: 疲労男
2.ニセコシスターズ
10/57

10.本当に憎い人がいるのならば、そいつが幸せになる前に殺すべきだ

「それで、なんで私達は一緒にお風呂に入ってるのかしら」


部屋に案内された後、俺たちは露天風呂でゆっくり休んでいた。


「時間がないからな、いつ敵が攻めてくるかも分からん。でも温泉には入っておきたい。ならこうするのが合理的だろ」


「あなたって、全く羞恥心とか下心がないわよね。人としてどうなの?」


「価値観を決めるのはいつだって中間にある奴らだ。極端な奴らがいるからこそ世界は基準を作れるのにな。お前も慣れろ、時間を無駄にするな」


この温泉は素晴らしい、肩こりがとれてゆく。


「…それで、どうしたの?さっきまで私と入るのはごめんだって言ってたあなたが」


「ま、そうだな理由は二つある。一つはあの婆さんは俺たちの背中の銃を見て何も反応しなかった。多分刺激しないようにして通報したんだと思う。だから警察が来る前に風呂に入りたかった」


この近くには警察署はなかった。なら中心街から来るはずだ。短くても30分程度、すぐ突撃ということはないだろうから、猶予は40分くらいと考えれば、2人が交互に入っている暇はない。


「もう一つは、お前にニセコシスターズについて聞きたかったからだ」


「ニセコシスターズ?ああ、さっきあの子が言ってたことね」


「惚けるなよ性悪女、あの子の名前が真白ってわかった瞬間にお前は饒舌になりやがった。面識があるんだろ?そいつらと」


熊谷のほうを見ると、浴槽に体をうずめている。俺が彼女のほうを見るが、てれている様子もなく何かを隠したいような顔をしている。

どうやら図星のようだ。


「...昔いた組織にね、そんな名前の奴がいたのよ。名前が秋葉紅」


「秋葉紅?紅秋葉じゃないのか」


「びっくりなことに紅が名前で秋葉が苗字よ。本人もコンプレックスを抱いていたわ。まあそいつが話していたのよ。妹たちも神様に気に入られるように頑張ってるって」


「...それでだ。そいつは俺達の味方なのか」


「...日本ではすべてのものに神様が宿ると言われているわ。だからこそ全ての神様の意見が一致するとは限らない。彼女は敵よ」


...浴槽の中に入り、少し考える。多分、俺達人類リセット派閥と人類絶対守りましょう派閥だけという話ではないのだろう。だからこそ熊谷は話すことを後回しにした。

この様子だと、人類選別派閥や人類存在消滅派閥などもいると考えて行動した方がよさそうだ。

俺達の敵は正義だけじゃない。ほかの悪党も敵になる。


「だが、そんなことになったのならば、神話の物語のように戦争になってもおかしくないけどな。オリンポスみたいに」


「それは、ありえないわね」


「なぜありえないんだ?」


「そういえば話したことなかったわね。私たち神の器官持ちの弱点」


...そういえばいろんな説明を後回しにされていたんだった。


「神の器官は、確かに神の能力を使うことができる万能能力、でも地球にある限り一定のルールは発生するの。私たちの能力では、直接人を傷つけることができない。だからあなたの神様が持つ刀はすり抜けて縁を切るだけにとどめられたでしょ?」


「...つまり、どういうことだ?」


「神様の能力は人に影響を及ぼすことはできるけど、変えることはできない。まあ、何事にも例外はあるんだけど。今はそう考えて頂戴」


「つまり人の中でいい影響も悪い影響も与えることができるが、人を死体に変える段階まではできないってことか?」


「まあ、おおむねそうね。だから私たちは最終的に銃や刃物で人を殺す必要がある」


なるほど合点が行ったかもしれない。俺は葬式で警官に囲まれているときにあいつは能力で警官を殺すのではなくどこかに飛ばすだけだった。

それは慈悲をかけたとか日和ったとかじゃなくて単純にできなかったんだ。


「...さて、これからどうすっかな」


今の状況はあまりいいとは言えない。熊谷のワープ能力は現時点であと一回だけ、俺の能力も使い方はわかったが何を切れるのかはわかっていない。

試す時間が欲しいところだが、俺の能力が使用できる回数もわからないから、下手に試すこともできない。

この旅館や隠れ家でどうにかやり過ごそうと思っても、いつ警察が来るかわからない。そして本町にはニセコシスターズという能力者...


「...今の状況確認がしたいな。確か部屋にテレビがあったよな」


「ええ、テレビカードが必要なタイプだったけど」


「まず俺達が指名手配されているかも、あまりわかっていない状況だ。俺は指名手配されているとして、お前は指名手配されていないかもしれない。

そうなったら、ニセコ町の隠れ家で隠れながら、食料の調達や地上の様子をみることができる。警察がどこまでつかんでいるか。どこが閉鎖されているか、情報を集めるのが先決だ。俺は先に出るぞ」


俺は浴槽から上がり、出口へと向かう。


「...気をつけなさい」


俺が出口のドアノブに手をかけたとき、彼女はこちらを見ながら


「秋葉紅は誰も信用せず一人で活動していた。それゆえに誰にも能力を見せていない。その状態で活躍をし続けた女。その姉妹たちもそれほど強くてもおかしくない」


俺は風呂場の扉を開ける。俺は、何も言わずにテレビを見るために、居間へと向かった。

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