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41話・フィエロの復讐




 従妹との縁組は海王が強く望んだものだったと、父から聞いていただけに、直接それを海王自身が断るでもなく、フィエロ自身に責任を取らせたのには、どこかやり切れないものを感じた。


「海王もやり方が酷いな。元は自分が望んで持ち掛けた縁組だろうが」

「仕方ありません。それだけ海王さまが父に抱く猜疑心は、なかなか消えてくれないのでしょう」


 まさか自分が、海王を非難するとは思わなかったのだろう。フィエロは一瞬、目を丸くしながらも、セイレーン族の王に、それだけ父は疎まれている。自分は罪人の息子だから、海王に何をされても仕方ないのだと苦笑した。それが少しだけ不憫に思われた。


「僕は婚約破棄したことで、与えられていた爵位や領海は取りあげられました。陸に上がってから数年もの間、昼間は人間を装いながら暮らし、夜には密かに海へと戻り情報を探りました。そしてようやく嘆きの塔から命からがら逃げ出してきた人魚と出会うことが出来たのです。その人魚から聞いた話で、そこに母と妹が囚われていると分かりました」


「それできみは子爵について情報を集め、サーラと出会った?」


「母と妹がボーモン子爵の所有している嘆きの塔で捕まっていると聞き、気持ちの上では一刻も早く助け出したいと思うのに、子爵に近づく機会がなく焦っていました。まずは漂流して流れ着いた商家の息子を装い、様子を伺うことにしたのです。そこにサーラが現れて、彼女がボーモン子爵家で働いている使用人だと知りました」


「それで彼女を利用した?」


「はい。頭の中では母たちを救うことばかり考えていて、サーラから子爵の情報を探るべく色々なことを聞き出しました」


 そう言う彼の顔は、本音を包み隠すかのように凪いで見えた。マリアナを交際相手として選んだ理由は、父への復讐だと淀みなく答えた。


「マリアナから紹介されたボーモン子爵を見て、すぐに捜していた父のネレウスだと分かりました。でも、父は息子である自分に気が付かなかった。その父はマリアナを溺愛していて許せなかったのです。妹は顔も知らない父を慕っていると言うのに、その娘を顧みることもなく、他の女性との間に生まれた娘を大事にしていることが。それで思ったのです。この父が溺愛している娘を傷つけて捨ててやろうと」


 フィエロの瞳は、ほの暗い影を宿していた。


「マリアナとは実際には何もありませんでした。彼女には幻覚を見せていました。僕には父のような魅了の力はありませんが、相手が望む通りの幻覚を一時だけ見せることは出来ます。それでマリアナとは交際しているように思わせてきました」


 彼は淡々と語った。彼の言い方からマリアナとの交際は彼の望んだものでなかったのは確かなようだ。彼は自分の母や妹を救うために、子爵が溺愛しているマリアナに接触し、彼女の父親である子爵と接触を図った。


「子爵からはいつ、この塔の秘密を?」


「挙式のあった日です。披露宴から退出した後で、子爵から内密に話があると言われました。本当は二人きりで話をするつもりだったと思います。小舟に乗って嘆きの塔に着いた時点で、もう一艘、小舟が近づいて来るのが分かりました。それにはマリアナが乗っていました。彼女は僕たち二人が屋敷を抜けるのをどこかで見ていたのでしょう。気になって追いかけてきたようでした」


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