表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/46

26話・壁から漏れている光の先へ



 子爵は自分の行動が浅はかだったと、後悔しているようだ。私としては疑わしく思えてきた。


奥さまが静養していたなんて初耳だ。誰にも聞いたことがない。私がお屋敷に引き取られた頃には、母や使用人達は皆、奥さまが亡くなった者として話していた。


──子爵か、母のどちらかが嘘をついている?!


 二人が話している間、アコダは壁に寄りかかっていたようだったが、不意にトントンと叩き始めた。



「どうした?」

「ちょっとここらの壁と周辺の壁の厚みが違うように感じて」


 そう言いながらトントン叩き始めた。すると微妙に音の違う場所があった。


「この中に空洞らしきものを感じる」

「……! 許可する」

「えっ? 何を──」


 ノアールにアコダは何か目線で訴えたのか、彼から許可を得て壁を拳で叩いて穴を開けたようだ。それに対し、止めようとしたのだろう。子爵の焦った声がした。


「光が漏れている?」

「いや。恐らく月華真珠だ」

「止めろ。見るな!」


 光と聞いて、ポケットから顔を出すと、アコダの開けた穴から輝く光が見えた。そこからこちらに訴えかけてくるような声を聞いた気がした。その声は脳裏に蘇ってきた。泣き声のようでもあり、子守歌のような儚くも澄んだ歌声。


──メーラさま!


 私は光の下に駆け寄りたくなった。メーラさまが生きていた?! この目で見て確認したい。


──おい、こら。待て!


 アコダの制止を無視してポケットから飛び出した。月光に輝く先へと近づく為に。ところが体に異変を感じた。急に目線が高くなる。


「サーラ!?」

「サーラ。どうしてここに?」

「すまん。俺が連れてきた」


 ノアールと子爵が驚いていた。アコダが謝る。皆の態度で自分の姿が戻ったことを知った。突然、この場に姿を現した私を訝るどころか、子爵はアコダに向かって怒り出した。


「貴様、サーラとはどのような関係だ?」

「俺か? 俺はサーラの父親の兄だ」

「そんなこと聞いた覚えはないぞ」

「最近、分かったことだからな」


 私の背後でそのようなやり取りがあったが、気にしていられなかった。光が漏れる拳一個分の穴に私は手を入れた。


「サーラ!」


 その穴の先には何か隠されていそうだった。私は10年前の記憶を探った。父と二人でここを訪れていた私は、ここの塔の管理人を名乗るメーラさまから色々な歌を教わった。その中でもこの歌はもの悲しく、歌っているうちに皆が涙したものだ。


──皆?


 何かが引っ掛かる。その想いに突き動かされるようにして、その穴へと手を入れるが何も掴めない。何かが思い出せそうなのに、出来ないようなもどかしい思いがする。


「伯父さん」

「どうした?」

「ここを壊せる?」

「壊せないこともないが……」


 私の願いにちらりとアコダは、子爵やノアールを伺った。ノアールは頷く。許可が下りたようだ。ノアールは国王直属の捜査官。この場では国王の次に権威がある。子爵は黙っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ