17話・サーラがいなくなった?!
「クラリー夫人は、若い頃から問題ばかり起こし、異性関係でかなり揉めていた様だ。同性にも激しく嫌われていたと聞く」
「何を仕出かしていた?」
「サーラの家の隣のシイラ小母さん情報だが、クラリー夫人は男遊びが盛んで、既婚者だろうが、相手が金持ちで見た目が良いと言い寄って貢がせてきたらしい。性格も悪いから相手の女をよく刺激しては怒らせ、暴力沙汰になってもケロリとしていたそうだ。男に愛されない地味な女が悪いのだと言って」
「何だ、それ。最低だな。男も何でそんな女に引っ掛かる?」
「何故だろうな? ボーモン子爵も恐らくあの女にコロリと引っ掛かった口だろう。妻を亡くしてから、乳母であるあの女に子爵夫人の部屋を与えていたようだ」
「子爵も餌食になっていたか」
アコダの言い方にノアールがくすりと笑いを漏らし、聞いた。
「そう言えばアコダはさっき、留置所の見張りの者と話をしていただろう? 何か収穫があったか?」
「収穫になるかどうか分からないが気になる話は聞いた」
「気になる話?」
「クラリー夫人が牢から出た後、その前が異様に濡れていたらしい」
「濡れていた?」
「何かバケツ一杯分の水をぶちまけた様な感じだったそうだ」
「清掃の者が誤ってバケツの水をひっくり返したとか?」
「俺もそう思ったが、その水は潮のような匂いがしたと言っていた」
「潮?」
「不思議なこともあるものだよな。それと血痕のようなものが微かに残されていたらしいが、クラリー夫人の体には怪我をしたような形跡もなかったそうだ」
アコダはそれだけ言うと、先に立って歩き出した。ノアールはその後を追う。
「なあ、ノアール。これにはセイレーンが関係していると思わないか?」
「まさか彼が?」
二人の脳裏にはある人物が浮かんでいた。彼らはこの国の頂点に立つ者に命じられてこの地に来たが、まさかこのような形で彼と出会うとは思わなかった。
「何か分かったのか? アコダ」
「ノアール。あいつの家族について何か聞いているか?」
「いや。興味がないから気にもしなかった」
アコダに問えば、逆に聞き返されてノアールは首を振った。
「放蕩王子の息子には母と姉がいるが、その二人が10年前に突然、姿を消した。それに半狂乱になっていたようだ」
「10年前?」
「ああ。それから必死に捜していたようだが、何だか気にならないか? 俺はこの辺りが怪しい気がする」
アコダの発言に思うところがあったのか、ノアールが黙り込む。
「一度、サーラの家に戻ってみるか? 戻ってきているかもしれないし」
「そうだな」
アコダと連れ立ってサーラの家へと向かったノアールだったが、その日サーラは遅くまで待ってみても帰ってくることはなかった。




