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 にらみ合うわたしとジェリコ。バチバチ視線をぶつからせるわたしたちに圧倒され、モジャ様はクマさんモードになっている――この勝負、わたしは絶対に負けないんだから!


「オリガの存在を証明できた暁には、ジェリコ様の撮影をさせていただいても、よろしいでしょうか?」


 わたしの出した要求にビビって、ジェリコは銀のまつ毛をパチパチさせているね。まいったか!


「……そんなことで、いいのか?」


 ちがった。撮影の申し込み程度ではひるまなかったか。ならば、


「以前、没収された印画を全部返してください。あと、ついでにオリガのことをハグしてあげてください」

「まあ、それぐらいなら……」


 ジェリコはモジャ様に視線を送り、モジャ様はうなずいてくれた。

 よし! 印画が返って来る! オリガも感謝しなさいよ?


「さっそく始めましょう。ジェリコ様のご協力が必要になります。こちら側へ来ていただけますか?」


 わたしは手招きして、自分の近くにジェリコを呼び寄せた。

 それにしても、近くで見るとヤバいよね。デカいモジャ様とつねに一緒だから、見落としがちだけど、ジェリコってば、身長もかなり高いのよ。細身なのに貧弱ではなく、女顔といっても、女に比べるとやっぱり線は太い。男らしい。

 加えて、まばゆい。髪のみならず、体毛まで銀色だからか。微光を発しているんだ。美しすぎだろ……ジェリコ。

 自分のすることも忘れて、うっかり見入ってしまった。オリガが惚れ込むのもわかるなぁ。


「では、ジェリコ様。服を脱いでください」


 見とれたあとにこれ。別に下心とかはないです。

 ジェリコは鳩が豆鉄砲を食らった顔をしているね。聞き間違いかと思ったのかな。耳をこちらに向け、聞き直そうとしている。

 ごめんなさい、聞き間違いではないです。裸になってください。あなたが悪いのですよ。裸の人の寓話を話したりなんかするから。


「上半身だけでもいいので、脱いでいただけますか?」


 セクハラじゃないですよ。オリガを出現させるためです。協力してください。さあ!!!


「えと……なんで??」

「ジェリコ様の裸を見たら、オリガは興奮して姿を現します」


 ジェリコは助けを求めて、モジャ様を見る。モジャ様は胸のところで手を交差させているね。

 大丈夫です。ガチムチ胸毛ボーボーのモジャ様を脱がせたりはしません。今、必要なのはジェリコのヌードなのです!


 ジェリコは当惑しつつも、制服の留め具を外し始めた。この制服、上官の方々は紺色じゃなくてえんじ色なんだ。紋章の刺繍も金糸でされている。

 前閉じの長めダブレットタイプだから、上を脱いじゃうと下はパンツに長靴下を留めているだけなの。キュロットとかズボンは履いてないのよ。長靴下が下衣の代わり。間の抜けた下着姿になってしまうのよね。すみません、奥様にしか見せないような恥ずかしい格好をさせてしまって……


 人類のプライベートゾーン、“着替え”をガン見されるジェリコは、たどたどしく上衣を脱ぐ。上衣の下はチュニック。胸のところの紐を解けば、スルスルスル……隠された部分があらわになる。


 ……え? ジェリコ、筋肉スゴくない!? なんなの、その複雑に絡み合う筋繊維は!?

 普段、制服かジュストコールをきっちり着こなしているから、もっとシュッとしたイメージだったの。全然文官系じゃないじゃん! 超肉体派だよ。パンツにガーター姿でも、全然イケてる!!

 それにね、胸毛まで銀色なんだ? その銀色の胸毛が細い線になり、腹まで下りていき、また濃くなって……


 わたしの興奮度がMAXになろうとしている時、空中に鮮血が現れた。


「ヤバいんだな。鼻血なんだな」


 焦るオリガの声が聞こえる。わたしは大慌てで、ハンカチを渡したよ。空中に浮かぶ白いハンカチが赤く染まる。


「君が……オリガさん??」


 ジェリコは神々しい御姿を赤いハンカチへと向ける。やめて、もうやめてあげて……刺激が強すぎるので、服を着てください……と、そのまえに、


「約束どおり撮影させていただきますからね! はい、こっち向いてー!」


 わたしは最終兵器の右手をジェリコへ向けた。背後でモジャ様が自分のオッパイを隠してるが、見ないふりをする。

 パチリ! はい、ジェリコのセクシーショット撮影完了!


 好き勝手されて、ジェリコは眉間に皺を寄せているよ。こちらの不手際を繕うための挑発に乗り、裸にされたうえ、撮影されたんじゃ無理もないか。

 でも、素に戻ると、見ているほうもかなり恥ずかしいなぁ。目的を果たした後、わたしは顔を両手で覆った。


「ふ、服を着てください! 乙女には刺激が強すぎますっっ!!」

「君が始めたことだろう? それにまだ、オリガ嬢を抱き締めていない」


 そんな姿でオリガをハグしたら、失神しちゃいますよ? とりあえず、服を着ましょう。


「これで、オリガが存在することを証明できたでしょう? わたしたち、結婚前の乙女なんですよ! 恥ずかしいから、着てください!」


 あとで裸の印画はじっくり見させてもらうけど。目の前に本体があるのと画像はちがうんですよ。


「そうだ、ジェリコ。女性を恥ずかしがらせては、いかんぞ? 今のおまえは変態紳士だからな?」


 ほら、モジャ様もおっしゃってるでしょ? なに、変態紳士って?


 脱げと言われたり、着ろと言われたり、ジェリコは不満げな様子だ。変態紳士という言葉に反応して、身体を赤くしていた。つい、顔を覆う指の隙間から、チラ見してしまったよ。恥じらうジェリコ、エロい。


 こんなドタバタ劇のあと、服を着たジェリコとモジャ様にオリガは挨拶した。

 相変わらず透明だけどね。宙に浮かぶ赤いハンカチを見て、話しかけるしかないの。


「よろしくお願いいたします(なんだな)」

「オリガさん、出てきてくれてありがとう。君にも、腕章を渡しておこう」

「浮遊するローブや腕章を見ても驚かないよう、他の騎士たちにも周知せねばならんな?」


 あ、モジャ様、お願いします。不審者扱いはもうコリゴリなんで……。こう見えて、オリガは繊細な子なんです。わたしみたいにスパイ容疑をかけられて逮捕されちゃうと、二度と立ち直れないと思いますよ。


 最後にジェリコはオリガをハグしてくれた。ハンカチの浮かぶ辺りを探ってね。オリガはなんとか失神せずに済んだよ。没収された印画も返してもらえて、めでたし、めでたし。


 これで、広報誌作りに強い味方が加わった。

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