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『朱里ちゃんの微笑み』短編小説集   作者: 健野屋文乃
9章 なつめぐの章

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【Zの意見】【Yの意見】【Xの意見】

【Zの意見】


「こんな可愛い彼女と付き合うのは、お前には無理だよ」

とXは自分の恋人Yを自慢しながら言った。


だから、俺はYを奪ったんだ。

Xの自慢の恋人のYを奪ったんだ。


その位で奪うのは、悪いとは思ったよ。

でも、強引だったとは言え、結果、俺を選んだのは、そのYだ。

だから、悪く思うなよ、X。




【Yの意見】


Zが私の事、まったく気にも留めなかったから、Xを利用して、Zを挑発するように、仕向けたの。

簡単だった。

Xには悪い事をした。

ごめんね、X。




【Xの意見】


Yが、Zの事を好きな事は知っていたし、僕を利用して、Zの気を引こうとしていたのも知ってた。


良いんだ、別に。


Yの事そんなに好きじゃなかったし・・・


それに、それはそれで、ゲーム感覚で楽しんでいたし。


そして今、僕の側には、Yはいない。

いるはずの場所に、Yはいない。

Yの温かさも、可愛らしい声も、感じることは出来ない。

今さら、彼女の存在の愛おしさに気づいても、もう遅いんだ。



彼女のいた場所は空白になった。

その空白は消える気が無いらしい。


時間は残酷だ。

徐々にその空白は大きくなって行く。


鏡に映る自分が薄くなっている様な気がする。


所詮僕は、用が無くなれば消える存在。

空白は、いずれ僕を飲み込み、僕は消え去るだろう。

そして、そこに空白があることすら、人々は知ることはない。




おしまい

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